実はトーゴ製じゃない!?【ジェットコースター】inナガシマスパーランド製造メーカーの謎に迫る+乗車レポ

2018年7月31日

ナガシマスパーランド「ジェットコースター」遠景

こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。

この記事では、三重県桑名市にある遊園地「ナガシマスパーランド」のローラーコースター「ジェットコースター」のレポート兼レビューをお届けしていきます。

いろいろと歴史的にはわからない所も多いのですが、1960年台製と思われる骨董品級のコースター。

スリルはほとんどありませんが、林の中をまったりと駆け抜ける気持ちの良いコースターです。

巷ではトーゴ製だと噂されていますが、最初に製作したのは明和という会社なんじゃないかという、このブログ独自の考察もご紹介していきます

 

ジェットコースターの評価

 

爽快感:      ★★★☆☆

振動の少なさ:   ★★★☆☆

スリル:      ★★☆☆☆

コースレイアウト: ★☆☆☆☆

楽しさ:      ★★★☆☆

総合得点:     25点

 

 

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1. 日本のローラーコースターの歴史とナガシマ【ジェットコースター】の特徴

 

1.1 日本のローラーコースターの歴史

これだけ古いコースターを語るには、日本のローラーコースターの歴史を語っておかねばなりますまい。

ローラーコースターの定義というのは、なかなか難しいものです。

例えばほぼ人力のものであれば、トンプソンタイプというコースターが、1890年に上野で開催された勧業博覧会に設置されています。

スイッチバックレールウェイ
アメリカ初のローラーコースター・トンプソンタイプ「スイッチバックレールウェイ」。

さらには、斜面状に敷設したレールの上を、ボート状の乗り物で下って降りるだけのものが、1925年に多摩川園に設置されています。

車輪がついていて、重力によってレールを下る遊具をローラーコースターと定義すれば、これらももちろんローラーコースターです。

 

なのですが、一般には自動巻き上げ(最近では加速発進でもOK)が付いてはじめてローラーコースターと定義される場合もあります。

この場合、日本初のローラーコースターは、後の宝塚ファミリーランドに設置された三精輸送機製「ウェーブコースター」。1952年の設置です。

現存最古のコースターは、当時浅草花やしきの経営を担っていたトーゴが設置した「ローラーコースター(当時はロケットコースター)」。こちらは1953年製。ウェーブコースターが高さ3.5 m, 全長90.3 mと小型だったのに対し、ローラーコースターは高さ11 m, 全長234 mとかなり大型化しています。

 

さらに1955年、明和工務店なのか新明和工業なのかは諸説あるようなのですが(新明和設計で明和工務店建設とか??)、そのいずれかが製作した後楽園ゆうえんちの「ジェットコースター」が大ヒット(名前はNHKの番組でも紹介されていますし、東京ドームシティの言質も取れているようなので間違いないはず)。

これを期に、日本のローラーコースターは一般にジェットコースターと呼ばれるようになったとのことですから、その人気の凄まじさが伺えます。

最初期は、全長550 m, 最高時速約60 km/hというスペックでした。

 

その後、花やしきを運営するトーゴは豊島園などの運営委託を受けたりしつつ、1965年にはとしまえんに傑作「サイクロン」を設置します。

ナガシマスパーランドの「ジェットコースター」ができたのは、おそらくその翌年の1966年。ナガシマスパーランドの開園と同時だと思われます。

 

1.2 ナガシマスパーランドの「ジェットコースター」の特徴と製造したメーカー

さて、問題なのはこれをどこが作ったのか、ということ。

ローラーコースターデータベースを始めとして、それを参考にしたと思しきサイトも一様に「トーゴ製」だと書いているのですが、本当なのでしょうか。

 

実はこのコースター、製造会社がわかりにくい特殊な事情があります。

というのも、コースターができてから20年前後経過して、レールの架替が行われているんです。

もともとは平型のレールだったものの上にパイプ状のレールを新たに敷設。それに合わせてライドの更新もされています。

この作業は同じく1966年にトーゴが製作したよみうりランドの「SLコースター」でも行われました。

新しいレールの架け方などはほぼ同じですので、レールの架替とライド更新を行ったのはトーゴで間違いないと思うんです。

 

ここで一旦、ナガシマ版「ジェットコースター」の特徴を見てみましょう。

その一番の特徴は、シンプルすぎるコースレイアウト。基本的にはすべて楕円形の敷地内に収まっています。

楕円の対角線上にある駅舎からスタートし、対角線上のまま巻き上げ。右にぐるっと180度ちょい、ゆっくりゴトゴト回って対角線上にファーストドロップ。今度は左にゴトゴト180度ちょい回って、楕円の円周上でセカンドドロップ。もいちど左にゴトゴト180度回ってサードドロップ。最後にゴトゴト180度ちょい左に曲がって終了。

下って登ったらゆっくりと180度曲がる、というコースを繰り返すだけの、ビックリするほど単調なコースです。

 

こんなコースを当時のトーゴが作るとは、到底思えないのです。

というのも、前年の1965年に製作したとしまえん「サイクロン」はキャメルバックを繰り返してエアタイムを作り出し、さらにはトンネル中の水平ループなども組み合わせた傑作。

ナガシマと同年の1966年に製作されたよみうりランド「SLコースター」は土地の起伏に合わせて、スタート直後にいきなり曲がりながらのファーストドロップ。その後もカーブしながらのドロップをいくつも組み合わせた、スリルは少ないながらも変化に富んだコースレイアウト。

それに対して、ナガシマ版「ジェットコースター」はあまりにも単調すぎる。

 

歴史をあさってみると、ナガシマ版「ジェットコースター」によく似た、兄弟機とも言えるコースターがありました。

それが谷津遊園(1982年に閉園)の「サーフジェット」。1958年製で、時代としては後楽園ゆうえんちの「ジェットコースター」に近いものです。特徴は半分が海の上に突き出しているという、今で言う横浜・八景島シーパラダイスの「サーフコースター」のような構造だったわけですが、それは置いておいて。

問題はコースレイアウト。こちらもやはり、楕円の対角線上にある駅舎からスタートし、巻き上げ。左に180度ちょいターンして対角線上でファーストドロップ、右に180度ちょいターンしてセカンドドロップ、右に180度ちょいターンしてサードドロップ、右に180度ちょいターンして終了、とまるでナガシマ版「ジェットコースター」の鏡写しのようなレイアウト

このサーフジェットは、ローラーコースターデータベース上では、ナガシマのジェットコースターと同じくトーゴ製となっています。

 

実はこのコースター、もともと海だった場所が埋め立てられてしまった結果、その後にコースレイアウトを変更しています。

さらに1982年に谷津遊園が閉園となったあとは、1984年にルスツリゾートに移設され、現在も「マウンテンジェットコースター」として営業しています。コースは変更されてレールも掛け替えられ、ライドまで変更されちゃっていますから、オリジナルの原型をとどめているのは柱くらいのものなのですが…。

さて、このマウンテンジェットコースター、ローラーコースターデータベース上では明昌製となっています。

ライドを変更した際かコースを変更した際に明昌が施工したのでしょう。

 

ここで論理が破綻していることにお気付きでしょうか。

サーフジェットが移転再開した1984年は、トーゴがまだ健在だった時代。コースレイアウト変更はこれより前ですから、もしオリジナルがトーゴ製なら、トーゴが施工しないのはおかしいのです。

そりゃ、オリジナルを作った会社があるのなら、その会社が設計図から何から持っているわけですから、その会社に頼みますよね。

でも谷津遊園は明昌に依頼した。ということは、オリジナルは明昌製か、あるいは当時はもうコースターを作っていない会社の制作だった可能性が高い。

それならば、兄弟機と言ってもいいナガシマ版「ジェットコースター」も同様にトーゴ製ではない可能性が高いのです。

 

長くなってきましたので結論から申し上げますと、僕の推論では、ナガシマ版「ジェットコースター」、谷津遊園「サーフジェット」ともに、後楽園ゆうえんちの「ジェットコースター」と同じ明和製だと考えています。

まずは「ジェット」というネーミングにこだわっているあたり、後楽園ゆうえんちの成功にあやかろうという明和や遊園地側の思惑が見え隠れしています。実際に、1957年に明和が製作したみさき公園のコースターにも「ジェットコースター」という名前がつけられています。

さらに、トラスの形状。柱と柱をつなぐ梁にかけるトラスは、1965年トーゴ製のとしまえん「サイクロン」では斜めのものだけを組み合わせているのに対し、後楽園、ナガシマの「ジェットコースター」は梁を碁盤の目状に区切った上で斜めにトラスをかけています。

明昌はというと、こちらは1957年製だざいふ遊園地「ウェーブコースター」にしろ1966年製南郷水産センター「ジェットコースター」にしろ、レール直下に梁を張って、梁の間にトラスをかけるようなトラックを組んでいません。国内の老舗では三精や豊栄なども同様です。

ナガシマ「ジェットコースター」には巻き上げ最上部の動力室付近に、高さ変化を吸収するために大きなトラスの高さが徐々に変わる不格好な構造が導入されていますが、トーゴ製「サイクロン」は柱の位置を工夫し、さらに動力室を巻き上げ最上部から離すことで、高い美意識を保っています。一方で、明和製みさき公園「ジェットコースター」にはおなじような不格好なトラスがあります。

トーゴは1966年製のよみうりランド「SLコースター」では、既にレールの下にトラスを配置する構造をやめ、太い鉄骨を敷くようになっていますが、同年製のナガシマ「ジェットコースター」ではトラス構造が採用されています。

他にもレールからはみ出す巻き上げ動力室など、いろいろとポイントはあるのですが、あまりに長くなりすぎてもアレなのでこの辺で。

というわけで、ナガシマスパーランドの「ジェットコースター」は明和製だろう、というのがこのブログの結論でした。ナガシマスパーランドかルスツリゾートに問い合わせてみたらわかりそうなものですけどね。

 

 

2. ナガシマスパーランド「ジェットコースター」乗車レポート

これだけ長々と語っておいて、実は写真を撮っていないのですが、一応乗車レポート。

ナガシマスパーランド「ジェットコースター」遠景
真中付近の森のなかに見える(?)茶色いレールが「ジェットコースター」。真中付近にまっすぐ見えているのが巻き上げ部、その左下の黄色いレール付近に見えているのがファーストドロップ後のターン部です。

コースレイアウトは1.2のメーカー考察で述べてしまいましたので、ここでは簡単な感想だけ。

 

とにかくまったりとしたドロップと、ゆっくりゴトゴトカーブを曲がるだけののんびりとしたコースター。

まかり間違ってもスリルを求めて乗るコースターではありませんが、乗り心地は悪くありませんしドロップではほんの気持ち程度の「浮き」感を味わうことができます。

それも3回しかありませんので、本当にコースター入門として最適。お子様が子供向けコースターからステップアップしたり、大型コースターには乗るのが恐いという方にも適しています。

その一方で、森林の中をまったりと走行する気持ちよさがあります。自然落下だけで風を切って走るのは、汽車とはまた違った楽しさ。

ローラーコースターはスリルを求めるばかりではなく、スリルのない単なる乗り物として作られたとしても楽しいんじゃないかという思いすら抱かせる、なんとも独特の味があるコースターです

明和製だというのが本当なら、今ではオリジナルのコースレイアウトが残っているのはみさき公園と、ここナガシマスパーランドだけ。非常に貴重なコースターですので、せっかくナガシマを訪問したならぜひ乗車を。

ちなみに最後のドロップは池に向かって落ちます。現在は橋になっていて、水に入ることはないのですが、もともとはどうだったんでしょうかね。オリジナルのレールの高さ的には水に入っていなかったと思われますが、1966年トーゴ製よみうりランド「SLコースター」は建設当初は着水していたと言いますから、同じ年代のコースターとして気になるところです。

 

 

3. 次に読むのにオススメの記事

「ジェットコースター」は雨が降ろうが風が吹こうが、よほどの荒天でない限りは動きます

各アトラクションについて、こうした悪天候に強いかどうかの情報を以下のページにまとめてご紹介しています。特に遠方からお出かけの方、特定の日程でしかナガシマに行けない方は、是非参考にしてみてください。

 

ナガシマスパーランドにあるアトラクションのご紹介は、以下の記事で行っています。

大型コースターについては別記事へのリンクもありますので、ぜひご参照ください。

 

その他、国内外の遊園地に関する記事、ローラーコースターに関する記事は以下のページにまとめています。

こちらからご希望の遊園地やコースターをお選びいただき、個別記事をご覧ください。