日本の遊園地が生き残るための確率論 ー 遊園地はなぜ潰れるのか Part 6
こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。
この記事は、なぜ日本の遊園地は次々に潰れていくのか、というお話を経済面、人々からのイメージ、遊園地マニアとしての意見などを交えつつご紹介していくシリーズの第6回。
前回までに、日本の遊園地は新規投資が出来ないほどに余力がないこと、需要に対して供給が多すぎることなどを見てきました。
今回は、遊園地の数は減らさずに、遊園地が生き残っていくためにはどうすれば良いのか、考えていきたいと思います。
とにかく来場客数を増やさなければならない
この記事でご紹介する手法の根本的な考え方は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの業績をV字回復させたことで知られる森岡毅氏の著書「確率思考の戦略論」と根幹部分では同じです。
森岡氏のP&G時代の話も多数含まれていますが、主題は遊園地のマーケティングという極めて貴重な書籍ですので、遊園地の現状を憂う方はぜひお手元に。
この記事では、わざと難しい言葉が使われている感もある「確率思考の戦略論」よりは噛み砕いた表現をしていますし、この本には書かれていない考え方も含まれています。
さて、今回の目的は、「遊園地の売上をアップさせること」です。
そのための手段として取れるものは全て取りたいところですが、現状では新規投資は出来ないことを想定していますので、新規大型投資はナシ、というのがルール。
また、以前の記事でも書きました通り、現状では東京ディズニーリゾートという強大な敵に頭を抑えられているために、チケットの値上げは出来ない状況です。ですから、値上げもひとまず現状ではナシ。
これだけの制約をかけて、遊園地に一体何ができるかを考えていきます。
遊園地の売上は、非常に単純化した式を書きますと、
(売上) = (来場客数) × (客単価)
で表すことができます。
値上げはしないお約束ですから、客単価が下がることはあっても、上がることは基本的にはありません。
ですから、来場客数をいかに増やすかが焦点。
ちなみに、今回考えています遊園地の規模は
総アトラクション数: 30
そのうち、
- 大型コースター: 1機
- 中型コースター: 1機
- 50 m級観覧車: 1機
- 大型絶叫マシン: 4機
といった感じ。「東武動物公園」の遊園地部分、「としまえん」、「ひらかたパーク」くらいの規模を想定しています。年間来場者数は100万人くらい。
一方で、常に新規投資をしながら新たな顧客を呼び込み続けるためには、「富士急ハイランド」や「よみうりランド」くらいの来場客数がほしいところ。これらの遊園地は年間200万人以上が来場します。
というわけで、来場客数は客単価に変化がなければ200万人が目標です。
2. 来場客数を増やしたければ、万人受けを目指せ!
まずは売上を求める式で出てきた、(来場客数)という項目をもう少し詳しく見てみましょう。
2.1 式を分解してみる
(来場客数) = Σ {(ある日、当該遊園地に行くことが少しでも頭に浮かんだ人) × (そのうち実際に遊園地に行く人の割合) × (その人が連れて行く人数の期待値)}
と書き下すことができます。
当たり前といえば当たり前なのですが、実はこの式展開が意外と重要な意味を持っていたりするのです。
まずは式の意味を説明しておきましょう。
(ある日、当該遊園地に行くことが少しでも頭に浮かんだ人)というのは、まさに読んで字のごとく。
お休みの日にどこかにお出かけしようと考えたときに、皆さんは頭の中でどう考えていますでしょうか。
いくつか可能性のある候補が頭に浮かんでは、コストや魅力などで却下し、最後に残ったところに行く。あるいは候補の中で最も魅力的なところに行く。そんな考え方をしていませんか?
ここでは、その候補に上がって速攻で却下されても構いません。とにかく候補に入れた人をすべてカウントしておきます。
特にお子様のいる家庭なら、ほぼ必ず毎週末、候補にだけは上がるのではないでしょうか。たとえ金額や距離の問題ですぐに却下されたとしても。
(そのうち実際に遊園地に行く人の割合)というのもそのままです。
遊園地が候補に上がった人のうち、実際に行く人の割合です。
予想するのはなかなか難しい数値ですが、今回は戦略を考えるだけですので、必ずしも予想する必要はありません。
(その人が連れてくる人数の期待値)は、単に何人のグループで来場するか、というだけのものです。
来場するグループの数が変わらなければ、グループ内の人数が多ければ多いほど、その遊園地の来場者は多くなることになります。
これらをかけ合わせれば、ある日に来場する人の数がわかることになります。
それを365日分足し合わせれば、年間来場者数がわかるわけです。最初についているΣは、単に365日分足しましょう、というだけの意味です。
2.2 どう施策を打つべきか
さてさて、一般的に遊園地が来場者数を増やそうとするとき、大抵は(そのうち実際に遊園地に行く人の割合)を増やすための施策を打ちます。
例えば値下げもそうですし、新型アトラクションの導入も基本的にはそうです。
遊園地に行くという考えが思い浮かばない人には、TV番組で特集されるなどのことでもない限り、これらの施策では訴求することができません。
遊園地に行くという手札を持っている人が、その手札を使う可能性を高めているに過ぎないのです。
しかしながら、遊園地の対象は
- 子供連れ
- 小学校高学年~大学生
くらいだと一般に認識されてしまいがちです。
実際に遊園地に行くという発想が出てくるのも、これらの人たちが中心なのではないでしょうか。
ここに含まれる人々は、子供連れの両親まで含めても、日本の人口の僅か1/4に過ぎません。
前回の記事でも書きましたが、遊園地が200万人を集客するためには、商圏内の7割の人に、年に1回来場してもらわないといけません。
人口の25%しかいない人たちが来場する確率をいくら上げようと、到底目標には届かないのです。
ということは、基本的には(ある日、当該遊園地に行くことが少しでも頭に浮かんだ人)を増やしていかなければなりません。
要するに、ターゲットを広げていかなければならないのです。
- これまで来場客数が少なかった、20代後半より上の世代
- 現在の商圏からは外れたところに居住している人々
にも訴求していく必要があります。
遊園地で集客を増やすなら、万人受けを目指すべし!
長くなってしまいますので一旦ここで区切ることにして、具体策は次の記事で考えていくことにしましょう。
3. 次に読むのにオススメの記事
「遊園地はなぜ潰れるのか」シリーズを含む、遊園地関係の評論・オピニオン記事は以下のページにまとめています。
国内外の遊園地に関する記事、ローラーコースターに関する記事は以下のページにまとめています。
こちらからご希望の遊園地やコースターをお選びいただき、個別記事をご覧ください。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません