遊園地の魅力をわずかな余剰資金で向上させる方法を考える ー 遊園地はなぜ潰れるのか Part 9



こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。

遊園地の運営にかかるコストを試算し、どれだけの集客を得ることができれば安定的な運営ができるのかご紹介してきたこのシリーズ。

今回は、少ないコストで運営継続のための必要集客を得て、わずかながら余剰資金も生まれ始めた遊園地がどのような施策をとっていくべきなのか、私見もふまえてご紹介していきます。

 

 

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1. ライバルは遊園地ではない

まず勘違いしてはいけないのは、遊園地のライバルは遊園地ではない、ということです。

ディズニーやユニバーサルと競おうとするなら、もちろん顧客の奪い合いになります。

しかしながら、年間入場者数100万人規模の遊園地が目指すべきは200万人規模であって、1,000万人規模ではないのです。

 

パイの奪い合いを始めると、最後は資金力の勝負になります。関東圏で言えば、東武、西武、読売、京急、三菱地所といった資金力豊富な母体のある遊園地がひしめいています。

ここでパイの奪い合いをするよりも、パイの拡大を狙うのが懸命です。

 

商圏人口の7割に、年1回ペースで来園してもらえば年間来園者数200万人を達成できるのは、以前の記事で述べたとおり。

これなら他の遊園地と商圏が重なりませんので、パイの奪い合いにはなりません。

むしろ、他の近隣お出かけ先から顧客を獲得する、あるいはこれまで外に出なかったタイミングで遊園地を訪れてもらうことが重要になってきます。

 

 

2. 万人受けするお出かけスポットを目指せ

商圏人口の7割に年1回ペースで来場してもらうためには、ファミリー層や絶叫好きの若者層だけを狙っていてはいけません。

遊園地は全方位集客を目指していく必要があるのです。

とはいえ、一つ一つの施策自体はターゲットを絞らなければなりません。全方位で受けの良い施策なんて(おそらく)ないであろうことは想像に難くないでしょう。

というわけで、ターゲットを絞った施策をいくつかご紹介していきます。

 

ここで重要なのは、オンリーワンである必要はない、ということ。

あくまで商圏内で集客を図れば良いので、必ずしも全国区でオンリーワンを目指す必要はありません。目標はディズニーではなく、イオンモール(あるいはアウトレットモール)超えです

以前の記事でご紹介しましたとおり、1つのオンリーワン施策ではなく、多数の魅力を組み合わせることでお出かけ先候補の上位に食い込んでいくことが重要なのです。

 

2.1 外出への出費額が大きい層への訴求策

まず狙うべきは、頻繁に外出をして、外出に対して大きなお金をかける層です。

これにはいくつかのパターンがありますが、最も狙いやすいのは家族連れの奥様層なのではないでしょうか。

ここを狙うのであれば、子供連れに対応しつつ少しオシャレな、「月に一度のお出かけにふさわしい」カフェを設置すべきです。

例えば平日、未就学児を連れた親子は入園料を格安あるいは無料に設定するか、親子の平日入園のみの年パスを設定して、カフェを利用してもらう。

その帰りに1つ2つアトラクションに乗っていってもらえれば(子供のおねだりを期待して)、1組あたり単価2,000円~3,000円の新規顧客開拓に繋がります。

 

さらに週末の過ごし方として、お母さんにはカフェでゆっくりしてもらい、お父さんと子供が一緒に遊具で遊ぶ、というスタイルを広めていくことができれば、それまでガヤガヤしたイメージや「疲れるから」といった理由で敬遠していた家族連れにも訴求していくことができます。

 

「オシャレで先進的なイメージ」というのは家族連れにも非常に有効な手段です。

外出先の選択権を握っているのは、子供ではなく両親ですから。

そんなわけで、まずはおしゃれなカフェに始まり、ゆったり楽しめるウォークスルータイプの先進的なアトラクションなどを追加していくのが1つの策です。

 

ちなみに、ここで言っているおしゃれなカフェというのは、芝生等に面してガラス張りでローソファ中心の座席配置で、かつ座席配置にある程度の融通が効くようなタイプのものです(席数は200席規模、1日2回転で400人を捌くのが目標です)。

なにも富士急ハイランドの「リサとガスパールタウン」までやる必要はありませんし、あそこまでやると、今回の狙いからすれば客層を絞り込みすぎてしまいます。

ただし、混雑日のお昼時にはランチをすばやく大量に提供できるシステムを構築しておく必要はあります。

 

既存店舗の改装で済めば出費は数千万円規模

それに対してリターンは、

平日平均30組×200日×3,000円(夏休み含まず)

休日平均50組×100日×10,000円

長期休暇平日平均100組×65日×5,000円

年間1億円弱くらい。ちょっと数を盛り過ぎかもしれませんが、利益率を2割位に設定しても、悪くない投資なのではないでしょうか。

もちろん、カフェだけで採算を目論むと失敗します。普通のカフェと比べてお客さんが長居する可能性も高いので。必ず遊園地全体としての収入アップ策をセットにする必要があります。

資金に余裕が出てきたら、カフェの周辺を整備していく(たとえばひらかたパークのバラ園のように)のも1つの手です。

 

2.2 高齢者層の取り込み

続いて重要になってくるのが、少子高齢化に伴って大きな人口比率を占めるようになっている高齢者層です。

この層は2つに分けて考えることが重要だと思います。

 

1つは、パチンコやメダルゲームなどを好む層。

これらの層は、比較的安い金額で長く遊ぶことができて、適度に射幸心を煽られる過ごし方であれば受け入れられる可能性が高いです。

この層へと訴求する1つの手段は、以前の記事にも書きましたが、比較的単純な作業で楽しむことができる拡張現実型の育成ゲーム的なものを遊園地アトラクションと組み合わせるのが良いのではないかと思います。そこでリアルにゲームコインをもらえて、カーニバルゲームなどと組み合わせられるとなおよし。

現在のパチンコの市場規模とパチンコ愛好家の年齢分布を考えますと、かなりの人数を狙えそうではあるのですが、遊園地の治安という面では不安が残るところです。

 

もう1つは、老後の趣味を求める層。

こちらは幅広く取り込むのが難しいところです。

というのも、皆さんそれぞれに趣向があって、趣味を選択していくわけですから。

ですが、この層はたくさんお金を落としてくれる可能性が高い。なんとしても取り込みたい。

というわけで苦し紛れの案ではありますが、以前の記事でご紹介しました「遊園地を学びの場として活用する」という手法を応用して学び直しの定期コースを設定するというのが1つの手なのではないかと思います。

工夫された講習メニューを設定して、平日の昼間を利用して科学の深い理解へと誘ったり、あるいは学びをベースとした工作や料理の教室へとつなげていったり。

ただ、これにどれだけの市場規模があるのかはサッパリです。

 

2.3 リピーターの確保

他にも、年に1度は来てくれる方に、何度も来ていただくというのも重要な施策です。

年パスの大量発行は慢性的な混雑へとつながり、来場者の満足度が低下しかねない諸刃の剣ではありますが、安定的な収入と来場時の追加出費を狙える点で魅力的です。

 

リピーターを確保するためには、「あの遊園地に行くと楽しい」という印象を強く植え付けることが重要です。

そのためには、「場末感」をできるだけ引き下げていくことが重要。

 

どういうことかと言いますと、例えば草ボーボーのところがあったり、設備の塗装が剥がれていたりすると、得も言われぬ寂れた印象を受けてしまいますので、こうした印象をできるだけ減らしていくことが大切なのです。

できるだけ剪定や再塗装の頻度を上げる、剪定に手のかかる場所はウレタン系の舗装で埋めてしまう、掃除の頻度を上げる、といった方法で印象を大きく改善することができます。

 

さらに重要なのが音楽です。

某千葉県の日本一のテーマパークや、大阪の映画ベースのテーマパークでは、常時アトモスフィア・ミュージックと呼ばれる音楽が流れています。

知らず知らずのうちに耳に入ってくる音楽は、意外なほど精神状態を左右しますので、場内全体に流す音楽が楽しい気分を演出するために極めて重要なのです。

大型テーマパークほどの投資を要求するつもりはありませんが、園内全域に適切な音量と音質で音楽を流すことができるスピーカー群と、有線ではない(できればオリジナルの)楽しくワクワクするような音楽の作曲ができれば、来場者のメンタリティは大きく向上するはずです。

 

他にも、キューラインをしっかり作り込む(ただの階段や鉄柵ではなく、きれいな壁を設置)、乗り場のオペレーション室を隠す、建造物には必ず外壁を設置、などによっても来場者が感じる「寂れ感」は改善できるはずです。

実は、これらの投資はアトラクション投資に比べれば微々たるものなのですが、直接目に見える形で効果を得ることができないので、既存の遊園地では軽視されています。

あくまで楽しい雰囲気と魅力的なアトラクションありきですが、それらが揃った上で、目につくところを整えておくと、リピート率は確実に向上するのです。

 

 

3. 大型投資は振り切りが大事

こうして大型投資ができるだけの余剰資金が生まれたら、攻めの姿勢で積極投資をしていく必要があります。

その際に重要なのは、万人受けを狙わないこと。これは2.で述べたお話と矛盾するように見えるかもしれませんが、実はそうではありません。

 

例えば、地方の遊園地が中規模の普通のローラーコースターを導入したと聞いて、行きたくなるでしょうか。

あるいは近所の遊園地が新たにメリーゴーラウンドを導入したと聞いて、一度行ってみようという感覚になるでしょうか。

 

新規投資は遠方からお客さんを呼ぶチャンスですし、それまで来園する予定のなかったお客さんを呼ぶチャンスなのです

汎用機を導入しても仕方ありません。

東武動物公園の「カワセミ」はコースターマニア歓喜の玄人受けコースターですが、目立った特徴がないので集客力には欠けます。

一方で富士急ハイランドの「ド・ドドンパ」はコースターマニア的にはうーん…なコースターですが、強烈なインパクトがありますから、うまく宣伝すれば集客につながります。

 

カワセミはファミリー層からスリルシーカーまであらゆる層を狙ったのだと思われますが、そのせいで中途半端になってしまっているのです。

(おそらく東武動物公園は沿線客の満足度向上を狙って導入したもので、商圏を広げる目的はなかったと思われますので、決して東武動物公園の戦略が間違っていたと批判しているわけではありません。)

20億の汎用機を買うくらいなら、30億のオリジナル大型コースターを設置して、若者層に的を絞るべきです。

 

そういった意味では、よみうりランドの「グッジョバ!」は非常に巧い投資です。

スプラッシュUFOとスピンコースターは、規模の割にかなりスリリングなライドですし、体を使うアトラクション、小型アトラクション、ものを作るタイプのアトラクションなどバランスが良い。

それぞれしっかりターゲットを絞って振り切った上で、組み合わせで様々な層へと訴求することに成功しています

投資額100億に対して完成度は凄まじく高いと思います。

ただし、それぞれのターゲット層に対して十分にリーチできていないというのは課題。ファミリー層へは十分に訴求できていると思いますが、大人でも楽しめる内容にもかかわらず、ファミリー層以外へのリーチが弱い。

大型投資後は、出来上がったものをいかに宣伝していくかというのも1つの難しい問題と言えそうです。

 

大型投資をする余力がある場合には

  • ダントツのオリジナリティ
  • 圧倒的な完成度
  • 驚きと感動がある

アトラクションを設置し、新たな大型投資へとつながる集客に結びつけ、これを繰り返すことで複数の魅力を組み合わせた圧倒的な存在へと進化していくことが重要なのです。

「遊園地らしいアトラクション」にこだわる必要はありません。魅力向上につながるならショップでもなんでも構わないのです。

 

 

4. 敷地に難があるなら、それぞれのアトラクションの魅力を高めるべし

日本の遊園地は、敷地面積に問題を抱えていることが多いです。

そのために、大型アトラクションを自由に配置することは難しい状況。

この状況下で来場者数を増やすためには、個々のアトラクションの魅力を向上させていくことが重要です。

 

魅力を高めるために最も簡単なのは、既存のアトラクションをより高度なアトラクションで置き換えてしまうことです。

例えば、単なるレール走行タイプのライドアトラクション(「クラッシックカー」などの車タイプから「サイクルモノレール」タイプまで)をダークライド形式に置き換えてしまう、といったような形。

ここで中途半端なアップデートをすると、むしろ「場末の遊園地」感が出てきてしまって逆効果です。やるならとことん、完成度を上げていくことが大切。そこに予算を掛ける必要はありません。時間をかけてでも細部まで詰めることが重要です。

 

あるいは、上述の通りアトラクションのキューラインや乗り場の改造でも良いと思います。

何らかの方法で、「楽しい」という思いを植え付けることが重要なのです。

 

各アトラクションの魅力が高まってくると、なんでもないアトラクションもそれまで以上の魅力を発揮するようになってきます

東京ディズニーランドにあるアトラクション「ダンボ」を見ると、このあたりが明らかになってきます。

あのアトラクションは、内容自体はただライドを上下動させながらくるくる回転するだけの、システム的にはどこの遊園地にもあるようなものです。

にもかかわらず、連日数10分待ちの人気を博しています。

この人気は、ディズニーのキャラクターの力によるものではありません。と言いますのも、今の子どもたちのうち、「ダンボ」なんて古い上に日本ではそれほど人気のない映画を見たことのある子どもの数なんてたかが知れていますし、そもそも「ダンボ」をみて「ダンボ」に乗りたい、とは思わないでしょう。

ではなぜ、あんなシンプルなアトラクションが混雑するのか。

話は単純です。外にあって、楽しそうに見えるから。そしてそもそもパークの入場者数が多いから。

 

ここで重要なのは、なんでもないアトラクションに乗って「楽しい」と思ってもらえるかどうか。

そのためには、逆説的ですが「つまらない」と思われる要素を徹底的に排除することが重要です。

人間は負の部分を見つけ出すことが得意です。そしてそうした部分を見つけると、一気に気分が落ちてしまいます。

夢見心地の良い気分を作り出してあげて、あとはそーっとそーっと、何らかの落ち度で気分を落とさないようにしてあげることが重要なのです。

気分を盛り上げるためには、必ずしもライドの良さでなくても、音楽であったり施設の雰囲気であったりでも良いのです。空間で気分を盛り上げたら、あとはライド自体は気分を落とさないように楽しんでもらえれば良い。そうすれば、また来たいと思ってもらうことができます。

 

 

5. 持続的な発展をしつつ、コースターを作って欲しい

長くなりすぎましたので、最後の方は具体的な言及を避けて抽象的な話に終止してしまいましたが、言いたいことはシンプル。

ターゲットを絞ってその層に訴求する。

ターゲティングの際は、従来の顧客以外でボリュームのある層を選ぶ。

それを複合的に組み合わせて、様々な魅力を併せ持つことで唯一の存在になる。

ネガティブ要素は地道に消していく。

お金ができたら、オンリーワンの施設を導入していく。

 

そうして資金力を増強したら、大型コースターをガンガン導入して欲しい

最後はコースターマニアからの願望になってしまいましたが、過去の遺物となりつつある遊園地に今一度活気を取り戻していただきたいところです。

 

 

6. 次に読むのにオススメの記事

「遊園地はなぜ潰れるのか」シリーズを含む、遊園地関係の評論・オピニオン記事は以下のページにまとめています。

 

遊園地やコースターの紹介記事は以下のページにまとめています。