高島屋の中にあった!?【新宿ジョイポリス】営業当時のマップ復元&アトラクション紹介 ー 今はなき遊園地のマップ復元シリーズ6
こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。
この記事では、かつてデパート「新宿タカシマヤ」の中で営業していた屋内型アミューズメント施設「新宿ジョイポリス」営業当時のマップを復元するとともに、アトラクションのご紹介をしていきます!
- 全盛期のジョイポリスは国内8箇所にあった!
- ビル内の狭いエリアでも楽しめるよう、アトラクションにどんな工夫を施していたのか
- 今後、屋内アミューズメントが生き残る道はあるのか!?
1. 「総合エンターテイメント施設」という概念の流行とジョイポリスの出店攻勢
1990年台後半から2000年台前半にかけて、大型ゲームセンターや映画館、ショッピング施設などを組み合わせて一度に様々なエンターテイメントを楽しめる施設の展開が流行しました。
言葉が正しいかどうかわからないのですが、ここでは「総合エンターテイメント施設」と呼ぶことにします。
ジョイポリスも、そんな流行に乗って出店攻勢をかけていました。
1.1 再開発の進展とエンターテイメントの集積化
1990年台後半から2000年台前半にかけては、バブル期に構想された大型の開発・再開発が次々に具現化していった時代でした。
お台場しかり、みなとみらい地区しかり。
こうした再開発の進展に伴って、街づくりの一環として余暇の過ごし方をどう提供するかが課題となっていきます。
余暇といえば、バブル期当時は休日にどこかお出かけする、あるいはスポーツをして汗を流すなどのスタイルが主流でした。
スポーツに関しては、リゾート法にのっとって郊外地域に多数の大型施設が作られていきました。
一方で、都市型が主流の再開発地域では、休日のおでかけ先としての需要を喚起する必要があります。
休日にお出かけする先といえば、ショッピング、映画、あるいは遊園地など。
こうした施設が一箇所に集まっていれば、お買い物目的のお母さん、遊びたい子どもたち、デートしたいカップルなどを一挙に集客できるはず。
特に、子供や旦那さんに気兼ねして、なかなかゆったりお買い物できないお母さんは潜在的な消費需要が大きそうな気がしますよね。
しかしながら、子供やお父さんが思いっきり遊べる遊園地を、そのまま敷地の狭い都市型施設に作るのは困難です。
古くはデパートの屋上遊園地などがあったわけですが、そうした敷地の観点から1990年台後半~2000年代前半に着目されたのが屋内アミューズメント施設。
池袋のナンジャタウン、お台場のネオジオワールド、メディアージュ、東京ジョイポリスなどショッピング施設などと融合した屋内アミューズメント施設が次々とオープンしていきました。
1.2 SEGAの思惑とタカシマヤの戦略
そんな屋内アミューズメント施設「ジョイポリス」を次々にオープンさせていたSEGAにも思惑がありました。
1990年代後半は、対戦格闘ゲームのブームも終焉を迎え、ゲームセンターの売上にも陰りが見え始めた時期でした。
さらに、家庭用ゲーム機も、子供のいる家庭には1台あるくらいにまで普及が進み、パイの拡大からパイの奪い合いへと業界が変化しつつある時代。しかも、プレイステーションの一人勝ち状態。
そんななかでSEGAは、カラオケを始めとして様々なエンターテイメント事業に手を出していきます。
こうして拡大路線をひた走る中で、ゲームセンターにもその傾向が見え始めます。
ゲームセンターといえば、1ゲーム100円、200円という低客単価のお店。人手が不要で人件費がそれほどかからないからこそ営業できていたお店の形態です。
その客単価を上昇させ、ゲームセンターフリーク以外にも通ってもらうようにするには、ゲーム性よりも体感性を高めることのほうが重要になってきます。
体感ライドタイプのゲームにすれば、1ゲーム500円、600円という客単価が当たり前になるのです。
さらにこれをカラオケなど別のエンターテイメント事業と組み合わせて運用すれば、あるいはショッピング施設などに導入して新規顧客を大量に誘導できれば。売上拡大を狙えるわけです。
このような発想があったのかどうかは定かではありませんが、SEGAは体感ゲーム主体のゲームセンターやジョイポリスを多数出店していくことになります。
余談ですが、体感ゲームはSEGAのお家芸。
1985年のスペースハリアーなどに始まり、1990年には前後左右に360°回転するR-360という体感ゲームも作っています。
「SEGAは10年早すぎる」と言われるほど、時代を先取りした先進的ゲームを作ってきたSEGAにとって、ジョイポリスはSEGAのクリエイティビティを存分に発揮できる場でもあったのかもしれません。
新宿ジョイポリスは、横浜、新潟、福岡、東京(お台場)に次ぐ5施設目。
94年に横浜、95年に新潟、96年に福岡、東京、新宿とオープンさせていますから、投資額がかなりかかる割に凄まじい出店速度です。
翌々年の98年には、京都、梅田、岡山にも出店しています。
一方で、新宿駅南口の再開発エリアを手にしたタカシマヤ。
しかしながら、年間120億円とも言われる高額な賃料をいかに支払うか、苦悩し続けます。
賃料に見合った莫大な額を売り上げるためには、ショッピング施設だけでなく集客力をアップさせるようなエンターテイメント施設が必須だと判断したのでしょう。
建物内にジョイポリスに加えて、日本初のアイマックスシアターも同時にオープンさせました。
小規模ではありますが、日本最先端のエンタメを取り揃えた施設になったわけです。
さらに男性客も多く引き寄せられる東急ハンズや紀伊国屋も併設し、全方位で集客する方針を取りました。
その結果、どういう状況に陥ったのかはまた後ほど。
2. 新宿ジョイポリス営業当時はこんな感じだった!
それではここで、新宿ジョイポリス営業当時のマップやアトラクションの紹介などをしていきます。
2.1 新宿ジョイポリスのマップを再現
こちらが新宿ジョイポリスのマップです。
デパートの一部分の2フロアのみという、非常に限られた面積ながら、実質10個のアトラクションを詰め込んでいます。
どうしても、目玉になるコースター系のアトラクションは敷地的にも、建物の強度的にも設置が難しいので、シミュレータライドが多くなってしまいがち。
そんな中にも、「スーパーランキング」という体を動かすアトラクションや、「ゴーストハンターズ」というダークライド系、「ミッションQ」というこれまた体を動かすアトラクションなど、単なるゲームセンターの延長系ではない遊園地チックなアトラクションもしっかり詰め込んでいるあたり、さすがの設計です。
2.2 新宿ジョイポリスのアトラクションを紹介
・スーパーランキング
「格闘」「パワー」「スピード」「運命」「バランス」という謎の5項目を計測し、ランク化するゲーム。
実際に体を動かす5つのゲームを経て、結果が印刷されます。
パワーはハンマーで的を叩くだけだったり、ゲーム性はそこそこだったのですが、5つのゲームを順番に体感させることで人を流れさせ、数を捌けるアトラクションとしてよくできていたように思います。
ゲームで体を使うのは、やはり楽しい印象を残しますのでその点も効果的。
・パワースレッド
ボブスレータイプのゲームを、揺れるライドに乗って体感するアトラクション。
東京ジョイポリスにも同型機が導入されました。コンパクトなエリアに設置でき、外でならんでいる人が観客になれるゲームセンターの正常進化版といった感じのアトラクション。
・アクアノーバ
こちらも揺れるシミュレータタイプ。画面は固定でライドのみが揺れます。
4人乗り×2台の構成で、途中ちょっとした操作をしながら3D映像と揺れを楽しむアトラクション。
今で言う4Dシアターに、ゲーム性を追加した感じ。
一時期ジョイポリスに多数展開していましたが、8人しか乗れず、1回あたりに時間もかかるのが難点。
・セガラリー スペシャルステージ
ゲーム内容はセガラリーそのままのレーシング系ながら、実車のセリカGT-Fourに乗って揺れもシミュレートしてくれるアトラクション。
ナムコ・ワンダーエッグにはユーノス・ロードスターに乗ってレーシングゲームを体感するものが、お台場メガウェブにも実車に乗って体感する運転ゲームが有りましたが、それらはスクリーンが湾曲していて没入感の高いタイプ。
こちらはゲームセンターに近く、車の前方にのみスクリーンがあるタイプでした。
臨場感では劣りますが、観客も見られるという点で、やはりゲームセンター的な発想。スペースも小さくて済みます。
・フォーチュンミュージアム
各地のジョイポリスにあった、ウォークスルータイプのアトラクション。
施設内の心理テスト的ないくつかの質問に答えて回ることで、潜在的な性格を診断してくれます。
診断結果は専用用紙に印刷されて受け取り。
意外と当たっている内容が長文で印刷されてきます。が、盛り上がりにはかけます。
・リング
こちらも定番のサウンド系アトラクション。通常のジョイポリスは「グランディッシュの館」等が設置されていました。
こちらもそもそもは「マーダーロッジ」という汎用機だったのですが、映画のタイアップ企画で新宿ジョイポリスはリングが設置されていました。
バイノーラル録音で、耳元で気味の悪い物音が立つ、例のあれです。省スペースかつ投資額が少ないので、似たアトラクションが各地の遊園地にも設置されていきました。
・ゴーストハンターズ
こちらも各地のジョイポリスどころか、つくばのネオジオワールドにまで展開されていた汎用アトラクション。
実際にお化けが出そうな雰囲気のあるセットの中をライドに乗って進み、ライドのフロントウィンドウに映し出されるゴーストたちをビームで倒すシューティングタイプのアトラクション。
ライドは場面に合わせて回転するし、実際に作られたセットに映像を重ね合わせて表現しているし、なかなかに先進的なシステムでした。
が、ネオジオワールドに展開されていたことを考えると、汎用機なのか、あるいは他社にも販売していたのか。
ちなみに、マップの写真は「トレジャーパニック」という同系統のアトラクションの別プログラム版を使っています。何故??
・ミッションQ
これまた福岡、新潟などの各地のジョイポリスにもありましたし、ほぼ同内容のものがナムコワンダーエッグ、ネオジオワールドつくばなどにも展開された汎用機。Q-ZARという商品名で、ジョイポリスには三井物産が卸していたようです。
2チームに分かれて敵チームの人を銃で撃ったり、相手チームの陣地を銃で撃ったりするゲーム。銃は弱いレーザーを使ったもので、体につけたハーネスであたったかどうかを判定する、サイバーなサバゲーでした。
体を使うゲームで楽しかったのですが、新宿は敷地の関係でフィールドが狭目でした。
・激流~ワイルドリバー~
現在も東京ジョイポリスに設置されている、シミュレーションライドタイプのアトラクション。
ボートタイプのライドに乗り込み、ラフティングとさらなるアドベンチャーをバーチャルに体験できます。内容はコメディアスかつテンポが良く面白い。その後、東京ジョイポリスでストーリーが膨らんでいったことを考えると、ライドシステムはともかくアイデア自体はSEGAが出している(??)。
ライドが揺れ、画面は固定のタイプ。同じシミュレーションライドとしては、画面もライドと一緒に動き、ゲーム性のある「AS-1」に代わってジョイポリスの主力となったアトラクションです。
・ロスト・ワールドスペシャル
こちらはアーケードのシューティングゲームほぼそのまんま。
ちょっとした揺れとライドの動きが加わったくらいです。
というわけで、おそらく完全にSEGA製。
とこんな感じで、シミュレーションライドを中心にすることでスペースを抑えながら、ダークライドや体を動かすアトラクションも配置することでバランスを取った良い構成です。
しかしながら、ジョイポリスには毎度のことなのですが、各アトラクションのハケが悪いです。
例えばセガラリーなんて、5分近いプレイ時間に対して乗車できるのは3~6名。時間あたり40~50人ほどしか捌けません。
これをデパートに設置しても、客数が全く合わないのです。
というのも、百貨店の来店客数は土日にもなれば10万人規模。
ジョイポリスがデパートの集客要因として機能するためには、せめて1日1,000人単位で捌いてくれないと困ります。
それができるのは、おそらく常時動き続けるタイプでハケの良いゴーストハンターズのみ。
これでは土日は長い待ち時間で客側に不満がたまりますし、デパートとしても集客の目玉になりえないので困ってしまいます。
更に言うと、1日1,000人程度では日商300万、年商10億が良いとこ。数10億円規模の投資額を回収しつつ莫大な賃料を払い、スタッフの雇用を維持するには全く足りていませんよね。
しかも困ったことに、新宿ジョイポリスは集客にも苦戦しています。
やはりデパートとは客層が違い、新宿ジョイポリスのメインターゲット層は歌舞伎町周辺の映画館やゲームセンターなどへと流れてしまうことが影響してか、思ったように集客ができませんでした。
実際、2000年前後にはパスポート料金を3,600円から2,900円へと2割ほど値下げしています。
このせいで、入場+好きなアトラクション5つに乗れるジョイセット5券との差額が200円になり、ジョイセット5はほぼ存在価値がないことに…。
このあたりはもう、お客さんの心理的側面になってしまうのですが、1日に3,000円を消費するって、結構本格的なレジャーですよね。
例えば上野動物園なら600円で1日楽しめてしまうわけで。
金額が3,000円になってしまうと、そこから4,000円に増やすための心理的障壁ってそれほど大きくないんです。
新宿に3,000円で遊べるアミューズメント施設があるけど、お台場に行くと4,000円でアトラクション数2倍、コースターやスリルライドが追加されたアミューズメント施設があると言われたら、そりゃお台場に行くわけです。
結局、新宿ジョイポリスは規模的に中途半端すぎてうまく集客ができなかったと考えるのが正しいような気がしています。
ちなみに、新宿ジョイポリスが2000年8月末で閉鎖されてから、跡地はベスト電器、ユザワヤなどと入れ替わっていきました。
3. 屋内アミューズメント施設が生き残る道はあるのか
結局、ジョイポリスは東京を残して国内は全て撤退。
ネオジオワールドはSNKの事情もあったにせよ壊滅。
ナムコはワンダーエッグは東急の土地の問題なので置いておいて、ナンジャタウンは敷地面積を半分に減らして営業。
海外でもディズニー・クエストが2017年末で全店(といっても最大2店でしたが)閉鎖。
こうした状態に陥るのは、やはり顧客満足度の低さ、あるいは未訪問の顧客に対して面白さが伝わりにくいことが一因だと思われます。
屋内の施設であっても通常の遊園地並みの金額を取られるわけですが、それならもっとダイナミックに楽しめる大型遊園地に行ってしまう。
都市型と言うとショッピングのついでに、あるいは仕事帰りにといったイメージをするわけですが、そうしたアクティビティに3,000円も出せない、というのが正直なところでしょう。
こうして需要と価格とが釣り合わないために集客力に欠いているのではないでしょうか。
屋内アミューズメントには屋内アミューズメントなりの楽しさがあるんですけどね。
更に、上にも書きましたが投資額に対して捌ける客数が見合っていないのも問題の1つ。
アトラクションの設置費用については、通常の遊園地アトラクションと比べれば規模が小さい分、やや少ない額で済むはずです。
しかしながら、捌ける客数は桁で落ちてしまいます。
加えて、オペレーションに必要な人員、アトラクションのメンテ費用等は遊園地のアトラクションと大差ないのではないかと思われます。
そうなってくると、やはり運営上は厳しい。
屋内アミューズメントが生き残る1つの道は、大型テーマパーク並の価値を提供すること、つまり多数のアトラクションを集積させた大規模店舗を作ることです。
実際にジョイポリスの中ではダントツに規模の大きかった東京ジョイポリスが生き残っていることからもわかるように、規模があればその分、顧客には魅力的に映り、集客力も確保できます。
ただ、それでは利益率が悪いという問題は解決できていません。
もう1つの道は、やはり都市型アミューズメント施設としての独自の価値を提供すること。
仕事帰りに1アトラクションだけ体験し、気分転換をして帰宅する、というような本来のゲームセンターに近い使われ方を目指し、それによってアトラクションの回転率と来場者数を大幅に増やすという考え方です。
あるいは、子供向けに特化して教育施設としての役目も持たせること。キッザニアやオービィがこれにあたりますね。
前者についてはメンタルヘルスコントロールといったような、自己研鑽的なニュアンスと付加価値を付与していく必要があるのですが、そのあたりはまた別の機会に。
4. 次に読むのにオススメの記事
同じく潰れてしまったジョイポリスのうち、1号店に当たる「横浜ジョイポリス」については以下の記事で詳しいアトラクションの紹介、マップの復元を行っています。
お台場の潰れてしまった屋内アミューズメント施設「ネオジオワールド 東京ベイサイド」については、以下の記事で詳しいアトラクションの紹介、マップの復元等を行っています。
潰れた遊園地のマップシリーズを含む、遊園地関係の記事は以下のページにリストアップしています。
こちらを眺めていただいて、気になる遊園地がありましたら個別の記事も是非読んでいかれてください!
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