書籍「日本懐かし遊園地大全」がスゴい ー 今はなき遊園地のマップ復元シリーズ番外編2

2018年9月16日



こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。

今はもう閉園してしまった遊園地のマップを復元しつつ、アトラクションのご紹介をしているこのシリーズ。今回は、番外編として書籍「日本懐かし遊園地大全」をご紹介していきます。

タイトルは残念な感じなのですが、本を開けば遊園地マニアの愛が詰まった素晴らしい一冊。当ブログの本シリーズでは、屋内アミューズメントやバブル期にオープンした遊園地を中心にご紹介してきましたが、それとは内容が重ならない、古くからある地元民に愛された遊園地を、当時の写真をふんだんに使いながら紹介している本です。

 

1. 遊園地への愛がスゴい

日本懐かし遊園地大全」は、「今はなき遊園地」と、「今も現役の遊園地の昔と今」という2つのパートそれぞれで、遊園地の歴史や概要、アトラクション紹介などをしている本。

それぞれの遊園地に1~6ページを割き、貴重な写真を多数掲載しながら愛のある解説が繰り広げられていきます。

 

ごく普通の観光ガイドライターのような軽めの文体ながら、遊園地の歴史やアトラクション分布などにただならぬ知識を感じさせ、なおかつ愛に溢れた文章

それもそのはず、著者はTVチャンピオン「4代目遊園地王」の佐々木隆氏。そんじょそこらの自称・遊園地の専門家とは違う、本当に遊園地好きな遊園地マニアなのです。

一般の方向けに書かれた本でありながら、遊園地マニアでも唸る知識が豊富に披露されています。

 

前半の今はなき遊園地を紹介するパートでは、「横浜ドリームランド」「多摩テック」「エキスポランド」などの記憶に新しい遊園地から、「谷津遊園」「二子玉川園」などの、もはや若い人には通じないであろう遊園地まで、貴重な写真や資料が満載。

一方の後半でも、「後楽園ゆうえんち(現在の東京ドームシティアトラクションズ)」や「としまえん」など、歴史ある遊園地のかつての写真を大量に掲載。これまた貴重なものばかりです。

最後には白黒ページがあって、ここには東京ドームシティや、名作コースターを数多く生み出したトーゴの方へのインタビューも掲載。これはもう完全に、遊園地マニア向けのファンサービスですね。素晴らしい!

 

というわけで、遊園地マニアではなくても、子供のころ遊園地に行ったことのある方なら「懐かしい」と感じられるし、遊園地マニアなら資料として絶対に持っておきたい1冊。ホントに素晴らしい

 

 

2. 写真がスゴい

上にも書きましたが、とにかく写真がすごい。

閉園してしまった遊園地って、運営会社もなくなってしまっていることが多くて資料の入手が困難なのですが、この本では営業当時のガイドマップ並に写真が揃っている。

 

運営会社が残っているところは、その運営会社から提供を受けていますし、ローラーコースター系サイトとして有名な「エアタイム」さん(閉鎖)など個人からの提供もあり。

その他に、この本のレイアウト構成をしている「スリーコード」なる会社が多数の写真を提供しています。おそらくデザイン会社か広告代理店的なところだと思うのですが、調べても出てこない。

「ぴあ」で見かけた写真も掲載されていますので、おそらくその会社が頑張ってかき集めたんだと思いますが、出所は謎。いずれにしても、資料的に貴重な写真が本当に多い。

 

例えば後楽園ゆうえんちの「ブーメラン」。

設置当時話題になったとは言え、営業期間は僅か4年ほどだったコースターです。

「コークスクリュー」などで有名なArrow社の汎用機で、海外のものは写真が残っているのですが、日本で唯一設置された後楽園ゆうえんちのものはなかなか見かけません。

おそらく東京ドームシティの提供だと思われる写真が掲載されていて、これが見られただけでも買った価値があるってもんです(裏表紙にも掲載されていますので、買わなくても見られちゃいますが)。

 

 

3. これだけ絶賛するにはワケがある

当サイトにしては珍しく手放しで内容を褒めちぎっているわけですが、それにはワケがあります。

実は遊園地関係の本って、遊園地に知識のない観光本ライターが書いていたり、現地に行ったこともない自称・遊園地の専門家が書いていたりして、遊園地に対する愛のない本が多いのです。

 

こんなところで実名をあげてしまうのもどうかと思うのですが、例えば「世界遊園地大全」という本。

遊園地の文化史」という 遊園地の歴史に関するバイブル的本を書かれた方や、観覧車マニアなどがコラム執筆者に名を連ねていながら、ライターによるアオリ文は悲惨そのもの。

現代型テーマパークのハシリ、かの「ナッツ・ベリー・ファーム」に対して、

『スヌーピーの公式テーマパーク。西部開拓時代さながらの園内と合っていないような……。』

というシュルツにもピーナッツにもナッツ・ベリー・ファームにも失礼なアオリや、

ローラーコースターの写真に

『見よ、この迫力。絶叫マシンマニア、全員集合~!』

という、もはや無いほうが良いくらいの、適当で投げやり、かつイラッとさせるアオリ。

シックス・フラッグス系列から1パーク選ぶ際に、マジック・マウンテンではなくオーバー・テキサスを選ぶ構成。

「ブッシュ・ガーデン・タンパ・ベイ」を「ブッシュ・ガーデン」と表記してしまう知識の無さ(ブッシュ・ガーデンは2箇所にパークを展開している)。

写真を見て楽しむ人向けの本なのでしょうが、それにしてはスリルも遊園地の雰囲気も感じられない写真ばかり。あまりに中途半端すぎる本です。

 

こうした本が溢れているからこそ、「日本懐かし遊園地大全」の素晴らしさが際立つのです。

 

 

3. タイトルと表紙はヒドい

惜しむらくは、タイトルと表紙の残念さ。

実はコレ、しかたのない部分があります。

 

「日本懐かし遊園地大全」は、辰巳出版の「日本懐かし大全」シリーズの1冊なのです。

昭和ノスタルジーをテーマに、カセットテープや自販機など、なかなかにマニアックな特集で本を発行しているシリーズ。

タイトルはシリーズに合わせたものですし、表紙もあえてノスタルジックな感情を煽るものになっています。

シリーズだからこそ出版できた本ですからしかたないとは言え、もうちょっと違う形で発行していたらもっと売れたのでは…という思いも抱いてしまいます。

 

いずれにせよ、表紙やタイトルからは想像もできなほどに素晴らしい本。

ぜひ1冊、お手元に。

4. 次に読むのにオススメの記事

潰れてしまった遊園地のマップを復元して掲載しつつ、アトラクションの紹介や潰れてしまった経緯などをご紹介してきたこのシリーズ。

各記事は以下のまとめページ下部にリンクを貼っています。ぜひ他の記事も合わせてご覧ください。

 

シリーズの中でもオススメは、僅か数年で潰れてしまった知る人ぞ知る遊園地「ネオジオワールド」や「ネイブルランド」。

特にネイブルランドは、ほぼ地元の方にしか知られないままひっそりとオープンしてひっそりと閉園した、まさに幻の遊園地です。夕張の「石炭の歴史村」ほど(悪い意味で)有名にもならなかったですしね。

 

 

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Posted by ricebag