国内唯一現存! 【シャトルループ】inナガシマスパーランド

2018年7月23日



こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。

この記事では、三重県桑名市にある遊園地「ナガシマスパーランド」の急加速型ローラーコースター「シャトルループ」のレポート兼レビューをお届けしていきます。

かつては国内4機が導入されたコースターですが、閉園やら運営コストやらで閉鎖が相次ぎ、現在ではナガシマスパーランドにしか残っていない機種。

急加速タイプの歴史も含めてご紹介していきますよ!

 

シャトルループの評価

 

爽快感:      ★★★★☆

振動の少なさ:   ★★★☆☆

スリル:      ★★★☆☆

コースレイアウト: ★★☆☆☆

楽しさ:      ★★★☆☆

総合得点:     60点

 

 

1. 急加速型コースターの歴史とシャトルループの概要

シャトルループには2つの特徴があります。

  • 急加速タイプであること
  • 通過したコースを逆走して戻ってくる往復型であること

このうち、往復型(シャトル型)の歴史については、「ウルトラツイスター」の記事でご紹介していますので、そちらをご参照ください。

ここでは、急加速タイプの歴史をご紹介していきます。

 

1.1 急加速タイプの黎明期とナガシマ版シャトルループの凄さ

シャトルループを開発したのは、コースターの神様アントン・シュワルツコフ氏率いるシュワルツコフ社。

シュワルツコフ氏が作った一般的なローラーコースタータイプについては「ルーピングスター」の記事をご参照ください。

この方はコースターを巻き上げる方法について長年試行錯誤されていて、そんな中で様々な急加速エレメントも開発しています。

 

世界で初めて作られた急加速タイプのコースターは、おそらくシュワルツコフ社のシャトルループタイプ。

急加速で発進して、ループを越えて坂を登り坂の途中で停止、坂を後ろ向きに下って後ろ向きにループを通過、プラットホームを通過して後ろ向きに坂を登り坂の途中で停止、坂を前向きに下ってプラットホームに戻ってくるというもの。

1977年に最初のモデルが誕生しています。この時の急加速は、なんとおもりを落下させる方式

コースの端に40トンものおもりを落下させるためのタワーが付いていて、その中のおもりとライドがワイヤーで連結され、おもりを落下させることでコースターを加速させていたのです。なんて原始的な方法!

この方法にはいくつか問題点があります。

  • おもりのタワーを設置する必要があるため、設備が大掛かりになる
  • 原理的に重力加速度を超える加速ができない(厳密にはギアを噛ませることで可能にはなるのですが、そうなると半端ではない重りの重量が必要になり、現実的ではない)
  • 特に走り出しの加速が鈍い

というわけで、あまり数は作られませんでした。現在は新興国への移設が進み、現在も乗ることができるのは南アフリカとブラジルの2機のみ。難易度高い……。

 

時を同じくして1977年、アメリカのArrow Development社も急加速タイプのコースターを開発します。

Arrow社は、日本では「コークスクリュー」などでお馴染みですね。

こちらもシャトルループタイプではあるのですが、急加速→ドロップ→ループ→坂を登る→停止→後ろ向き急加速→後ろ向きドロップ→後ろ向きループ→後ろ向きに坂を登る→停止というレイアウト。2回急加速があったんです。

日本でも、後楽園ゆうえんちに「ブーメラン」という名前で1980年に導入されました(ただし1984年に閉鎖されていますので、乗車経験のある方は多くないのでは)。

こちらは強力なモーターでワイヤーを引っ張るタイプ

やはりモーターもトルクに限界がありますので、おもりを使った急加速と比べても加速度で劣っていたことは想像に難くありません。

ただし、急加速後にドロップのある構成は、荒々しい浮遊感が得られて意外とスリリングだったのではないかと思います。

Arrow社のこのタイプは未だにアメリカやイギリスで乗ることもできますし、時代もメーカーも違いますがディズニーランド・パリのスペース・マウンテンもこのタイプの急加速をします。

 

こうした課題を解決するために、シュワルツコフ社が1978年にシャトルループの改良版を製作します。

巨大なフライホイール(重い円盤をイメージしてください)を高速回転させておいて、そこにワイヤーをいきなり引っ掛けることでコースターを加速させるタイプ

実際にはワイヤーとフライホイールの間にはクラッチがありますので、いきなり引っ掛けるわけではないのですが、イメージはそんな感じです。

これで重力加速度の壁を破ることが可能になったわけです。

当時としては圧倒的な加速度の急加速で一躍人気コースターとなります。

日本に導入された4機はこのバージョン。

横浜ドリームランドを皮切りに、としまえんナガシマスパーランド小山ゆうえんちに導入されました。

ちなみにフライホイールのサイズにいくつかタイプがあったようで、横浜ドリームランド版は他より最高速度が5 km/hほど速いです。

としまえん版はフライホイールや加速エレメントに水がかからないよう、その部分だけ屋根がついていたこと、建物の2階に設置されていたことなどの特徴がありました。

というわけで、ナガシマスパーランド版は一番オーソドックスなタイプ。と言いつつ横浜ドリームランドと小山ゆうえんちは閉園、としまえんはコースターを売却してしまいましたので、現存するのはナガシマのみということになります。

シャトルループを観覧車から。写真の真ん中から少し上に見える黄色いレールがシャトルループです。

 

1.2 シャトルループ以降の急加速タイプの進展

実はフライホイールによる急加速は、最近新設されたコースターにも使われているほどのスグレモノ。

なのですが、やはり加速度の面では最新の急加速手法には劣ります。というわけで、シャトルループ以降にどのような急加速手法が開発されたのか、見ていきましょう。

 

シュワルツコフ社は1982年にも新たな急加速方法を開発します。

それがレールに設置されたタイヤを高速回転させて、ライドに付いたプレートを押し出して加速させる方法

これまた原始的な方法ではありますが、タイヤを沢山使用することで、1個あたりのタイヤはそれほどパワーを使わずに済みます。

圧倒的な加速度を得るには向かないのですが、

  • 大型タワーや大型フライホイールなどの大掛かりな設備が必要ない
  • フライホイールなどにエネルギーを蓄える時間が不要になるため、次から次へと発車させて回転率を上げられる

後者のメリットは、例えばユニバーサル・スタジオ系のテーマパークに1999年に導入された「インクレディブル・ハルク」というコースターで活かされています。東京ジョイポリスの「撃音ライブコースター」がこのシステムを採用しているのも同じ理由でしょう。

現在でも大きな加速度を得る必要がない急加速型コースターではよく使われている手法です。

 

急加速タイプに大きな転機が訪れたのは、リニアモーター技術が進展した1990年代なかば。

1996年にはリニア誘導モーター、1997年にはリニア同期モーターを採用したコースターが次々にオープン

滑らかかつ高加速度の急発進、170 km/h近い速度まで加速できる高速対応性などが魅力となり、また、エネルギー効率が高くメンテナンスコストも安いといういい事尽くしの手法です。

このため、現在に至るまで急加速タイプの主力となっています。

国内では導入数が多くないのですが、富士急ハイランドの「高飛車」の急加速はリニア同期モータータイプです。

 

しかしながら、これではまだ加速度に納得できないジャンキーもいます。

そんなジャンキーを納得させるためには、もはや空母のカタパルトで使われているような強烈なシステムを持ってくるしかありません。

そこでアメリカS&S社が2001年頃に開発したのが、圧縮空気を使ったカタパルトシステム

富士急ハイランドの「ド・ドドンパ」に採用されていることでお馴染みですね。

これは本当にアホみたいな加速度を実現できます。世界最高の加速度を誇るド・ドドンパは、180 km/hまでの加速が1.56秒。加速度だけを見たらダントツ世界一です。

しかしながら、圧縮空気を使う以上、毎回空気の充填が必要で回転率が悪く、また高圧の空気を噴出する仕組みですのでメンテナンスに大変なコストがかかります。

このことから普及は進みませんでした。現在はなぜか中国で人気が出ていて、2018年現在世界に10機程度が存在しています。

 

メンテナンス性の良さと加速度の両立を図ったのが、2002年に登場したインタミン社製の油圧加速タイプ

油圧(厳密にはどちらかというと空気圧を利用しています。油を使って空気を圧縮し、空気の圧力で油を押し出すシステム)を利用してモーターを回し、ワイヤーを引っ張るタイプです。

さすがに圧縮空気で打ち出すほどの加速度は得られませんが、現在世界最速のFormula Rossoは240 km/hまで約4秒で加速。そこそこの加速度と最高速度、さらにメンテナンス性を両立したすごいシステムなんです。

日本ではスペースワールドに設置されていた「ザターン」がこのシステムを採用していました。

 

しかしながら、加速と最高速だけを売りにしたコースターは飽きられはじめた感もあり、2010年頃以降はあまり作られなくなってしまっています。

現在の主流は、やはり加速エレメントをコースターの1つのアクセントとして利用した、高飛車的なタイプ。これは別に加速度を売りにしているわけでもありませんから、メンテナンス性の良いリニアモーターで十分なんです。

というわけで、2010年代以降はリニアモータータイプが圧倒的なシェアを掴みつつ、それほどの加速度が必要ない機種はタイヤタイプがおさえる、という流れになっています

 

 

2. シャトルループの乗車レポート

シャトルループの全景。急加速、ループ、2回のドロップがある往復型のコースターです。

シャトルループはメインゲート入ってすぐ左手の目立つ場所に設置されています。

シンプルな駅舎の中には、横2人×2列×7両編成のライドが止まっています。

乗る場所は、後方落下で一番高いところに到達する先頭か、前方落下で一番高いところに到達する最後尾がオススメ。どちらかというと前方落下のほうが眺めが良いので、最後尾のほうがおすすめです。

 

ライドに乗り込んだら、ループ型にしてはおとなしめのお腹に当てるだけの安全バーをおろしましょう。

やたらと長い、10秒前からのカウントダウンが0になったら急発進!

約92 km/hまで、約4秒で加速していきます。油圧型や圧縮空気型と比べると物足りない加速ですが、これが40年近く前に開発されたということを考えるとものすごい加速感。

「何が起きたのかわからない」ほどにぶっ飛んでいく圧縮空気型と比べれば、まだ「急加速感を楽しむことができる」レベルですので、日常ではありえない加速度をじっくりと味わいましょう!

 

そのまま垂直ループを前向きに越えて、坂を登りつつ途中で一瞬停止。

つかの間の静寂の後、後ろ向きに坂を落下していきます。ループを後ろ向きに越え、プラットホームを越えて後ろ向きに坂を登ります。このとき、先頭に乗っているとほとんど高さがないことにビックリ。逆に最後尾ならそこそこの眺めを楽しむことができます。

再び一瞬停止したあと、前方に落下してプラットホームに戻り、終了。

 

短いコースながらも年代を考えるとかなり滑らかな乗り心地が心地よく、また適度な加速感や、下を向いた状態での停止から落下に至るまでのふわりと浮き上がるような感覚などが楽しい、よくできたコースターです。

日本には一機しか残っていない貴重なコースターですし、比較的メンテナンス頻度も高く、いつ無くなってもおかしくない状態。

海外ではメンテナンスコスト圧縮のため、フライホイールによる加速をリニアモーターに置き換えてしまった例もありますので、オリジナルの状態で現存する今のうちに、乗れるだけ乗っておきたいところです

 

 

3. 次に読むのにオススメの記事

シャトルループは風には比較的強いのですが、雨が降るとすぐに止まってしまう上、クラッチが乾かないと運転できないので雨が上がっても長時間のメンテナンスが入ります

各アトラクションについて、こうした悪天候に強いかどうかの情報を以下のページにまとめてご紹介しています。特に遠方からお出かけの方、特定の日程でしかナガシマに行けない方は、是非参考にしてみてください。

 

ナガシマスパーランドにあるアトラクションのご紹介は、以下の記事で行っています。

大型コースターについては別記事へのリンクもありますので、ぜひご参照ください。

 

その他、国内外の遊園地に関する記事、ローラーコースターに関する記事は以下のページにまとめています。

こちらからご希望の遊園地やコースターをお選びいただき、個別記事をご覧ください。