遊園地を運営するのに、一体いくらかかるの? ー 遊園地はなぜ潰れるのか Part2

2018年9月4日



こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。

この記事は、なぜ日本の遊園地は次々に潰れていくのか、というお話を経済面、人々からのイメージ、遊園地マニアとしての意見などを交えつつご紹介していくシリーズの第2回。

前回の遊園地建設にかかる費用に続いて、今回は遊園地を運営するのにかかるコストをご紹介していきます。

遊園地を運営するためには、人件費、アトラクションのメンテナンス費、ショーがある場合にはその運営費、イベント開催費用など、様々なコストがかかってきます。それぞれ、一体いくらかかるのでしょうか。

 

 

1. 遊園地を運営するために必要な人件費

グリーンランド「観覧車」

規模としては、大型コースター1機、中小型コースター1機を備えるような大型遊園地を考えてみます。

具体例をあげると、「よみうりランド」「東武動物公園(遊園地部分のみ)」「としまえん」「ひらかたパーク」くらいの規模でしょうか。(ちなみに、この中でよみうりランドのみ入場者数200万人級、ほかは100万人級です。)

 

 

  • 総アトラクション数: 30機

内訳

  • 大型コースター: 1機
  • 中型コースター: 1機
  • 観覧車: 1機
  • 大型絶叫マシン: 4機

 

といった規模の遊園地運営に必要な人件費を考えてみましょう。

 

1.1 アトラクション運営にかかる人件費

アトラクションには営業時間中、常にスタッフが付いている必要があります。

小型のアトラクションであれば1人でオペレーションが可能ですが、中・大型アトラクションになると2人以上が必要になる場合もあります。

例えば、

  • 大型コースター: 3~6名(行列整理・チケット管理・制御盤操作・乗客誘導等)
  • 中型コースター: 2名
  • 観覧車: 2~3名
  • 大型絶叫系アトラクション: 2名

といった具合。

 

今回考えている遊園地の規模からすると、営業時間中最低40名は必要となります。

営業時間は通常期8時間、夏季10時間程度を想定すると、アルバイトを1人×360日雇用するのにかかるコストは400万円前後を見ておくべきでしょう。

すると、400万円×40名で1億6,000万円。

すべてアルバイトで運営したとしても、年間1.5~2億円ほどかかる計算になります。

 

1.2 ショップ・レストラン・チケットブース運営の人件費

この規模の遊園地になると、

  • 大型食堂: 4軒
  • スナック売店: 6軒
  • 土産物売店: 2軒

程度は必要になってきます。

ただし、これらのお店には繁忙時間帯があります。

例えば食事ならお昼時、スナックはお昼すぎ、土産物は夕方、といった具合。

チケットブースは午前中が最も忙しいわけですから、時間帯によって人材を移動させる、あるいはその時間帯だけアルバイト・パートを雇用することで、コストの削減が可能です。

 

土日は

  • チケットブース: 4名(午前中以外は1名)
  • 大型食堂: 10名(11時~14時以外は2名)
  • スナック売店: 2名(11時~15時以外は1名)
  • 売店: 2~5名(15時~以外は1名)

といった人員配置を想定してみましょう。

平日は一部店舗の閉鎖、人員の削減等も可能だと思われます。

上手な人員移動をすれば、土日に常時必要なのは20名、お昼時のみ55名ほどが必要となります。

土日のお昼時4時間だけ50名のアルバイト、それ以外の時間帯と平日は20名の雇用、不足分は社員応援でまかなうこととすれば、年間7,000万~1億円程度のコストがかかるはず。

 

1.3 清掃にかかる人件費

こちらは、トイレや設備等の清掃は、遊園地によっては外注しているところもあるかもしれません。

外注の場合は、消耗品費等も込で1人1時間2,000円~といったところでしょうか。

営業時間前後の清掃は、閑散期であっても必要になります。アトラクション以外の路上、園外、トイレ等々の清掃をすると、毎日10人×3時間程度になりそう。

営業時間前後は人が集まりにくい時間ですので、割増料金等も考慮すると3000円×10人×3時間×360日で年間3000万円程度

 

 

某舞浜のテーマパークでもなければ、営業時間中にしょっちゅう掃除の方を見かけることはありません。

繁忙期であっても、営業時間中は掃除専属の方は5人もいれば十分多いほうかと。平日は各施設の担当者が清掃担当も兼ねている事が多いです。

というわけで、こちらはアルバイトを雇用して年間500万円以下

 

1.4 駐車場整理にかかる人件費

遊園地に駐車場を併設している場合には、その人件費もかかります。

平日で3名、休日5名。営業時間前後1時間も含めて必要になってきます。

すべてパートやアルバイトでまかなうと、年間4,0000万円以上

 

1.5 企画運営・メンテナンス・広報等の人件費

人件費の最後は裏方さんのお仕事。

企画運営、広報等はもちろん、日常のメンテナンスも社員をかかえているところが多いです。突発的なシステムエラーなどには自社で対応しないといけませんからね。

社員の数は、それぞれの遊園地の運営方針によってまちまちですし、遊園地以外も経営しているところが多いので、なかなか遊園地単体での社員数というのは把握しづらい部分があります。

 

ここで考えている規模の遊園地ですと、おそらく最低限運営に必要なのは50人。これは本当にギリギリ運営できる数です。

場合によっては(特にアルバイトの採用事情が厳しい地方では)200人といった規模で雇用しているところもあります。その場合はアルバイトの雇用数が少ないとは思われますが、50人は本当にスレスレです。ちなみに、としまえんで134名、那須ハイランドパークで90名といった規模。

ここでは上記のように、アルバイトだけである程度運営ができる状態を考えていますから、社員としては最低限の50人を雇用することにします。

 

年収もまた、なかなか読みづらい部分もあるのですが、例えば東証一部上場企業であるよみうりランドを参考にすると、平均は約700万円。

よみうりランドの場合は他にも多数の施設を運営していますし、読売グループからの天下りもあると思われますので、遊園地企業の年収としてはかなり高めの部類だと思われます。

ですが、ここは多めに見積もることにします。雇用に必要な経費は年収の約2倍、一人あたり1,400万円。

 

そうすると、社員雇用の年間経費は約7億円ということになります。

100人雇用すると、14億円。

 

1.6 人件費の総額

ここまでにあげた人件費をすべて足してみると、遊園地の運営に必要な人件費は年間10億円以上ということになります。

採用に必要な経費まで含めると、いろいろなところをカツカツに切り詰めて12億円で収まれば御の字、といったところでしょうか。

 

 

2. その他の費用

ざっくりとした分類ですが、メンテナンス費用や消耗品費、物販品や食料品の仕入れ代金等を考えていきましょう!

 

2.1 アトラクションのメンテナンス費用

各アトラクションのメンテナンスにかかる費用は、さすがに開示している企業がありません。

残念ながら推測することしかできませんので、大規模ビルの検査費用などを参考に推測していきましょう。

 

例えば10階建てで延べ床面積が10000 m2くらいですと、定期検査費用は10万円~30万円ほど。

このビル内にエレベーターがあると、その検査費用が30万円~60万円ほど。

遊園地のアトラクションには動力がありますから、どちらかというとエレベーターのほうが参考になるかもしれません。

 

メリーゴーラウンドやコーヒーカップなど、回転系アトラクションの場合はモーター(エンジン)+機械部品で構成されます。

これらの駆動系の検査や消耗品交換、ライド部の点検なども含めると、年に1回の大規模点検で100万円~といった金額になるのではないでしょうか。

絶叫系ライドの場合には動きが激しい分、点検箇所も多く、より高額になると予想されます。

 

これがコースターになってくると、話はさらに複雑になります。

コースターは巻き上げ部についてはエレベーターに似た構成。古いタイプであれば、モーター+チェーン+歯車などの機械部品です。

その他、レールの点検(反響音や視覚による点検)やライド部の点検(車輪、車軸、逆走防止装置など)、ブレーキの点検なども行う必要が出てきますので、複数名の検査員で1日がかりの仕事になります。

特にライドについては、一度レールからおろして分解し、再溶接や部品交換なども行われます。自動車のオーバーホールにも似た作業。

さすがにそこまでの作業を毎年行うわけではないと思いますが、それでも相当な額になることが予想されます。

一般的に、こういった設備の点検費用は販売価格の1/100程度になることが多いので、毎年の定期点検で1,000万円~3,000万円といったオーダーになるのではないでしょうか。

一方、レールの架替等を行うと、中・大規模コースターなら間違いなく億単位

アトラクションを長く運営していくためには、こうしたリニューアルも定期的に行わなければなりません。そういった事も考えると、1年にコースター1機あたり5,000万円ほど用意したいところ。

 

観覧車は少しお話が違ってきます。

と言いますのも、通常駆動力となるのはモーター1機のみ。乗車プラットホーム付近にあるホイールで観覧車を回転させています。

というわけで、機械系はシンプル。その一方で、骨組みなどが高所に至るため、高所作業が必要になります。

高所で鉄骨の点検等を行うのは、なかなかのスキル。

50 m級の中型観覧車であっても、数100万円~1,000万円ほどかかってしまうのではないでしょうか。

ゴンドラを降ろして点検整備等行う場合には、さらなる費用がかかると予想されます。

 

ということで、ここで考えていますアトラクション30機クラスの遊園地では、自社社員による定期的なメンテナンス以外に、メーカー等による整備点検費用が年間数億円かかると予想されます。

 

2.2 飲食料品・物販品仕入れ費

遊園地にはレストランや軽食販売店、土産物店などがつきもの。

こうした施設は客単価アップのために重要でもあります。

ただ、ここで計算をしてしまうと、後々収支を計算するときに面倒になってきてしまいますので、ここらへんのお話は次の記事で考えていくことにしたいと思います。

 

2.3 光熱水費・消耗品費・雑費

まずは光熱水費。

アトラクションを運営するには、なんといっても電気(もしくは燃料)が必要になってきます。

なかなか想像しにくいケタですが、コースターで150 kW, 50 m級観覧車で50 kW, その他回転系ライドで10 kW~30 kW, 絶叫系回転ライドで100 kWくらいです。

500 Wが0.5 kWですから、コースターは500 W電子レンジの300倍もの電力を必要とします(厳密には、500 Wの電子レンジは電力を600 Wほど消費しますが…)。

遊園地全体では、1000 kWほどの電力消費になるでしょうか。ただし、営業時間ずっと動き続けているわけではありません。大体半分ほど動いていると考えて、1日4000 kW時。

年間で1,440,000 kW時となります。

電気料金は時期や契約規模によって変動するのですが、1 kW時あたり20円ほどで計算しますと、年間3,000万円ほど

その他の電飾、電灯、水道、冷暖房費用等々も含めて、年間5,000万円ほどといったところでしょうか。

 

続いて消耗品費。

アトラクションの定期メンテナンスで交換する部品や清掃に必要な消耗品、はては消火器まで、様々な消耗品が必要となります。

これは正直なところ、よくわかりません。塵も積もれば山となるということで、年間1,000万円ほど計上しておきましょう。

 

その他にも警備費用やらごみ処理費用やら、様々な出費が発生します。

こちらも予想しづらいところではあるのですが、ちょっと多めに年間5,000万円ほど見積もっておきます。

 

 

3. 遊園地運営にかかる費用の総額

ここまで考えてきた費用を足し合わせると、1年間遊園地を運営するのに必要な金額がだいたい見えてきます。

ここでは、以下の金額を使うことにしましょう。

  • 人件費: 14億円
  • メンテナンス費: 5億円
  • その他経費: 2億円

総額は21億円です。

ちなみに、政府が発行する特定産業動向調査でも人件費とメンテナンス費の比率は約2:1となっていますから、それほど悪い値ではなさそうです(今回は人件費を少し多めに見積もっています)。

 

年間の運営に必要な金額がわかったことで、遊園地の運営によってどのくらいの利益が出るのか、そしてなぜ遊園地は次々に潰れていってしまうのか、といったことが見えてきます。

そのあたりのお話は、次の記事で詳しくご紹介していくことにしましょう。

 

 

4. 次に読むのにオススメの記事

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