【アジアパーク】営業当時のマップ復元&アトラクション紹介! ー 今はなき遊園地のマップ復元シリーズ4
こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。
この記事では、第3セクターの代表的失敗作「アジアパーク」の営業当時のマップを復元して、アトラクションの詳細をご紹介していきます!
- 第3セクターで行政に丸投げダメ、絶対
- 第3セクターは掛け算ができない!
- アトラクション一個ではテーマパークは成り立たない
1. 跡地利用を第3セクターに任せてはダメ!
1.1 ダメな第3セクターの考え方
アジアパークは、熊本県荒尾市の三井三池炭鉱の社宅(?)跡地を利用して作られたテーマパークです。
ここを開発するにあたって、熊本県や国の行政と、三井鉱山を筆頭とする民間が組んで、俗に言う第3セクターという組織を作りました。
ちなみに、お隣の福岡県大牟田市には同じく第3セクターでわずか3年で潰れた「ネイブルランド」という遊園地もありました。第3セクターとはなにか、三井三池炭鉱とは何かについては、そちらの記事に詳しく記載していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
第3セクターはバブルからバブル崩壊直後にかけて流行った方式。行政と民間の潤沢な資金をもとに、お役所仕事のノリで多数の箱モノや施設等を作り、ものすごい負債を作ることとなりました。
行政のお金を使って、企画や運営は民間に委託、行政はその監視、ということならまだうまく行かなくはないような気もしますが、実際にはお役所がそんなに黙っていられるはずがありません。
企画段階からアレヤコレヤと細かいところにまで指示を出しまくって迷走するのが関の山です。
アジアパークも例外ではなく、東京ディズニーランドのわずか1/10にも満たない敷地に、なんの脈絡もなくアジアという広いくくりのテーマでテーマパークを作る、という謎の構想が立ち上がります。
そうしてできあがったのは、460 mの水路を巡るアトラクション1つと、レストランやショップがいくつか入った建物だけ。
総工費が44億円と言われていますが、これは東京ディズニーリゾートの大型アトラクションが100億円規模であることを考えれば、まぁわからなくはない額です。
ですが、いくらなんでもアジアの魅力を伝えるためにアトラクション1つでは寂しすぎる!
「使える予算と敷地の範囲で精一杯頑張った」という言い訳が聞こえてくるようですが、そもそも敷地が限られているのにテーマが広すぎるのです……。
ただし、立地だけは素晴らしいです。
なんと国内最大・国内最多アトラクションの遊園地「三井グリーンランド(現・グリーンランド)」の隣。遊園地から徒歩5分で行ける場所なのです。
それなら遊園地の中に作れよとか、いろいろ突っ込みどころはありますが。。。
それでも、かなりの集客力を持つ遊園地の隣に作ったというのは、第3セクターにしては良い判断です(と言いますか、遊園地の隣りにあった敷地の活用法として考えられたのがアジアパークなので、当然といえば当然です)。
1.2 第3セクターは小学校の算数ができない
立地は良いので、かなりの集客は見込めます。
が、致命的なことにアジアパークを運営する第3セクターは、簡単な掛け算ができませんでした。
アジアパークのメインアトラクション、「アジアクルーズ」は、大人も子供も乗車料金600円。
所要時間15分のアトラクションなので、妥当なところです。
需要に対して料金は見合っていると思われます。ので、需要供給バランスとしては良いでしょう。
ですが、よく考えてみてください。
アトラクションが1つしかないので、客単価は600円です。
初年度の入場者数は絶好調で60万人弱ということなので、年間収入は
600×600,000=360,000,000
3.6億円です。
他に入店するテナントからの収入もありますが、こちらは立地的にどんなに頑張っても0.5億といったところでしょう。
年間の総収入はわずか4億円にしかならないのです。
初期投資に44億円かかっているんですよ。絶好調で4億円しか入ってこないのでは、お話になりません。
更に運営費を考えると、これまたバカになりません。
チケット売り場兼案内所がありますので、そこに2名、アトラクション乗り場に2名、降り場に1名配置するとします。さらにアトラクション運行管理が1名は必要でしょう。
営業時間は当初1日12時間でしたので、どんなに頑張っても人件費だけで1日10万はかかります。
ボートタイプのアトラクションは水をポンプで循環させて船を動かすため、そのための電気代がかかります。さらにスモークやレーザー、映像なども多用していましたので、こちらも電気代や二酸化炭素のガスボンベ代などがかさんでいきます。
こちらも運営費だけで1日最低10万円~といったところでしょう。
20万円で360日運営すると(休業日が年4日設定されていました)、運営に必要なお金だけで1億円近く使ってしまうのです。
年間10万~20万人は来場してくれないと、運営すらままならない。
いくらなんでも見積もりが甘すぎます。
ということで、やはりアジアパークを運営する第3セクターは簡単な掛け算もできなかったと考えるのが妥当でしょう。
跡地を利用するのに第3セクターを使っても、ろくなことにはなりません。土地を提供した会社は、最初の出資金だけ支払えばあとは責任放棄できるので楽なのかもしれませんが……。
アジアパークは案の定、1993年の開園からわずか3年でメインのアトラクションを大幅改変、結局2000年には30億以上の負債を抱えて閉鎖されてしまいました。
2. アジアパークのマップを復元!
それではいよいよ、営業当時のマップを復元してご紹介しましょう!
アジアクルーズは、ボートに乗って460 mの水路をゆったりとめぐりながら、アジア各地の観光名所のミニチュアを見て回るアトラクション。
言ってしまえば「東武ワールドスクウェア」のショボい版と言ったところなのですが、それにしてはボートに乗っているので1方向からしか見られないし、一定時間で通り過ぎてしまうのでじっくり見られないしとツッコミどころだらけ。
最初の屋内パートでは少しだけ巻き上げがあり、その高低差を利用してボートが進んでいきます。
終盤は水(ミスト?)に投影した映像があったり、レーザーがあったり花の香りがしたりと、様々な体感要素を畳み掛けてきます。
が、所詮はお役所仕事ですので、効果的に使っているとは言い難く、かなり残念な感じでした。
ボートに屋根はついているものの、大半は屋外のパートですので、どうしても気候に左右されてしまうのも難点。と言いますか、メンテナンスの観点から頑張って全面屋根をつけるべきだったんじゃないかと。。
そんな感じで大変残念なアトラクション1つしかないアジアパーク。もちろんリピーターが来るはずもなく、2年目以降はお客さんが激減していきます。
ついに開園から3年後にはオリジナルの状態でのアトラクション運営を諦め、セガのゲーセンを誘致。
アジアクルーズの水路はすべて埋め立て、なんとゴーカートとして活用し始めます。
ボートに比べるとゴーカートはかなり速いので、細かな造形にまでこだわったジオラマも一瞬で通り過ぎてしまい、もはや背景くらいの価値しか持たなくなってしまいました。
ちなみにゴーカートの料金は400円。ゴーカート分の回収しか考えてない料金設定ですね。
そんなわけで、オープンから7年後の2000年にはセガワールドごと取り壊されてしまいました。
ちなみに、グリーンランド周辺の開発はなかなかに鬼門でして、他にも「ウルトラマンランド」というウルトラマンをテーマにした屋内型施設や「九州わんわん王国」という犬をテーマにした屋内型施設も作られては潰れていきました。
1日では周り尽くせないほど大きな施設の横に小型の施設を作っても、そりゃ客は来ませんよね。
大型施設の横には大型施設を作るべき。それがうまく行っているのがナガシマスパーランドとその横のアウトレットだと思います。お父さんとお子さんが遊園地で遊んでいる間にお母さんはお買い物、というビジネスモデルを作った偉大な組み合わせです。
3. 次に読むのにおすすめの記事
アジアワールドがあった熊本県荒尾市のお隣、福岡県大牟田市にも、三井三池炭鉱跡地を利用した第3セクターの遊園地がありました。
わずか3年で閉鎖された幻の遊園地「ネイブルランド」については、以下の記事をご覧ください。
潰れた遊園地のマップシリーズを含む、遊園地関係の記事は以下のページにリストアップしています。
こちらを眺めていただいて、気になる遊園地がありましたら個別の記事も是非読んでいかれてください!
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