富士急ハイランドほぼ全アトラクション紹介&「作っては壊し」の歴史を辿る

2019年7月19日



こんにちは、ホーム遊園地は富士急ハイランドのricebag(@ricebag2)です。

この記事では、富士急ハイランドの全アトラクションをご紹介しつつ、敷地に制約の大きい富士急ハイランドがどのようにしてそのアトラクションを導入してきたのか、スクラップ・アンド・ビルドの歴史をたどっていきます。

なお、手持ちのガイドマップ、観光情報誌等の情報をベースに記事を書いております。記憶が曖昧なので、かなり大雑把なマップベースで議論をしております為、「その間にはこのアトラクションがあったはずだ」「その情報は間違っている」というご指摘大歓迎です。最下部のコメント欄へお願い致します。

資料写真には、なぜか全アトラクションの写真が掲載されていて、手元に残っていた1997年頃現地で配布されていたガイドマップを使っていきます。

1. 富士急ハイランドの敷地の制約

富士急ハイランドは、世界クラスの大型コースターを多数擁する、日本でも有数の遊園地として有名ですのでその点はもはや説明の必要もないかと思います。

その一方で、大型コースターがある割に敷地が狭いのも、また特徴の1つ。

富士急ハイランドの航空写真(Google Map https://www.google.co.jp/maps/より)。細長い敷地がおわかりいただけるかと思います。

富士急ハイランドの敷地面積は51 haとされていますが、これはホテルやら温泉、バックヤードやらを含んだ数値だと思われます。遊園地部分の敷地面積は17 haくらい。

これは、在りし日(トイザらスができる前)のとしまえん(プール込み)と同じくらいの敷地面積。東京都内にあった遊園地と同規模なんです。

大阪市内にあるひらかたパーク(プール込み)も、だいたい同じくらいの規模感。

大型施設では、例えば東京ディズニーランド・シーはともに、アトラクションの敷地を入れつつバックヤードの敷地を除くと40 haくらい。

USJも同じ計算方法で40 haくらいです。

よみうりランドは、使っていない場所も多く規格外な部分もありますが、30 ha弱。熊本県のグリーンランドも、やはり30 ha級。富士急の比較対象としてよく登場するナガシマスパーランドもやはり、30 haオーバー(プール含む)です。

これで大体見えてきたのではないかと思いますが、超大型テーマパークが40 haクラス。郊外大型遊園地が30 haクラス。都市大型遊園地が15~20 ha程度なのです。

富士急ハイランドは、富士の麓という、もはや郊外とも呼べないような立地でありながら、都市の大型遊園地と同程度の敷地面積しかありません

大型コースターを置くには狭い。

さらに、敷地拡張の余地もほぼありません。

1辺は富士急行の線路で塞がれ、反対側は国道139号線。さらに1辺には眼前まで住宅地が迫っています。

唯一、富士急ハイランドと中央自動車道の間だけは、拡張できる可能性があります。しかしながらここには、駐車場、事業所、それとなぜかシチズン系列の工場があります。

・駐車場を、国道139号線を挟んだ現在の第3駐車場付近に集約、立体駐車場化

・事業所機能を国道139号線を挟んだエリアに移設

といった方法は考えられますが、いずれも利便性が大幅に低下してしまいますし、コスト面でも現実的ではないのでしょう。

あとは住宅地側にある自動車教習所跡地を確保できているかどうか。確保できていても、大型アトラクションを建設する住民同意が得られるかどうか。

こうした背景から、敷地に制約のある富士急ハイランドではスクラップ・アンド・ビルドを繰り返さざるを得なかったのです

この記事では、アトラクション紹介とともに、富士急ハイランドの敷地への苦悩を考えていくことにしましょう。

2. ド・ドドンパ

ド・ドドンパの車両。普通のローラーコースターに比べると、先頭車両も巨大なら横幅もでかい!

ド・ドドンパは圧縮空気によりわずか1.56秒で180 km/hまで加速する、世界最大の加速度を誇るコースター。2017年オープン。

加速後はゼロGフォールと呼ばれる無重力状態を体験できる僅かな下り、大きなバンクターン、世界最大級の垂直ループがありますが、いずれも最初の加速と比べればおまけ程度。

とにかく加速一本勝負のコースター。

急加速系が苦手な方には「怖い」コースターですが、わずか1.56秒で終わりますので、耐えられなくはないはず。他に怖い要素は無いと言いますか、加速の余韻に浸っているうちにすべてが終わっています。

その圧倒的な加速度は、多くの方に体験していただきたいところ。

コースターについての詳細は、以下の記事で詳しくご紹介予定です。

さて、ここの土地を語るには、まずは「富士急の入園口が定まらない問題」を語らねばなりません。

富士急には、高速バスやホテル、第1・第3駐車場を利用する方が入場する「第1入園口」と、第2駐車場、路線バス、富士急行線を利用する方が入場する「第2入園口」があります。

第2入園口は線路スレスレにありますので、こちらは固定。問題は第1入園口です。

第1入園口はそもそも、現在のリサとガスパールタウン入口付近にありました。そこから入園したあと、長~いアーケードを通って「展望レストラン2号館(現在のFUJIYAMA駅舎向かい側)」まで進むことができました。

現在の第1入園口は、旧「ゴーカート」跡地。リサとガスパールタウン建設によって、アトラクション1つ分面積を狭めているのです。

現在では、上述の長~いアーケードの一部が、ド・ドドンパ加速トンネルへと変更されています。加速部分にトンネルを付けたのは、もともとのアーケードの名残なのでしょうか。

1997年頃と2003年頃の富士急ハイランドのマップ比較。現地で配布されていたマップより引用。屋根付きの通路部分の一部が、ドドンパの加速トンネルへと変更されています(両者のマップで向きが違うことにご注意ください。ちなみに、現在配布されているマップもまた向きが違います。なんでコロコロ向きを変えるんでしょう??)。

ド・ドドンパの駅舎部分は、もともと400 mスケートリンクと「ムーンサルトスクランブル」があった場所。

富士急行は、橋本聖子や岡崎朋美などを排出した名門スケート部を擁する会社。富士急ハイランドの第3駐車場奥にあるコニファーフォレストは、これらの選手が練習に使用した競技用スケートリンク。

こうした取り組みは、富士急ハイランドがオープン当初は遊園地とスポーツ・レジャーのハイブリッド施設を狙っていたことが背景にあると思われます。競技用の他に、園内に3つのスケートリンクがあり(総氷上面積2.4 haで当時世界一)、更にはボウリング場や卓球場、夏季はテニスコート、プール、ローラースケート場を備えた複合レジャー施設でした。

この中でもアイコニックな存在だったのが、400 mオーバルスケートリンクと、その中央にそびえるコースター「ムーンサルトスクランブル」。ムーンサルトスクランブルは取り壊されるその日まで、世界最大荷重という記録を保ち続けた凄まじいコースターです。

400 mスケートリンクとムーンサルトスクランブル。オーバルリンクの中央にハート型のプレッツェルノットが映える、アイコニックな存在でした。上述の1997年頃のガイドマップより。

おそらくはスケートやスポーツ・レジャーの衰退とともに、ムーンサルトスクランブルの老朽化と恐ろしいハケの悪さ(ド・ドドンパの詳細記事で詳述します)もあって、これらが解体。その跡地の一部にドドンパの駅舎とコースの一部が建設されました。

なお、残った敷地には後に高飛車が建設されています。

さらにさらに、大きなバンクターンと垂直ループの位置は、もともと「ワンダーモノレール」というアトラクションがあった場所。

これは移動には使えない、回遊型のモノレール。モノレールに乗ることがアトラクションとして成立していた、時代を感じさせるライドです。ただし、途中で富士山(現在展望台になっている人工富士)野中を通過。そこは「タイムトンネル」という演出がされていました。なんとなくディズニーランドのウエスタンリバー鉄道を想起させる内容ですね。

営業当時のワンダーモノレール。ものすごく古い型!同じく1997年頃のガイドマップより。

ちなみにワンダーモノレールは97年か98年頃には閉鎖されてしまいましたので、ドドンパ建設は直接の理由ではなく、単に老朽化による閉鎖だったものと思われます。

他にも、「ロケットパイロット」「スーパーアーム」「ダッゼムカー」「スーパースカイサイクル」「ティーカップ」といったアトラクション密集地帯をドドンパの直線が突き抜けてしまったため、一部は廃止、一部は移設という扱いとなりました。

おそらく、このドドンパ建設が富士急史上最大のスクラップ・アンド・ビルド。

こうして様々な跡地を利用して2001年にオープンしたのが、旧「ドドンパ」。

スタートから1.8秒で172 km/hまで加速。当時世界最速でした。また、現在の垂直ループのかわりに垂直に登って垂直に落下する52 mのタワーがありました。

このタワーが曲者で、あまりにも速度が早すぎると頂上でマイナスGがかかりすぎて、乗客に負担がかかってしまいます。一方で、速度が遅いと登りきれません。そんなわけで、(おそらく)常時圧縮空気圧を調整しながら運行されていました。

その調整がイマイチうまくいっていなくて、頂上で強烈なマイナスGを喰らって太ももが痛くなったり、逆に止まりそうなほど遅くなったりしていたのも良い思い出。

2017年に「ド・ドドンパ」へとリニューアルした際に、タワーをループへと変更したことで、常にフルパワーでの運行が(おそらく)可能になり、加速度・速度ともにアップ。現在の形に落ち着いたわけです。

リニューアル時に乗り場プラットフォームが反対側に移され、キューラインもそれに合わせて移っていますが、この変更の意図はわかりません。。。

3. 高飛車

高飛車の121°落下部分。変な写真ですみません。

リニア加速と、最大斜度121°の落下、さらにはダイブループ、インメルマン、コークスクリューなど7回の上下反転を含む複雑なコースター。

ドイツのGerstlauer社製で、2011年にオープンしました。Gerstlauerは1981年創業の比較的新しい遊具メーカー。もともとはミニコースターライクなものを得意としていたのですが、2000年代中盤頃からよみうりランド「スピンランウェイ」や東京ジョイポリス「ヴェールオブダーク(現・激音ライブコースター)」などのスピニングカータイプのコースターと、急落下を含む「大型ミニコースター」とでも言うべきジャンルに手を出し始めます。

Gerstlauerの大型ミニコースター(Eurofighter)は、横4列前後2列のホイールベースが短いコンパクトなライドを用いることで、クルンクルン回ったり傾いたりする独自のコースレイアウトが特徴的。

高飛車は、Eurofighterの最大規模版にあたります。それでも全長は1,000 mとやや控えめですが、屋内コースターパート、リニア加速、7回の上下反転、121°ドロップととにかく盛りだくさん。

とにかくよく動くしよく回りますので、もう訳がわかりません。

ちなみに、121°ドロップは浮遊感がそれほど発生しませんし、リニア加速も0 km/hスタートではないせいもあってどギツイ感じがありません。やや振動が大きいのと上下反転が多いこともあって酔いやすいコースターですが、「動きの怖さ」はそれほどありません。どちらかというと、「精神的に怖い」コースターです。

特に121°ドロップは、前列と後列で明らかにスリルが変わりますので、どうせ乗るなら前列へ(選べませんが)。

コースターについては、1両編成になっている理由も含めて詳細を別記事でご紹介しています。

スクラップ・アンド・ビルド前は、400 mスケートリンクとムーンサルトスクランブルの一部がありました。その辺りは、1つ上のド・ドドンパの項目で詳しく書いてしまいましたので、そちらをご参照ください。

富士急がスゴいのは、スケートリンクとムーンサルトスクランブルを壊してから、高飛車分のスペースを10年以上もあけておいたこと。無理やりはめ込んだと言えなくもありませんが、このスペースに「世界一」と呼べるコースターを設置できる時代になるまで待っていたとも言えなくはないわけで、やはりそこは先見の明があったと評価せざるを得ません。

3. ええじゃないか

ええじゃないかを、旧ハイランドホステル側から見た写真。冬の写真なので、イルミネーションが被ってしまっています・・・

ええじゃないかは複雑なコースと、コースレイアウトに合わせて回転する座席を組み合わせた、超複雑系4次元コースター。2006年オープン。ライドはレールの横にくっついているような「ウィング型」と呼ばれるもの。

そのライドが、コースに合わせて精密に制御されながらグルングルン回転します。

ですので、お腹から89°のドロップを落下したかと思えば、グルンと前転して背中が下になったり、通常ではありえない動きを楽しむことができます。

さらには、「エアタイム」と呼ばれる胃が浮き上がるような、フワリと浮き上がるような状態のまま後ろ向きに座席が回転したり、足元の方向に落下するような動きをしたり。

「制御された4次元」でなければ存在し得ない動きをするため、かなり怖いです。

最高部高度はFUJIYAMAに近い76 m。回転あり、足ぶらぶら状態で不安定、強烈で長~い「浮き」あり、ありとあらゆる方向へのドロップあり。と、人によって様々なタイプがあるコースターに対する「怖い」という感情を網羅し尽くさんばかりの、盛りだくさんコースターです。

このレベルのスリルを味わえるのは、日本でココだけですので、ぜひとも体験を。

ええじゃないかについて詳しくは、別記事で詳しくご紹介しています。

さて、ええじゃないかがあるのは、大部分はもともと「ダブルループ」というコースターがあった辺り。

ダブルループについては以前、よみうりランドの「MOMOnGA」の記事でも触れましたが、日本ではじめて2連続垂直ループを導入したコースター。1980年のことですから、ジャイアントコースターに続いて2番めの大型コースターということになります。

こちらもまた、ムーンサルトスクランブルと同じ明昌製で、最大荷重も5.6Gというアホみたいな値。連続ループの(おそらく)中間付近で、先頭付近に乗ると凄まじいGがかかっていた記憶があります。

コースレイアウトは、現代型垂直ループコースター生みの親、シュワルツコフのコースターをリスペクトしたもの。ただし、本家シュワルツコフと比べるといろいろと甘い作りになっていました。

ダブルループの足元にはスキッドレーシングカートという、ツルツルすべるのでドリフトを容易に楽しめるゴーカートタイプのアトラクションがありましたが、こちらももちろん撤去。

さらには、ええじゃないかのファーストドロップ直後にある、「インサイドレイヴンターン」というエレメント部分は、ハイランドホステル及びドドンパ建設に伴って移設された後のダッゼムカーの跡地にあたります。

ハイランドホステルは、そもそもは高級なハイランドリゾートホテルに対して、低価格をウリにした宿泊施設でした。が、建物の老朽かと、おそらく遊園地に学生向けの低価格宿泊施設があることへの需要の低下もあって、1998年頃に閉鎖。

1999年にはその建物を活用してお化け屋敷「戦慄迷宮」がオープンしますが、こちらも2002年には営業終了、翌年に移転してしまいます。その後、建物だけが取り残された状態だったのを、ついにええじゃないか建設のために取り壊した、というわけです。

4. FUJIYAMA

FUJIYAMA2として夜営業が実施されていた頃の写真。手前に見える明るい直線が、現在一部ド・ドドンパの加速トンネルに置き換えられた通路です。写真は「ぴあMAP遊園地’98-’99」より。

高さ79 m, 落差70 m, 巻き上げ高さ71.5 m, 最高速度130 km/hのいずれもがギネス認定された、当時世界一のローラーコースター。1996年オープン。

今となっては決して乗り心地の良い部類ではありませんが、それでも滑らかに130 km/hで爆走する、笑っちゃうほどのスケール感。途中で富士山を見せてくれたり、その一方で地面スレスレを爆走しながらカーブしたり、メリハリの効いた素晴らしいコースレイアウト。

「怖い」コースターではなくて、スピードの爽快さと、高速でカーブをすることの楽しさを徹底的に味あわせてくれる、激しくも気持ちの良いコースターです。

今はなき日本のトーゴというメーカー製ですが、同じくトーゴ製の大規模コースター、よみうりランド「バンデット」が中盤以降ひたすら爽快さを押し出しているのに対し、FUJIYAMAはややパワー系。

爽快でありながらパワフルで豪快。未だ色褪せぬ傑作コースターです。

FUJIYAMAについて詳しくは、敷地の狭さやそこにコースを組んだ設計者の苦悩も含めて、以下の記事でご紹介しています。

さて、FUJIYAMAが建っている場所は、そのほとんどが駐車場だった場所です。アトラクションを壊したわけではありませんが、駐車場の再整備や通路の整備等が行われました。

ただし、駅舎付近だけは「恐怖のスリラー館」というアトラクションがありました。ダークライドタイプのお化け屋敷で、2種類のコースがあるというのが特徴。こちらはFUJIYAMA建設のタイミングで1995年に取り壊されています。

富士急のスクラップ・アンド・ビルドの方針が如実に現れているのは、むしろFUJIYAMAと交代で営業を終了したコースターの方。

それが「ジャイアントコースター」です。1966年製という日本のローラーコースター黎明期の一品。でありながら、全長1,432 mでギネス認定。最後部高度も40 m, 最高時速80 km/hと今でも十分通用するスケールです。

引田天功のイリュージョンを始めとして、テレビでもよく活用されていまして、富士急の名を日本全国に轟かすのに一役買ったコースター。

FUJIYAMAはある意味、老朽化してスペックも陳腐化してしまったジャイアントコースターをスケールアップして移設するために作られたとも言えるのです。

壊したものを日本一、世界一を名乗れるまでにスケールアップして再登場させる。実に富士急らしいスクラップ・アンド・ビルドですよね。

ジャイアントコースターはFUJIYAMAと入れ替わる形で営業を終了、跡地はトーマスタウンと戦慄迷宮(移設後)になりました。

5. 無限廃坑

両腕を拘束された状態で乗車し、ヘッドホンも装着して楽しむダークライドタイプのホラーアトラクション。2019年オープン。

目で見る演出にお金をかけられない分、耳に頼りつつも、プラスアルファで嗅覚や触覚にも訴えかけつつ、腕を拘束されるという精神的ストレス(とはいってもゆるーいシートベルト)も加えた最新鋭のホラーライドです。

個人的にはお化け屋敷で恐怖を感じないお年頃になってしまいましたので、怖さとかの評価はすみませんがナシで。ただ、展開が早すぎて、かつ説明となる演出が少なすぎてわけがわからないままいつの間にか終わってしまう、国産ダークライドの悪い部分が詰め込まれたような感じになってしまっているのが残念。ライドシステムは意欲的なのですが。。。

アトラクションマニア的には「世界初のロボットライド」というのが気になっていたのですが、「蛍光テープを読み取って動いたり停止したりする」ということですから、ようするにAGV(Automated Guided Vehicle)ですよね。そこら辺の工場で、部品を乗っけて自動で走り回っているアレです。

レールを敷くのと比べれば、工期も短く済みますし、コストも安い。確かに、なんで今まで遊園地に導入されていなかったんだろう、と不思議になるレベルです。

こちらのアトラクションは、EVANGELION: WORLDのレイアウトを一部変更し、できたスペースに設置されています。

EVANGELION: WORLDの設置場所については後でご説明することにしまして、ここでは富士急サウンドホラーアトラクションの歴史を紐解いてみましょう。

初代サウンドアトラクションはヘッドホン方式の「処刑の館」。1994年設置ですので、3Dサウンドアトラクションの黎明期。さすが富士急は導入が早いですね。

場所は、現在のEVANGELION:WORLDの入り口に向かって左手、子供向けのコイン式ゴーカートになっているあたりでした。2010年まで営業されています。

処刑の館と併存する形で、2005年に「棺桶墓場」というアトラクションが設置されています。これは、棺桶に入り、その中で3Dサウンドを聞きつつ、棺桶が揺れたり水しぶきが飛んだりといった演出を楽しむアトラクション。スピーカー方式なのに、個別体験という斬新なシステムでした。何度かリニューアルしつつ、2012年に閉鎖。跡地は「かいけつゾロリのぼうけんランド」になりましたが、そちらも2017年に営業終了。2019年からはNARUTO × BORUTOの遊具が設置される予定のようです。

ちょっと時代は前後しますが、1997年に「ゲゲゲの妖怪屋敷」がオープン。こちらはウォークスルータイプです。2010年に閉鎖され、跡地はトーマスランドの3Dシアターになりました。元の妖怪屋敷の一部分は、2010年から「妖怪小噺」としてサウンドホラーにリニューアル。というわけで、タイミングを考えますと、処刑の館の実質後継にあたるサウンドホラーアトラクションは妖怪小噺だったのです。こちらは2016年に場所をええじゃないか付近に移設し、現在も営業を続けています。ここはええじゃないかと同時に開業した「門前町」があった場所。さらに時代を辿ると「ダブルループ」の駅舎付近でした。妖怪小噺が元あった場所の跡地は、テンテコマイに。

さらにさらに、2015年には絶凶・戦慄迷宮の横に「血に飢えた病棟」がオープンします。基本的にワンオペで、特設感のある作りでしたが、ヘッドホン方式のサウンドホラーという点も含め、内容的には処刑の館を踏襲したもの。2019年に無限廃坑と入れ替わる形で営業を終了しました。

そんなこんなで、妙に充実している富士急のサウンドホラーアトラクション。いよいよライドタイプと3Dサウンドの組み合わせとなり、進化の兆候を見せ始めていますので、今後に目が離せません。

6. テンテコマイ

テンテコマイの駅舎とタワー。ライドはうまく写真に収められません…。

テンテコマイは、足ブラブラ状態で地上32 mを旋回する、スリリングな飛行塔。2016年オープン。ちなみにメーカーは高飛車と同じGerstlauerです。

それだけでも恐怖を感じる方もいらっしゃいそうですが、テンテコマイは一味違います。なんと、手元のレバーをタイミングよく倒していくことで、ライドを傾けたり、きりもみ回転させたりすることができるのです。

「何回回転させられるかを競う」というゲーム要素がありますので、絶叫マシンに乗れるようになったお子様が喜ぶのはもちろん、意外と難しい回転操作を楽しむもよし、上空で大きく傾くスリルを味わうもよし。大人から子供まで様々な楽しみ方ができるアトラクションです。

いわゆるブランコの要領で、左右の振幅をどんどん大きくしていくと回転するのですが、この操作になれない方はなかなか回転させることができません。

さらに、上空で勢いよく左右に振られる恐怖心から、操作を止めてしまう方もチラホラ。「鉄骨番長」などの上空足ブラブラ系アトラクションが苦手な方には、本当に怖いはず。

一方で、回転を始めるとかなりのスピードで回転し続けますので、本気で回すと酔います。回転系らしい気持ち悪さも、並ではありません(ただし、それを自分の操作で調整できますので良心的)。

さて、現在テンテコマイがある場所は、「無限廃坑」の項目でご説明しました通り、全長170 mに及ぶウォークスルーホラーアトラクション「ゲゲゲの妖怪屋敷」のショップ部分、さらには2010年以降「ゲゲゲの妖怪屋敷 妖怪小噺」とショップがあった場所です。妖怪小噺をええじゃないか横に移設して、テンテコマイが開業しました。

ここでは、富士急の飛行塔の歴史に触れておきましょう。テンテコマイは、上でも触れましたとおり、「飛行塔」と呼ばれる古典的なアトラクションの進化系です。

飛行塔というのは、ディズニーランドで言うところの「ダンボ」のような、塔の周りをくるくる回りつつ上昇・下降するアトラクション。国内では遅くとも1920年台には存在していた、子供が空を飛ぶ体験をできる、当時としては最新鋭のアトラクションでした。

富士急には、「ロケットパイロット」と「スプートニック」の2つの飛行塔がありました。ロケットパイロットは、ただ回転しながら上昇・下降するだけのシンプルな飛行塔。スプートニックは、自分で上昇・下降を操作できる、ダンボやスタージェットなどに近いタイプ。さらに、中心軸が傾くというかなり珍しいシステムが付いていました。

ロケットパイロット。年代物の、シンプルな飛行塔でした。97年頃の公式ガイドマップより
中心軸が傾く、珍しいタイプの飛行塔。同じく97年頃の公式ガイドマップより

スプートニックは、現在の「リサとガスパールのそらたびにっき」駅舎付近にありましたので、その原型となった2000年「バードメン」建設に伴い撤去。

「ロケットパイロット」はドドンパのコース上にありましたので、2001年のドドンパ建設に伴い撤去。現在の、「パニックロック」横付近にありました。ドドンパ建設時には、様々なアトラクションがコース上にあったため、「スーパーアーム」や「マッドマウス」などの一部アトラクションは移設されましたが、ロケットパイロットはおそらく老朽化もあって廃止。跡地の一部には、ドドンパ建設に伴って移設した「ダッゼムカー」の敷地が重なっていた…と思われます。あるいはパニックロックの場所かも?

つまり、テンテコマイは15年以上の時を経て復活した飛行塔でもあるのです。子供向けのほのぼのアトラクションが、スリルライドに生まれ変わって再登場し人気を博す。なんとなく、富士急流のアトラクション大規模化による集客術の本質を見ているような気がします。汎用機なんですけどね。

7. 鉄骨番長

鉄骨番長の乗り場。こちらもライドがうまく撮れません…。すみません。

鉄骨番長は、現在では各地に設置されている巨大なウェーブスインガー的アトラクション。2009年オープン。

足ブラブラで開放感バツグンの空中ブランコに乗り込んだら、地上50 mまで上昇してグルグル支柱の周りを回りながら、遠心力でブンブン振り回されちゃいます。もちろんこの規模ですから、本家ウェーブスインガーとは違って支柱が傾くことはありません。ただ上空でグルングルン回るだけ。ただし、そのスピードはなんと50 km/hオーバー。

ほとんど生身で、やたらと高いところに登って高速でぶん回される、そのスリルを楽しむアトラクションです。高所が苦手な方には、もはや拷問。どのコースターより怖いはず。逆に高所が苦手でなければ、爽快で眺めもよく気持ちの良いアトラクションです。

現在となっては、2012年オープンのナガシマスパーランド「スターフライヤー」、グリーンランド「スターフライヤー悟空」、2013年オープンのニューレオマワールド「バードフライヤー」がありますが、2009年にコレを作ったのは、やはりさすが富士急。日本一、日本初へのこだわりと話題作りがウマい。

鉄骨番長があるのは、「スーパーアーム(凄腕)」の跡地。

スーパーアーム。97年頃のガイドマップより

これは3本のアームの先端に複数のライドが円を描くようにくくりつけられていて、アームの先端が回転しつつアーム自体も支柱の周りを回る、2重回転のアトラクション。2019年現在としまえんに現存する「トロイカ」と同じマシンです。

こちらはもともと、現在の「ええじゃないか」のインサイドレイヴンターンの先端と、ドドンパのゼロGフォールにかかるあたりにありました。しかしながら、ドドンパ建設に伴って現在の鉄骨番長の位置に移設。名前も「凄腕」に変更されます。跡地の一部には、同じくドドンパ建設に伴って移設された「ダッゼムカー」がやってきました。

移設後の位置は、「ワンダーモノレール」のレールに一部かかっていたかもしれませんが、基本的には何もなかった場所。より正確には、ミニチュア富士の「富士大科学館」の敷地と言えなくもない場所を切り崩して移設されました。富士急はこうして、「何もない場所」を徹底的に排除することでアトラクション数を増やしてきたのです。単なるスクラップアンドビルドではないので、ややこしい…。

8. マッド・マウス(2019年9月営業終了)

マッド・マウス。いわゆる普通のミニコースターですが、ちょっと規模が大きめ。

左右へクネクネ曲がりながら振り落とされそうなスリルを楽しむ、ワイルドマウスタイプのローラーコースター。

大きなドロップがあるわけでもなく、途中でテンポを変えながらもただひたすら左右に振り落としにかかってくる、ちょっと変わったコースレイアウトです。

全長は340 m級とやや大きめですが、最高時速は31 km/h。前述の通り大きなドロップもありませんので、身長制限をクリアしたお子様なら十分に楽しむことができますし、大人が乗ってもあまりの振り回されっぷりに思わず笑みがこぼれてしまいます。

コースターについて詳しくは、別記事でご紹介していきます。

この不思議なコースレイアウトになったことと、ネットで調べてもイマイチコースターの基本情報が出てこないのには理由があります。

このコースター、実は移設とともにリニューアルされているんです。

もともとは、現在のド・ドドンパのループ後トンネルやその脇のトイレのあたりにありました(多分。正確な位置はいまいち解明できませんでした)。

それが1998年に、現在の場所へ移転されてきたのです。この際に、全長・高さ・最高速度等のスペックがアップ。コレが原因で、いくつかのコースをつなぎ合わせたような不思議なコースレイアウトになっているのです。

現在の立地は、「ローター」と「宇宙旅行館」の跡地の一部。

ローターは、円形の部屋に入って待っていると、部屋が高速でグルグル回りだす、というアトラクション。今では考えられない、シートベルト等一切無しでフリーの状態で体験できるアトラクション(ある種のアスレチック?)でした。回転が早くなると、遠心力で体が壁に張り付きます。タイミングを合わせてジャンプしたり、ポーズを取ったりすれば、そのまま壁に張り付くことができる、というシステム。上のフロアから壁に張り付いてグルグル回っている人たちを眺めることもできました。

宇宙旅行館は、全天周映像でストーリー付きプラネタリウム的体験ができたアトラクション。ちょっと学習要素も入った施設です。昔の富士急って真面目だったんですよ。

9. レッド・タワー

その名の通り、赤いタワー。地上52 mから強制落下させられる、いわゆるターボドロップタイプのアトラクションです。1998年頃オープン。

足ブラブラ状態でタワーの周りにくっついているライドに乗車し、ゆっくり上昇。頂上でしばらく止まった後、-1Gで強制落下。その後、数回バウンドして終了、という流れです。「スペースショット」の逆バージョン。

最高時速は65 km/hとそれほどでもありませんが、垂直落下でマイナスGは、やはり強烈。胃が浮き上がる感覚を楽しむことができます。高所が苦手な方、浮遊感が苦手な方ともに避けるべきアトラクションですが、眺めもよく、一瞬の恐怖の後は爽快で楽しい乗り心地へと一変しますので、一瞬だけなら耐えられる、という方はぜひ。

富士急にしては珍しく、後発で導入されました。同じターボドロップタイプで、レッドタワーよりも先に導入されたものとして、よみうりランドの「クレイジーストン」があります。高さ・マイナスGともにレッドタワーのほうが下という珍しいパターン。

おそらく富士山の眺望を活かすことができて、かつ狭い面積に設置できる絶叫マシーンとして導入されたものと思われます。設置場所は、ワンダーモノレールの端っこ部分。アトラクションオープン後に、ライドの周囲をバードメン(現・リサとガスパールのそらたびにっき)のレールが取り囲みました。

10. トンデミーナ

こちらは「バイキング」の進化版。

足ブラブラ状態で、円盤の外向きに据え付けられた座席に着座。円盤がグルグル回りながら、バイキングの振り子運動をするという激しいアトラクション。

長さ25 mのアームが120度まで振り上げられます。最高到達点は43 m, 最高時速はなんと102 km/h。

一見すると怖そうに見えますが、アームが長くなるほど爽快感を増すのがバイキングタイプの常。このアトラクションも、意外なほどに爽快です。

内臓が浮き上がる感覚はもちろんありますが、周期が長く、角速度(時間あたりの角度変化)も小さくなる分、「突き落とされ感」がなくなって、フワリとした浮遊感を楽しめるようになるのです。

かなり高いところまで上がりますので景色も良いですし、食わず嫌いをせずに是非その爽快感を楽しんで頂きたいアトラクション。

苦手な方は、できるだけ遠くを見つつ、力を抜いてリラックスすることを意識してみましょう。

同型機はナガシマスパーランド「ジャイアントフリスビー」をはじめとして世界各地にありますが、東日本では唯一の存在です。

トンデミーナは「ワイキキウェーブ」の跡地。

ワイキキウェーブは、当時流行していた「トップスピン」系統のアトラクションで、2本のアームに挟まれた横長のライドが、アームの回転によって高いところに上がったり、左右に大きく傾いたりするアトラクション。ただし、トップスピンとは違って上下反転はありませんでした。

汎用機で、国内外問わず世界各地にあったアトラクション。余談ですが、世界で唯一、「ダブルループ」の同型機が設置されていたオーストラリアの「ドリームワールド」には、なぜかワイキキウェーブと同型のマシンも設置されていました。たまたまなのか、明昌が絡んでいたのか。

11. パニック・ロック

こちらも振り子運動をするバイキング系統のアトラクションですが、足ブラブラ状態で乗車して、グルングルン回る進化形。

同じく縦回転をするバイキングの進化形「ルーピングスターシップ」と比べると、振り子の長さは短め。そのかわりに足ブラブラのむき出し状態になっているイメージです。

縦回転型の常で、最下部での強烈なGを避けるため(正円型のループはむち打ちを誘発するというお話は、よみうりランド「MOMOnGA」の記事をご覧ください)ライドの反対側にカウンターウェイトがついていて、自然落下ほどの速度は出ないように調整されています。

このため、0Gになることがないので、胃の浮き上がり感もバイキングほどではありません。

加えて、バイキングやルーピングスターシップは回転しているタイヤを船底に当てて加速させるのですが、足ブラブラ状態で乗車するパニック・ロックはそれができません。回転中心から無理に回さないといけないのですが、それだとトルクが足りない。

このため、2台を同時に、逆方向に回転させることでウェイトバランスを取る変わった仕様。

ややこしい話をしていますが、何が言いたいかといいますと、「バイキングほど怖くないよ」ということ。足ブラブラ状態で天地真っ逆さまになる「不安定感」を楽しむ乗り物であって、浮遊感などのスリルを味わう乗り物ではありません。

同じくスクラップ・アンド・ビルド大好きな後楽園ゆうえんちに同型が導入されていましたが、そちらはすでに撤去済み。

富士急版もポップでおしゃれな見た目をしていますが、1999年導入と意外と古め。

場所は宇宙旅行館の一部と、ロケットパイロットの一部の跡地だと思われます。宇宙旅行館についてはマッド・マウスの項目で、ロケットパイロットについてはテンテコマイの項目でご紹介しましたので、ここでは省略します。(それぞれの項目をご覧になりたい方は、右下のトップへ戻るボタンを押していただいて、目次から御覧ください)

12. ナガシマスカ

ナガシマスカの外観。巨大な招き猫が目印です。

こちらは円形のボートに乗って荒波の中を進む、いわゆるラフティングライドタイプのアトラクション。関東圏では横浜・八景島シーパラダイスの「アクアライド」、関西圏ではひらかたパークの「パチャンガ」、九州ではスペースワールドの「惑星アクア」、グリーンランドの「ドラゴンリバー」、北関東那須ハイランドパーク「リバーアドベンチャー」などに似たアトラクション。

といっても、それらと違ってナガシマスカは日本初の巻き上げ機構搭載版。いやいや、上述のアトラクションだって最後に少し登るやつがあるじゃないか、と言われそうですが、これは富士急の言い方が悪い。

上述のアトラクションは地面より下に水路が掘られたような形になっていて、落下幅が小さいのに対し、ナガシマスカは地上にウォータースライダーのように水路が組まれているのです。だから18 mの高低差が組めるし、渦を巻くように落ちるような複雑な動きだってできちゃう。

通常のラフティングライドが大量の水を使って生み出される波による上下動を楽しむアトラクションであるのに対し、こちらはスピード感や回転、ドロップなどを楽しむアトラクションになっているのです。(海外のラフティングライドには(あのディズニーでさえ)、しっかりしたドロップがあるアトラクションも結構あったりしますが)

ボートタイプのライドの中ではかなりスリリングな乗り物になっていますよ。

夏季期間中は意図的に大量の水をかけられるビショ濡れアトラクションになります。一方で、冬季期間の富士急は尋常じゃなく寒いので、びしょ濡れにすると凍死者が出ちゃいますので、濡れは控えめ。さらにボートライドの周りにアクリルカバーまで付いちゃいます。

アクリルカバー付きのナガシマスカのライド。カバーが曇っていて、周りが見えなくなります…。

残念なことに、アクリルカバーは曇っていて、周りがほとんど見えなくなっちゃいます。それがある意味スリルでもあるのですが、本来の意味でナガシマスカを楽しみたい方は夏のほうがオススメ。

ちなみに、富士急の言う「巻き上げ型」のラフティングライドは、現在ではよみうりランドにも「スプラッシュU.F.O.」として設置されています。あちらはゲーム要素があったり、演出があったり。さらに大きなドロップもあったりしますので、個人的にはよみうりランド版のほうがオススメ。ただし、演出のせいで途中途中で一時停止しますので、テンポはナガシマスカの方が上です。

こちらは昔ながらの急流すべりアトラクション「ロッキー・スライダー」の跡地です。

ロッキー・スライダーは丸太型のボートに乗って急流を下る、古典的アトラクション。ですが、岩山の中を進んだり、途中で動物たちや恐竜が現れたり、2回のドロップがあったりと盛りだくさん。

ワンダーモノレールといいロッキースライダーといい、昔の富士急はどこかディズニーランドを志した部分があったように感じます。本家ディズニーが日本に誕生してから、素早い変わり身を図れたのが好調の秘訣のようにも思います。よりこだわってディズニーを目指したドリームランドは、2つとも転身しきれずに消えてしまいましたからね。

ロッキースライダーは2008年閉鎖、同じく2008年にナガシマスカが営業開始。最近では珍しい「入れ替え型」のスクラップ・アンド・ビルドです。稼ぎ時であるはずの夏場に天候不順が多い富士急にとって、雨風に強いウォーターライドは必須ですからね。

13. クール・ジャッパーン

写真左側がクール・ジャッパーン。ごくごく普通のウォーターシュートです。

今となっては全国各地に存在している、ドロップ一発勝負で高い波しぶきが上がるタイプのウォーターライド。もちろん、富士急は全国に先駆けて1995年に導入しています。当時は「グレート・ザブーン」という名前でした。

当時のガイドブックによると、「何が」かはわかりませんが、「世界最大のウォーターライドだ。」そう。落差は30 m, 落下によって上がる水しぶきの高さは18 mと、確かにものすごいビッグスケールです。

これは当時、かなりの話題を呼び、富士急の集客力に大きく貢献しました。そのこともあってか、ナガシマスパーランドと城島高原パークに同型が導入されていますし、その他にも少し小型のバージョンが各地に導入されています。

最高時速は80 km/hまで出ますが、ドロップ角が40度と浅いこともあって、スリルはほとんどありません。むしろポイントは、高さ18 mの水しぶきを上げる際に発生する衝撃。

やたらと太い安全バーと体の間に肘を挟んだ姿勢で乗車しろ、というアナウンスがありますが、こうしておかないと安全バーにお腹を打ち付けたり、それに伴って首が大きく振られてむち打ちになるんじゃなかろうかという衝撃。水面に「衝突」して水しぶきを上げているのですから、ある意味当然といえば当然です。

ちなみに、ウォーターシュートの水しぶきの上げ方にはいくつかのタイプがあります。例えば「スプラッシュ・マウンテン」は噴水。音も人工のスピーカー音です。アレは落下後しばらくもレールの上を走行していますよね。昔ながらの「急流すべり」は、レールの上を走行しながらもボートと水面を浅く接触させることで水しぶきを上げています。それらに対して、クール・ジャッパーンはいきなり深い水に突撃。だから衝撃がすごいし、水しぶきもすごいんです。

こちらのアトラクションも、やはり冬場はアクリルカバー付きになって楽しさ半減。周囲が見にくくなりますし、波しぶきの体感も半減です。

ここにもともと何があったのかは、記憶も記録も残っていません。1995年以前の資料が手元にないのです。

大本は噴水か何かのある水場だったはずなのですが、その後なにかあったかどうか…。情報をお持ちの方、下のコメント欄からぜひお知らせください。

14. 絶凶・戦慄迷宮

言わずとしれた、富士急お化け屋敷の代名詞的アトラクション。

1999年から営業。営業を終了した園内ホテル「ハイランドホステル」をそのまま利用して作られたお化け屋敷でした。大きなホテルをまるごと使ったお化け屋敷でしたので、歩行距離は500 mと無茶苦茶長いものでした。

2003年に現在のナガシマスカ奥に移転し、歩行距離は600 mオーバーへ。歩行距離が世界で最も長いホラーハウスとしてギネスブックに登録されました。

アクターが脅かすタイプの人力お化け屋敷。2019年現在では900 mも歩かされますので、その間ひたすら脅かし続けられることを考えると、怖がりな人にはかなり厳しいアトラクションです。途中退出口もありますが、不安な方は予め他のアクター型お化け屋敷を体験しておくのがオススメ。

逆に、人に脅かされることに恐怖を感じない方は、あまり怖がれない内容。暗闇や温度変化などの演出もありますが、やはりあくまで「自分は通路に沿って自由に動けて、お化けは自分に危害を加えない従来のお化け屋敷」の範疇を出るものではありません。その一方で、アクターの動きや演出はかなり工夫されていますので、ある種の「身近で見られる演劇」として楽しむ方法はアリ。

従来よりフリーパスでは利用できない別料金制でしたが、入園無料化に伴いフリーパス所持者は割引料金で利用できる形になっています。

上述の通り、もともとはハイランドホステルの建物をそのまま利用していました。ただし、ハイランドホステルはそもそも老朽化もあって営業終了したホテルでしたので、2003年にその場所での営業を終了。跡地はええじゃないかの一部(ファーストドロップ後のレイヴンターンの位置)になっています。

移転先は、かつてジャイアントコースターがあった場所の一部。トーマスランドと隣接する形になっています。

1996年から2003年まで、かなりの長期に渡って空いていたスペースということになります。

15. 絶望要塞

絶望要塞はミッションクリア型の攻略系アトラクション。

最近では各地の遊園地に子供向けのミッションクリア型アトラクションが登場していますが、絶望要塞シリーズは一味違います。特徴はなんといってもその難易度。

「人類にクリア可能ではあるものの、絶対にクリアさせない」という強い意志を感じさせるほどに難易度を高めたミッションたち。基本的にはクリア者が出るとリニューアルされるというシステムで、これまでの完全クリア者は平均10万人に1人の割合という難易度。

各バージョン、グループで挑む形式になっていて、2019年現在の絶望要塞3は、最大4名。スマホのような端末をグループに1台渡されて、最初はその端末をかざすターミナルを探し回るミッション。あたりを4つ引くとクリアになって、続いてはサーチライトを避けながら進むなどの体を使う系ミッション。こうしたミッションをひたすらクリアし続けるアトラクションです。

あまりの難易度の高さに、攻略サークルが組まれてその人達が朝から晩まで、月に何度も挑み続けてもクリアできないというレベルですので、一発勝負でのクリアはほぼ不可能。「こうすればできる」という確たる攻略法もなくて、ランダム系のものは都度正解が変えられてしまいます。

というわけで、体験すればフラストレーションが溜まること間違いなしですが、ゲーム自体が楽しいのと、悔しさからなんとかクリアしたいと思ってしまう謎の魅力があります。

さて、このアトラクションを語るには、「武田信玄 埋蔵金伝説」の話をしておかなければなりません。

これはそもそも、「富士大科学館」の跡地にオープンしたアトラクション。富士大科学館は、現在は展望台になっている人工の小富士内部にあったもので、歴史や地学的な内容を展示で伝える本格的な科学館でした。これは現在の「フジヤマミュージアム」がある意味での後継と言えるでしょうか。内容は芸術へと移ってしまっていますが。。。

さて、富士大科学館内部をそのまま利用した武田信玄 埋蔵金伝説は、磁気カードを渡されて、カードリーダーをひたすら探して読み込ませることで、磁気カードに「風林火山」の4文字を集めるという内容でした。館内には大量のカードリーダーがあって、大半はダミー。中には集めた文字を消されるものもあったりして、フラストレーションが溜まりつつも楽しい内容でした。そのミッションをクリアすると最終ミッションに挑むことができて、張り巡らされたレーザーを避けながら時間内にゴールするとクリア、という内容でした。制限時間は最終ミッションまで含めて10分。これが埋蔵金伝説Rに進化して、制限時間が8分に。

さらに埋蔵金伝説 風林火山へとバージョンアップされて、磁気カードからICカードへと変更。

2000年から2010年まであった人気アトラクションでしたが、2010年には内容ほぼそのままで「合戦 戦国BASARA」にリニューアル。2012年まで営業されます。

加えて同時期に存在した「ガンダムクライシス」という、携帯端末をリーダーにかざしてパーツを集めるアトラクションも複合されるような形で2012年に絶望要塞がオープン。

場所も少し変わっています。以前は小富士の中だったのが、その入口脇へと移動。ここはもともと、おそらく「ラーメンハウス」やワンダーモノレール、スーパースカイサイクルなどの一部があった場所で、その後ワンダーモノレール営業終了、スカイサイクル経路短縮、ドドンパ建設などを経てあまったスペースに「リカちゃんハウス」が建設されました。これはリカちゃんの家を再現したウォークスルー型のアトラクション。リカちゃんのドレスを着て写真撮影できる施設やショップ、カフェが併設されていました。

リカちゃんが2002年~2009年まで営業したあと、2009年から2010年までは子供向けアスレチック施設中心のキッズスタジオに。さらに2010年から2012年までは、合戦 戦国BASARAのグッズを販売するショップになっていました。そうしてようやく、2012年に絶望要塞へと変更されたのです。もちろん、小富士内部のかつて合戦 戦国BASARAだった場所も施設の一部として使われています。これは2つの施設を複合して1つの施設を作ってしまった、珍しいパターンのスクラップ・アンド・ビルド。

その後複数回のバージョンアップとリニューアルを経て現在に至っています。

16. ほぼドドンパ/ほぼFUJIYAMA

こちらはVRアトラクション。

ドドンパがド・ドドンパへとリニューアルする際に営業を休止したため、その間ドドンパを体験できるVRアトラクションとして設置されました。

現在はドドンパとFUJIYAMAの2つのバージョンがあります。いずれも動かないドドンパの車両へと乗り込み、ハーネスを着用することなくライドのVR映像が楽しめるという仕組み。

FUJIYAMA, ドドンパともに実写のVR映像ですので、怖くて実際のコースターに乗れない方、年齢制限や身長制限で乗れない方、雨で動いていない日などにまる乗車しているかのような気分を味わうことができます。

途中途中で富士急のオリジナルキャラクター絶叫戦隊ハイランダーが登場していろいろとチャチャを入れることで間をもたせています。

VRならではの良さというのは特にありませんので、実際にコースターに乗れる方はわざわざ体験するまでもないかな、というレベル。

その性質から、営業開始時はドドンパの駅舎を使っていました。その後、トンデミーナとマッド・マウスの間、ムーン・レイカー跡地に移設。

ムーン・レイカーは、大きな円盤に内向きに着座して、円盤が高速回転しながら83度まで持ち上げられ、さらにそのまま土台が回転するという複雑系回転マシン。当時流行していた回転系マシンですが、富士急はこの1機のみで、このジャンルに傾倒することはありませんでした。今にして思えば正しい選択なのですが、流行に流されず、小型マシンを一定数導入しつつも、富士急にしかできない大型マシンにこだわる姿勢はさすが。

内容的にはトンデミーナと重複する部分がありますが、トンデミーナが2004年に開業して以降もしばらく残されていて、2010年に営業を終了しました。

こうした大型の回転マシンは得てして大規模メンテ費用が割に合わなくなるようで、なかなか長期間営業しているものを見かけません。こちらもおそらくメンテ費用と集客力を秤にかけたのか、2010年に跡地利用の目論見なく営業終了。2017年にほぼドドンパ/ほぼFUJIYAMAが開業するまで死んだ土地となっていました。

17. EVANGELION: WORLD

初号機へのプロジェクションマッピング。格納庫が初号機の肩から上の分、そのまま再現されているイメージです。光と音でド派手な演出がされています。

エヴァンゲリヲン新劇場版の世界を再現したウォークスルータイプの展示型アトラクション。

等身大エヴァ初号機へのプロジェクションマッピングや、実物大モノリスなどファン垂涎、エヴァを知らなければよくわからない展示がたくさんあります。

随時展示替えや配置換えが行われるので、その時々で内容が変わったりしますが、エレベーターや入場ゲート、弐号機やガラスを割るアスカなどもあったりして、ついつい作品中のシーンを再現した写真撮影等したくなる出来栄え。知らなきゃ本当にナンノコッチャだと思いますが。

併設のショップでは限定商品も販売。

このアトラクションの背景には、富士急とサブカルコンテンツとのコラボの歴史があります。

古くは1997年「ゲゲゲの鬼太郎妖怪屋敷」、1998年に「トーマスランド」、2000年「ガンダム・ザ・ライド」、2002年「リカちゃんハウス」、2003年「ハムハム!どきどきおうこく」、2007年「カートゥーン・ラグーン」、2010年「合戦 戦国BASARA」、2012年「かいけつゾロリのぼうけんランド」、2013年「リサとガスパールタウン」、2019年「NARUTO×BORUTO」と常設だけでもかなりの数。他にも、期間限定コラボもあったりしました。

子供向けから大人向けまで、それぞれしっかりターゲットを絞り込んだ展開がされてきましたが、その中でもエヴァの背景にあるのは、おそらくガンダム・ザ・ライドの成功。来場者数に加えて、グッズの売れ行きも良かったんでしょうね。

遊園地を訪れる子育て世代が、ガンダム世代からエヴァ世代へと移り変わったこともあってか、2010年にEVANGELION: WORLDがオープン(エヴァTV版の放映が1995年ですから、当時の若者はアラフォーになっています。もちろん、エヴァはさらに若い世代にも馴染みがあります)。

立地は「シューティングコースター・ゾーラ」の跡地です。ゾーラはライド備え付けの銃を打ってエイリアンを倒しつつ、屋内型コースターとしても楽しめるハイブリッド型のアトラクション。

驚くべきは、その開業年。なんと1988年開業なのです。そもそもダークライド型のシューティングアトラクション自体ほとんどなかったと思われる時代に、コースターと融合させてしまっているのです。

同じようなコンセプトのジョイポリス「レイルチェイス・ザ・ライド」が1994年オープンですから、いかに富士急が時代の先端をいっていたか、おわかりいただけるのではないかと思います。

キューラインも作り込まれていましたし、ライドも格好良い。シューティング部はナムコ製なので、ゲームとしてもしっかりしていますし、コースターとしても短いながらもトーゴ製らしいしっかりとしたスリル。素晴らしいアトラクションでした。

2010年に、おそらく内容が時代遅れになってしまったことと老朽化もあって営業終了。その年のうちに入れ替わる形でEVANGELION: WORLDがオープンしました。

18. ゲゲゲの妖怪屋敷 妖怪小噺

妖怪たちが耳元でワイワイやっているのを聞く、サウンドホラー(ホラー弱め)タイプのアトラクション。

ヘッドホンを装着して聞くタイプです。内容的には妖怪紹介的なありきたりなストーリー。最後は鬼太郎が懲らしめて一件落着の、いつものパターンです。

小さなお子様には結構怖いかもしれませんので(特に部屋が暗くなりますので…)お子様連れの方は要注意。

もともとはゲゲゲの妖怪屋敷というウォークスルータイプのお化け屋敷として、現在の「トーマスのドキドキプレイグラウンド」と「テンテコマイ」の場所で営業していました。1997年から2010年まで営業した後、2010年にドキドキプレイグラウンドのエリアはトーマスランドに編入。

場所が狭くなったので、3Dサウンド形式のホラーアトラクションへと改められました。

さらに、2016年にテンテコマイ建設のため移設。ええじゃないか脇の「門前横丁」があったエリアをそのまま転用しています。

門前横丁はある意味、ダブルループとスキッドレーシング、ハイランドホステルをええじゃないかへと作り変えた際に「余ったスペース」ですので、見事な有効活用。

元の場所は切り売りされつつも、なんとかゲゲゲの鬼太郎の要素を残そうとする、ちょっと変わったスクラップ・アンド・ビルドです。

19. 富士飛行社

富士飛行社のエントランス

富士飛行社は、足ブラブラ状態で高いところに釣り上げられる横長リフト状のライドに乗り、大型の球面スクリーンに視野いっぱいに映し出される映像を楽しむアトラクション。

いってしまえばディズニーの「ソアリン」のパクリなのですが、ソアリンの特許等はしっかりと回避して作られた台湾メーカーの汎用機ベース。

富士山周辺の名所を体むき出しで飛んでいるかのような体験ができるシミュレーションライドです。

風や匂いの演出もあり、ライドの動きも本家ソアリンよりちょっと激しいので、リアル感はかなりのもの。音楽はなんと久石譲作曲です。映像にもちょっとしたストーリーがあったり、バックグラウンドストーリーもしっかりしたりしていて、全体の体験としては個人的にはソアリンより上だと思っています。

本家ソアリンの初代は2001年、アナハイムのカリフォルニア・アドベンチャーに導入。2019年には東京ディズニーシーにも導入されていますが、富士飛行社はそれよりも前、2014年に設置。本家に先駆け、日本初の「ソアリン系」アトラクションとなりました。

設置場所は、もともと「アングラー」というアトラクションがあった場所。モーションライドの中でも、映像がライド内に設置されている、いわゆる「スター・ツアーズ」型のアトラクションでした。内容は深海クルーズ中に巨大生物に襲われる、というようなもの。

プレショーがあり、提供にNECが付いていて、さらには建物内にグッズショップがあって、アトラクションをテーマにしたカフェがあって、とディズニーを目指したと思えるような構成。

当時、雑なシミュレーションライドが巷の遊園地に氾濫していた中で、圧倒的にクオリティが高く、お金もかかったアトラクションでした。

その後、2000年にリニューアルされて映像が3D化。内容もガンダムへと変更され、「ガンダム・ザ・ライド」としての営業がスタート。ベースのシステムが良いことに加えて、しっかりとしたプレショーがあったり、雰囲気も作り込まれたりしていて、こちらもクオリティの高いアトラクションでした。

2007年に再リニューアル。今度はガンダムのテーマはそのままに、館内を歩き回ってミッションをクリアするアトラクションへと変更されます。「武田信玄 埋蔵金伝説」の進化版のような内容でした。

その建物を活用しつつ、全面リニューアルして富士飛行社に。稀に映像のリニューアルが行われたり、進撃の巨人コラボ等のソフトが使われることもあります。

20. リサとガスパールのそらたびにっき

そらたびにっきのレール。実はこれ、日本初だったコースターの転用なのです。

前後に二人乗りタイプのぶら下がり型コースター。今時珍しいクローズドタイプのサスペンデッドコースターです。

それほどアップダウンもないのですが、そこそこスピードは出るので、大型アトラクションは怖いけどスピード感は味わいたいという元気の良いお子様向け。

ブレーキングが激しいので、そこだけ要注意です。

さて、このアトラクションの本題はそこではありません。

なんで富士急に、子供向けサスペンデッドコースターなんていうマニアックなものがあるのか。実は、このコースターが、とある日本初のコースターを転用して作られたからなんです。

そのコースターこそ、伝説の「バードメン」。日本ではじめて、腹ばいで乗車するフライングダイプのライドを導入したコースターだったのです。

しかしながら導入から1年弱が経過した2001年5月、車両の一部が損傷して急ブレーキがかかり、乗客が背骨を折る重症を負いました。これは設計者がかかる力を見積もる際の数値が甘かったために起きた事故だと言われています。

これ以降も海外ではフライングコースターの進化が続いていくのですが、日本では急停止時に背骨に負荷がかかる構造上の問題もあってか、2015年7月のナガシマスパーランド「アクロバット」、2016年3月のUSJ「フライングダイナソー」まで、フライングコースターの時が止まってしまいます。

不思議なのは、ドドンパ建設の前年2000年という時期に、全長440 mでスリルもそれほどないフライングコースターを、しかも国産で作ろうとしたのか、という点。2000年にはVekoma社がフライングタイプの開発を進めていたはずですが、それに対抗しようとして焦ったのか。ライド形式は、後のZamperla社のタイプと似ていて悪くはなかったのですが、残念です。

その後、2003年頃からハム太郎のアトラクション「ふわふわお空の大冒険」として、車両は現在のサスペンデッドタイプになってリニューアルオープン。リサとガスパールへは、キャラクター入れ替えのみのシンプルなリニューアルでした。

事故の原因なども含めて、詳しくは以下の記事でご紹介しています。

21. トーマスランド

この記事をお読みの方で、トーマスランドに興味をお持ちの方はあまりいらっしゃらないでしょうから、ここはサクッと紹介しちゃいます。そもそも25,000字オーバーの記事をここまで読まれる方もいらっしゃらないでしょうし…。

1998年に開業した、トーマスをテーマとしたエリア。様々なお子様向けアトラクションがあって、一部のアトラクションを除けば、付添さえあれば0歳からでも利用できちゃう誰もが楽しめるエリアです。

大半がいろんな遊園地にある汎用機にキャラクターを付けたものなので、紹介するまでもありません。個人的にオススメなのは、オリジナルアトラクションの「トーマスのたからさがし大冒険」。ダークライド形式で、動く仕掛けはほとんどないのですが、ライドに付いている懐中電灯で照らすと光る仕掛けがあったり、ターンテーブルやスイッチバックがあったり。各キャラクターもかなり作り込まれていて、「遊園地」としては驚くほど良い出来。

もう1つのオススメは、やはりトーマスに乗車できる「トーマスとパーシーのわくわくライド」でしょう。こちらは案内役の運転士さんのノリに大きく依存するところがありますが、途中に様々なキャラクターが登場して会話もあり、楽しい内容です。

さて、そのトーマスランドは、ジャイアントコースターの跡地に建設されています。

ジャイアントコースターの後継機であるFUJIYAMAを余剰スペースに製作し、余ったジャイアントコースター跡地を利用してファミリー向けアトラクションを拡充するという形で、スリルシーカーとファミリーという2つの客層の集客に成功したのです。

22. ファミリー系アトラクション

この記事を読まれている方にはあまり興味ないかと思いますので、サクッとご紹介。

・シャイニングフラワー

ごく普通の観覧車。1966年製ベースで1995年リニューアルということもあり、直径は45mと控えめ。富士山をゆっくり眺めるのには良いのですが、眺め自体はFUJIYAMAのファーストドロップ後の方が、肉眼で見られる分ベター。透明のゴンドラもあります。場所は1966年からそのまま。

・メリーゴーラウンド

ごく普通の回転木馬。これといった特徴は特にありません。ギリギリでドドンパの軌道上には乗らなかったので、移設もされていないはず。

・ティーカップ

少ターンテーブルに6台、大ターンテーブルに少ターンテーブルが3つあって、合計18台のティーカップがある大型マシン。屋根付きでどこかディズニー版を思い起こさせる構成。こちらもドドンパの軌道上には乗らなかったので(少し被っていて、アトラクションの上をレールが通過していますが)、移設されていないはず。

・ウェーブスインガー

至って普通の回転ブランコ。支柱が傾きながらグルグル回転するアレです。メリーゴーラウンドやティーカップとはドドンパの線路を挟んで反対側ですが、これもギリギリ被らなかったはず。

・スカイサイクル

ごくごく普通のレール式サイクルアトラクション。もともとはめちゃくちゃ長くて、現在のドドンパのバンクターン部やナガシマスカ付近までありました。が、ドドンパ建設前に大幅に短縮。

・ウォーターエース(スケートリンク)

夏季だけ営業のペダルボート。冬は極寒の富士急では、池が凍っちゃって冬季営業できません。そのかわり、冬はスケートリンクとして営業。池の中にいくつもの植え込みがあったりして、運転しがいがあるのが良い点。おそらく創業当初からある、リゾート感あふれるゆとりのあるアトラクション。現在では一部分、ドドンパのレールが被っちゃってますが…。

23. 富士急のスクラップアンドビルドの法則と今後の予想

ここまでいろいろと書いてきた内容から、富士急がスクラップアンドビルドをする際の一定の法則が見えてきます。

まず、「アトラクションの幅」を重視していること。特定の種類のアトラクションに限定しすぎることなく、

  • 王道コースター
  • ゲテモノコースター
  • 回転系スリルライド
  • タワー系スリルライド
  • スイング系スリルライド
  • ウォーターライド
  • ホラーアトラクション
  • 屋内ライド
  • ファミリーアトラクション
  • ミッション系アトラクション

などなど、ありとあらゆるジャンルを取り揃えています。その中で被ったアトラクションが存在すると、古いものからスクラップの対象になっていきます。

逆に、あるアトラクションがスクラップされてジャンルが欠けると、同ジャンルの後継アトラクションが作られます。

これは、特定のターゲット層に絞り込んでしまうと、遊園地としてはマーケットが小さくなりすぎて運営が立ち行かなくなるため、ターゲット層を広げるという意味合いがメインだと思われます。さらに、富士急は屋外アトラクションが多くて雨に弱いという印象が広まってしまっていますので、雨でも楽しめるというイメージを少しでも浸透させるべく、屋内アトラクションやウォーターライドの拡充をしているようです。

一方で、老朽化が進行して更新予定のないアトラクションは、そのままただ解体されるだけのこともあります。こうした場所にも、後々新しいアトラクションが設置されるのですが、数年程度は放置されることがよくあります。

富士急には、意外と遊休地があるのです。2019年現在で言えば、例えば旧ハイランドボウル。

また、NARUTO×BORUTOが建設された建物も、しばらく遊休地になっていました。

土地を活用する気はあるんだけど、投資や敷地形状の問題で放置されることもあるようです。

もう1点、最大の特徴は、いくつかの敷地をくっつけたり分割したりして新たなアトラクションを作ること。通常の遊園地では1つのアトラクションの跡地にそのまま別のアトラクションを設置することが多いのですが、富士急ではドドンパ設置時の大規模スクラップアンドビルドに代表されるように、土地の連結使用が多いのです。

土地をくっつけて大型アトラクションを導入しつつ、余ったスペースには小型のアトラクションを詰め込む。そんな使い方が多く見られます。

これらを合わせて考えますと、次にスクラップされそうなのは

  • クール・ジャッパーン
  • そらたびにっき
  • レッドタワー
  • スカイサイクル
  • パニック・ロック
  • マッド・マウス

あたりではないでしょうか。特に、クール・ジャッパーン周辺4アトラクションは、まとめてスクラップされて大型アトラクションへと変更される可能性があるのではないかと。ただし、ここは立地的に見た目のインパクトがあるアトラクションになるはず。

一方、パニック・ロックとマッド・マウスの敷地もくっつけられますし、両者ともにそこそこ年代物のアトラクションのため、それほど集客力はないと思われます。この2つの敷地は、屋内型のミニコースター(ただし、「世界初」「世界一」を名乗れる何らかの特徴あり)に転用されるのではないでしょうか。フードスタジアム的な施設をこちらに作って、フードスタジアム跡地に屋内アトラクションを設置するというのも面白いかもしれません。

トーマスランド裏手の教習所跡地を確保できていれば、トーマスランドの一部アトラクションを移設しつつ拡張して、空いた土地をうまく活用して大型アトラクションという手も考えられます。

富士山世界遺産化に伴って、景観への配慮という問題が発生しているのが痛いところですが、富士急は今後も尖った遊園地として、ド派手なスクラップアンドビルドを繰り返していくでしょう。

同じグループのさがみ湖プレジャーフォレストやぐりんぱとの関係も気になるところではありますが。。。