【旅行のお供に】3巻以内で完結するオススメマンガランキング・ベスト50選

2019年5月26日

3巻以内マンガランキングアイキャッチ

こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。

かつて3,000冊以上のマンガを所蔵し、その殆どを自炊してしまった僕が、旅行のお供に持っていくのにも適している3巻以内で完結するオススメのマンガをランキング形式でご紹介していきます!

その後もマンガを買い続け、かれこれ3,500冊には到達しそうな勢いなのですが、そんな僕が好きなのは、3巻以内で完結する短編や中編

短いとそれだけしっかり伏線を回収してくれますし、ストーリーの盛り上がりも大きい。その作家さんの全てをぶつけて描かれているような気がして、短いものが好きなんです。旅先でちょっと空いた時間に読むのにも適していますしね。

 

そんなわけで、完全に僕の主観ですが、好きなマンガのランキングトップ50をご紹介していきますよ!

ルールは以下のとおりです。

 

  • 3巻以内で完結している
  • 続編があっても、その作品だけでしっかり完結していればOK
  • ランクインするのは、各作家さん1作品のみ
  • 出来る限り2005年以降に初版が発売されたもの。ただし、今読んでも古さを感じさせず十分に面白ければその限りではない。

 

いろんなマンガを読み漁ってきましたので、ややマニアックな方向に偏っているような気もしますが、だからこそ皆さんに「これ読んだことなかった」というおすすめマンガを紹介できると思っています。ぜひ、このランキングをご参考にお気に入りの1冊を見つけてみてください!

それでは、50位から行ってみましょう!

 

 

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1. 第50位~第25位

それでは、50位からランキングを発表していきますよ。

いずれも僕は大好きな作品なのですが、絵柄やお話の内容によって、かなり好き嫌いが分かれそうなものも含んでいます。

お好みに合いそうなものをピックアップしてみてください!

 

第50位 魔法遣いに大切なこと よしづきくみち

原作にあたるのは、山田典枝によるプロット(未発売)。それをもとに展開された、一大メディアミックスプロジェクトが「魔法遣いに大切なこと」です。

最初(2003年)に発表されたのが、このよしづきくみちによるコミックス。その後、アニメ化されノベライズもされます。

魔法遣いがいる世界。ただし、舞台は現代の下北沢。

魔法遣いは魔法局という国の機関に管理されていて、自由に町中で魔法を使ったりはできません。

そんな中、魔法遣いとしての登録を目指し、魔法学校に通う少女の物語。

と書くと不思議な雰囲気が漂っていそうですが、実際には専門学校に通う女の子と周囲の人々の交流の物語という側面が強いです。

法律事務所や探偵事務所のように個人運営の、魔法遣いの事務所にインターンで出かけて、そこで出会う様々な困難を自分のできる範囲でいかに解決するか。

魔法をアクセントのように使いながら、明るく清々しい雰囲気で描かれていきます

よしづきくみち氏はかつて「ああっ女神さまっ」の藤島康介氏のもとでもアシスタントをされた方。美しい絵にも定評があります。

2005年には、同じ設定ながらも登場人物を一新したよしづきくみちによるコミックス「魔法遣いに大切なこと 太陽と風の坂道」が発表されます。こちらは原作者がノベライズ

2008年に、またもや登場人物を一新した「魔法遣いに大切なこと~夏のソラ~」がアニメとして発表されます。こちらは実写を加工した背景を使った独特の雰囲気が話題になりました。夏のソラもよしづきくみち氏によってコミカライズされています。さらには実写映画化も!

 

第49位 かみちゅ! 鳴子ハナハル

広島県尾道市を舞台にした、神様になってしまった女子中学生(「神様で中学生」略して「かみちゅ」)の日常を描いた作品。アニメが原作で、そのコミカライズです。

 尾道にある神社の娘が突然神様になってしまう。そんな突拍子もない設定なのですが、お話はゆったりまったり、女子中学生の日常を描きつつ、ときどきドタバタコメディ。そんな感じで進むゆる~い作品です。

街に貧乏神がやってきてしまったり、神無月には出雲に出かけなければならなかったり。神様には神様の大変さがあるし、中学生には中学生の大変さがある。それがミックスされるともう、日常は大パニックになってしまいます!

作者の出身がアレな絵ということもあって、可愛らしい絵柄でテンポよく、原作以上にストーリーの魅力を引き出しながら進む傑作コミカライズ

鳴子ハナハル氏は、(ギリギリ)一般紙での短編の発表も多い方なのですが、商業単行本は実質「かみちゅ」のみ。

「かみちゅ」は尾道旅行のおともにはぜひとも読んでみて頂きたい作品です。尾道が舞台の作品といえば、他にも初代実写映画版「時をかける少女」などもありますが、個人的に推したいのはアニメ「たまゆら」のTVシリーズ2期。ゆったりした雰囲気で、近くにある広島の小京都こと竹原にも出かけてみたくなりますよ!

 

第48位 エンブリヲ 小川幸振

虫+グロ+ホラーなので要注意です。

ただし、ひたすらにおどろおどろしいお話を描いているわけではなく、主人公は虫をこよなく愛している女の子。作品自体は虫への愛と丁寧な観察で満ちていますが、虫がリアルかつ丁寧に描かれているからこそグロくなってしまいます。

ある日、森で花を愛でていた少女が正体不明の虫に刺されてしまいます。それ以降、少女が何者かに襲われそうになると、襲おうとした人が虫に食い殺されたりするように。一方で、最初に少女を刺した虫を解剖してみると、地球上には存在しない虫で、しかも通常の進化系統に合わない存在であることがわかってきます。

そんなこんなでパニックホラーでありつつも、たとえお腹の中にあるものがヒトでなかったとしても生まれる母性が全体のテーマになっていてて、おどろおどろしいストーリーを優しく包み込むような雰囲気があります。さらには争いよりも対話の重要性といったテーマも描かれていて、最後は愛で溢れたお話に。

怖くてグロいですが、それだけではなくて暖かく優しい気持ちにもさせてくれる、一風変わった傑作ホラーです。

作風が現代には受けないのか、他の作品は非常に少ないです。「桜神父の事件ノート (1) 栄光館殺人事件」のシリーズだけは中古なら入手可能。

 

第47位 家族生活 やまだないと

男性2人に育てられている女の子。2人をともに「パパ」と呼ぶ、そんなちょっといびつな家族関係を淡々と描いた作品です。

3人は国内外を問わず、様々な街を転々としながらホテル暮らし。行く先々で、女の子はいろんな人々と出会います。

出生の秘密や現在の家庭環境が出来上がった秘密を知ることになったり、恋をしたり。大人2人はそれを見守りつつも、かなりいびつな形で保護者としての責務を果たしていく。

そんな変わった家族関係を描きながらも、最後には見事に家族とは何なのかという問いに答えています。

単行本の最後には、4人の著名な映画監督による、それぞれオリジナルのラストシーンの寄稿があって、こちらもまた面白い。

あっさりとした描き口ながらも、深いところを静かに流れる水脈を描いたような、そんな作品です。

やまだないと氏は単巻で完結する作品を多く発表されているのですが、なかでも「コーデュロイ」や「ビューティフル・ワールド」あたりが個人的には好みです。時代の変遷とともに、少しずつ作風も移り変わってきた方ですので、ぜひともお好みの時代を見つけてみてください。

 

第46位 岡本倫短編集Flip-Flap 岡本倫

グロ漫画といえば必ず名前のあがる作品でアニメ化もされた「エルフェンリート」、トンデモ展開で話題となったスキージャンプ漫画の「ノノノノ」、そしてやはりアニメ化もされた「極黒のブリュンヒルデ」で有名な作家さん。

この作家さん、お話のはじまりはとっても面白くて、アツくかつ勢い良く様々な伏線を張りながら進み、読者をグイグイとお話の中に引き込んでいく技量の持ち主なのですが、いかんせん長期連載になるとお話のたたみ方が雑すぎる。

そんな問題点を取り除いて、岡本倫氏の良いところだけを凝縮したのが、この作品集です。

少年漫画に近い作りのお話が多いので、設定自体は無茶苦茶だったりするのですが、スタント女優が火事になったビルに取り残された子供を助ける話であったり、後の名作と同タイトルの「エルフェンリート」というピアニストの話だったり。

どうにもシンプルなストーリー構成しか思いつかないようなお話でも、持ち前の笑いを取りながらテンポ良く進むノリと、何度かどんでん返しを入れながらダイナミックに構成されたお話で、荒々しくも読後には「面白かったー!」と思わせてくれる作品群。

もともとは2分冊のBOX入りという特殊形状の単行本だったのですが、新装版では1冊にまとめられています。

岡本倫氏は長編ばかりなのですが、もう1作だけ作画担当の方と組んで描かれた中編作品「君は淫らな僕の女王」があります。こちらもも面白いですよ!

 

第45位 ストロボライト 青山景

2011年に32歳の若さで自ら命を絶ってしまった作家さん。

普段描かれていた作品は、甘酸っぱい青春にベースを置きながらも、人のドロドロとした感情を描き出すようなもの。対して、この作品では哲学的な問いも含めて描きたいものを描きたいように描いているフシがあります。

とある超マイナーな映画が好きな、小説家志望の学生。ひょんなことからその映画のヒロインを演じた女性と出会い、付き合うことになるも、どうしても相手に役柄の影を重ねてしまう。

主人公自身が他人の評価であったり、他の人の作品であったりの影響を受けずに、自己を確立して、それによって映画の面影を重ねたりせずに他人を見ることができるようになる、というところまでを描いた作品。

一括りにしてしまえば、アイデンティティーの確立というありがちなテーマではあるのですが、「現実世界」と「映画の世界」にさらに「現実世界を回想として語る自分」を同時並行で描いていくという、かなり実験的なスタイルの作品。コマ割りなどにも実験的な部分が多くあります。

可愛らしい絵柄で読者をお話の中に引き込みつつストーリーを進めていくのですが、俯瞰的な立場が入ったりちょっと不気味に感じるような演出があったり。これだけ複雑な構成なのに、決してわかりにくくないのがスゴい。

このお話はかなり淡々と描かれていますので、胸キュンとかは無いのですが、読後には映画を見た後のような、あるいは質の高い小説を読んだ後のような余韻が残ります。

青山景氏の他の作品には、甘く酸っぱい青春ラブコメかと思いきや、かなりドロドロとしたラストをむかえる「SWWEEET」、短編集の「THE DOG RACE ~青山景初期作品集~」、爽やかな恋愛を描いた「チャイナガール」があります。他にもう1作、遺作となった作品があるのですが、こちらは単行本化されていません。

 

第44位 シスタージェネレーター 沙村広明

アニメ化もされた時代劇風アクションファンタジー「無限の住人」が有名な作家さんですが、まったく異なる作風がいくつかありまして、それぞれに熱狂的なファンがいたりします。

こちらはどんでん返しのある、ビックリするほどお話の構成が上手な短編と、テンポ良く繰り出されていく変わった言葉遣いの会話で笑わせるギャグ作品などを収録した短編集。

ある程度時事ネタ的なことまで精通していないと笑えないので、やや難易度高めのギャグではあるのですが、ハマればその軽快なテンポの虜になってしまいます。短編で綺麗にまとめつつ、最後に話をひっくり返す技法も見事。

沙村広明氏のこういったタイプの作品ですと、「おひっこし」や「ハルシオン・ランチ」も傑作です。

沙村広明氏のもう1つの顔は、猟奇趣味的な作品群に見ることができます。例えば「ブラッドハーレーの馬車」という短編連作では、中世のヨーロッパで女性が犯されて殺されてしまうようなお話を、女性視点から描いている作品。

苦しみであったり悔しさであったり恐怖であったり。そんな感情を全面に描きつつも、救いのない残酷なお話が続きます。

個人的には猟奇的すぎて好みではないのですが、加虐趣味を持つ方にはハマるであろう作品です。

 

第43位 マニマニ 宇仁田ゆみ

アニメ化実写映画化もされた「うさぎドロップ」で有名な宇仁田ゆみ氏の短編連作。

かつて苦手だった場所に戻ってきてしまった人や、現在進行形で苦手な場所ができてしまっている人。いろんな悩みを抱える女性の恋愛を描いた作品集です。

様々な苦悩を抱えつつも、恋心をきっかけにして前向きに進む糧を得る。そんなちょっとした変化を、優しく暖かい筆致で、かつポップな絵柄で紡ぎ出しています。

皆さん悩みを抱えていながら周りの方々は優しく暖かいですし、ポップで陰影がつよいながらも、どこか柔らかさも感じさせる絵柄も素晴らしい。短編がいくつも並んでいますが、いずれも登場人物が一部重なっている連作スタイル。前のお話のキャラクターが違和感なくうまく絡んでくるお話づくりも凄い。

笑顔になって心も軽くなり、爽やかな気分にさせてくれる作品です。

宇仁田ゆみ氏は短編や中編を多く描いてきた作家さん。「ノミノ」や「ゆくゆく、「スキマスキ」あたりも面白いですよ。

 

第42位 回游の森 灰原薬

変わった性癖を持つ人達の葛藤を描いた、やや重めのオムニバス。

特殊な性癖を周囲に隠し続けている人々。それがバレてしまいそうになって悩むお話であったり、あるいはそれがきっかけで人を傷つけてしまうお話だったり。あるいは少し特殊な形ではありつつも、純粋な恋愛と別れのお話であったり。

そんなお話を、現代の現実に即して淡々とリアルに描きつつ、間や展開、絵の雰囲気で重たい水底のような空気感を漂わせています。もともとは可愛らしい絵柄なのに、ときどきホラーのように描かれる人のニヤケ顔だったり、薄暗い背景だったりがちょっと怖いですが、そういったポイントをうまく使いつつ、抑圧された心の機微を見事に描き出しています。

各話の引きが次の話への導入になっていて、流れるようにスムーズに、次のお話に出てくるキャラクターと今のお話のキャラクターとを結びつけている手法も面白い。連作作品であるにも関わらず、きっちり単行本として1つのお話にまとまっています。しかも、最後にはキレイに一周回って戻ってきている! キチンと「回遊」しています。

灰原薬氏は、この作品の後に描いた「応天の門」が当たり作。藤原氏全盛の時代における、在原業平と菅原道真をサスペンス調の物語で描いている作品です。

 

第41位 にげまどうし 三友恒平

ひたすらに暗く重いお話。

現実世界からいなくなってしまいたい、というような想いを持った人がなってしまう「にげまどうし」。今、日常生活で逃げ出したいと思っている人たちが、にげまどうしに引きずられてそちらの世界へと行ってしまうのか、あるいは現実世界に踏みとどまるのか。そんな葛藤を描いた4篇のオムニバスです。

ここで描かれているのは「悩み」であって、その解決ではありませんので、救いのないまま絶望的に終わってしまうお話もちらほら。ものすごい数の線で描きこまれた重たい絵柄もあって、読者の心に重量級の影を残します。

重めで読み進めるのが大変な作品ではありますが、人生から逃げ出したいという想いを真っすぐに描いていますので、半生を振り返りつつどうすれば逃げずに生きていけるのか、あるいはそこに意味があるのかといったことをしっかりと考えさせられます

混沌とした感情をそのまま描き出すかのような絵とお話展開が凄い。同じく三友恒平氏の「必要とされなかった話」や「とても透明でやさしいしあわせ」も似たような凄みがあります。一気にすべて揃えるのはオススメできませんが、どれか一作を読んでみてお気に召しましたら、あわせて是非。

 

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第40位 マンゴーの涙 小玉ユキ

アニメ化もされた「坂道のアポロン」でおなじみ小玉ユキ氏による全6篇の短編集。

少女マンガですので、恋愛をメインに描いたお話ばかりなのですが、ベトナムのお話だったり切ない初恋のお話だったり。設定やお話の作りが凝っていて、ホワホワ系の少女マンガとはまったく違う雰囲気があります。

絵柄は陰影の強い、どこか広告イラストを思わせるようなサッパリとしたもので、やや線が固め。詩的な間のある作風には合っているのですが、絵で魅せるタイプではないので苦手な方もいらっしゃるかも。

女性ホームレスとOLの、どちらが幸せなのかを対比するような考えさせられるお話があったり、題材がかなりガッシリとしている作品集。そんなお話を、詩のような間とリズムを取りながら、少し引いた視点から軽やかに描き出していきます。

小玉ユキ氏の短編集には、他に「羽衣ミシン」や「Beautiful Sunset」、「光の海」などがあります。

 

第39位 夜盗姫 水谷フーカ

こちらは短編集ですが、連続したお話が好きな方には1巻完結の「チュニクチュニカ」もオススメ。ここではまとめてご紹介しちゃいます。

どちらの作品も、ややファンタジー気味。蒸気船のある時代に新大陸を発見していたり、中央アジア風の遊牧民がいる地域の楽団だったり。「ありそうだけど現実にはない」設定になっています。

可愛らしいながらもスッキリとした透明感のある絵柄で、登場人物たちの心の機微を描いていきます。あまり設定自体に重要性は持たせずに、キャラクターの心情を描き出す舞台装置として設定を利用している程度。

甘く酸っぱい恋心であったり、熱い冒険心であったり。そんな様々な心情とその変化を、わかりやすくかつ軽快に描き出しています。読んでいて、笑顔のまま胸がキュッとなるような作品ばかりで素晴らしい!

夜盗姫の最後に収録されている短編「GAME OVER」と関連した連作を収録している「Game over」もあわせて是非!

 

第38位 Final Phase 朱戸アオ

湾岸部に作られた住宅街。海に浮かんだ閉鎖的な空間で、謎の病気によって死ぬ女性。同様の症状で亡くなる方が次々と現れ、さらにはヒトからヒトへの感染も始まってパンデミックに…。

というパニック作品のような作り。ただし、視点はお医者さん側から見ていかに感染を食い止め、原因を突き止めるかという側にあります。

どんどん感染が広がり、食い止めることができない。下手をすれば自分も含めて全滅しかねない。そんな中で、一体どこから感染が始まり、どうすれば食い止めることができるのかを探るミステリのような要素もあり。

さらには医療面や感染症対策の面でも緻密な取材に基づいて描かれていて、我々読者にとっては感染症にどんな脅威があって、どういう広がり方をするのか、といった勉強にもなる社会派作品でもあります。

はらはらドキドキしながら謎解きをする楽しさもあり、さらには勉強にもなるというあらゆる要素を一冊に詰め込みつつ、詰め込みすぎ感を感じさせない素晴らしい傑作!

朱戸アオ氏の作品にはこういったタイプのお話が多いですので、興味をお持ちの方には「ネメシスの杖」や「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」もオススメですよ。

 

第37位 かわいい悪魔 志村貴子

トランスジェンダーだったり、男装/女装だったり。深刻に悩める思春期の男女を、優しく穏やかに、かつ丁寧に描くことが得意な作家さん。

本作は短編集ですので、そういった複雑なテーマを深掘りしていく志村貴子氏の強みは見られないのですが、その分、ほんわか優しくてたまにキュンとする、氏のマンガ的な技量を存分に楽しめる作品集になっています。

複雑な家族関係だったり、継母とのかんけいだったりを描いたお話も入ってはいるのですが、こんかいばかりはアクセント程度。むしろほんわかとしてしっとりなめらかシルキーな読み心地を楽しみ、繊細で心に染み入るような読後感に浸る。そんな良作が7篇も入った珠玉の短編集です。

志村貴子氏の作品では、短中編の「ルート225」や「わがままちえちゃん」も良いですし、重いテーマを優しい切り口で丁寧に描いた長編「放浪息子」(アニメ化)や「青い花」(こちらもアニメ化)、「敷居の住人」あたりも面白いですよ。

 

第36位 さくらん 安野モヨコ

土屋アンナ主演で実写映画化もされた作品。

安野モヨコというと、漫画家である以前に「ヱヴァ」の庵野秀明監督と結婚したことの方が頭に浮かんでしまうのですが、漫画家としても一流だったことを思い出させてくれる作品です。

江戸時代の花魁をテーマにしています。このような時代の花魁といえば、先輩や師匠には絶対に従わなければならない厳しい世界だったはずですが、そんな中でおてんばで型破りな振る舞いを続ける主人公。

女性同士の足の引っ張り合いなど醜いところから、男女のかけひきや花魁の艶やかな世界までをテンポよく、明るく描ききった傑作

安野モヨコ氏の作品では、庵野秀明氏を知る方ならアニメ化もされた「監督不行届」がオススメ。庵野秀明を含めた学生時代の周辺人物を描いた島本和彦の「アオイホノオ」もあわせて読むと、面白さ倍増です。

他にも、代表作の「働きマン」や「脂肪と言う名の服を着て」なんかも面白いですよ。

 

第35位 拡散 小田ひで次

ミヨリの森」がアニメ映画化もされている(主題歌は元ちとせ!)小田ひで次氏による作品です。

普通に理解しやすいミヨリの森と比べると、かなり観念的で人によってはわかりにくい作品。理解できたらできたで、かなり重いです。

主人公は、自らを自分自身にとどめておくことができずに、周辺にどんどん拡散していってしまいそうになります。幼馴染の女の子がそれを引き留めようとするんだけど…というお話。

簡単に言ってしまえば、自分のアイデンティティーは何か、自分とは一体何なのかという悩みを突き詰めて、それをこの作者なりに描いた作品。そんな悩みをこのような形で観念的に、それでいて比較的理解しやすい形で描ききっているのがスゴい!

この作品を描いたときの作者の心情は、「平成マンガ家実存物語 おはようひで次くん!」に描かれていますので、そちらを合わせて読むとわかりやすいかも。

小田ひで次氏の他の作品では、「クーの世界」や「夢の空地」なんかも面白いですよ!

 

第34位 それは私と少女は言った タカハシマコ

奇跡のように美しい少女が自ら命を絶って3年。高校生となった友人5人から見た、自殺した少女についてのお話。

誰が少女を死に追いやってしまったのか。そんな謎解きをしつつ、それぞれの登場人物たちがうちに秘めている、ドロドロとして複雑に絡み合った感情を描いた作品。

感情を紐解いて言葉にしてしまうと、単純化しすぎてしまって読者に伝わらないですし、かといってそのまま紐解かずに描こうとすると、そもそも誰も理解できない。そういった難しい人の感情を、紐解くべきところは紐解いて、そのまま描くべきところはそのまま描くことで、上手に生々しい感情を伝えています。スゴい!

かなり重めの作品ですので気合を入れて読む必要はありますが、それに見合った読後感を提供してくれる傑作。

タカハシマコ氏の他の作品ですと、「少年バンビ」や「脳内アリス」なんかもオススメです。

 

第33位 たくのこ 花輪園人

小学生くらいの姉弟と、大学生くらいのお兄ちゃんが自宅内で繰り広げる密室劇。新人賞受賞からそのまま連載しちゃった作品です。

その時その時で、姉と弟が即興の劇を展開していきます。その内容が、小学生とは思えないほどに高度。密室に閉じ込められて10分以内に脱出しないと死ぬ、というお話だったり、殺し屋とそれを返り討ちにするターゲットのお話だったり。

そんなお話を、小学生が自宅の中でやっているんですからシュール。最後にはお兄ちゃんが介入して良いとこを前部持っていっちゃいます。

話の構成がとにかくよく練られていて、淡々と進む雰囲気と合わせてひたすらシュールでクスリと笑えて、それでいて唸らされる素晴らしい作品

この作家さんは他に単行本を出していないのが残念。それくらいにすごい才能です!

 

第32位 Daddy Long Legs 勝田文

表題作を含む全4篇の短編集です。

表題作の「Daddy Long Legs」は、「あしながおじさん」の舞台を、大胆にも昭和初期の日本に移してアレンジしたお話。

ほんわかと可愛らしくてテンポも良い。それでいて間のとり方が軽妙ですし、読者が察する部分も多いのにわかりやすい。説明をするのではなく、あえて本人ではなく相手の表情を描いたり、クドくならずに読者に理解させる工夫が満載。

テクニカルに高い技術力を誇っていて、それを活かしてキュンとくる恋愛ものをたくさん描かれています。お話の構成や展開、設定もものすごく凝っていて素晴らしい!

勝田文氏の他作では、同じく短編集の「あいびき」や、単行本2冊完結の中編「あのこにもらった音楽」(リンクは1巻完結の愛蔵版です)なんかもオススメ。

 

第31位 ふら・ふろ カネコマサル

ぼろアパートの管理人をしている、貧乏娘2人組。そのゆったりまったりとした日常を描いた作品です。

この作品の特徴は、とにかく何もおきないこと。そんな日常の1コマを、絶妙に長い間を取りながらゆったりと切り取っていきます。

キャラクターの魅力と間の妙によって、なにもないんだけどほっこりとした気分になって、ときどき笑える。平和で穏やかな昼下がりっていいな~と思える作品です。カフェ巡りや、ゆったりとした気分に浸りたい旅行のお供に。

カネコマサル氏の他作には、ギャグに振り切った作品「彼岸花保育所は怪奇スポットなのか!?」などがあります。

 

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第30位 FLIP FLAP とよ田みのる

1巻完結もの。ゲームセンターにかつて置いてあったピンボールという、かなりマニアックな題材を用いて描く、青春マンガにして恋愛もの。

実はテクニック的にもかなり奥が深いピンボールという遊技台。その奥深さをアツく語りつつ、主人公がハイスコアを目指して悪戦苦闘する物語。その過程で、常連の女のことも仲良くなっていくという、王道の少年漫画のようなお話です。

絵柄こそ独特のタッチですが、とっても読みやすいお話ですし、展開が上手で一気に引き込まれていきます。読むものを掴んで話さない魅力のある作品で、しかも1巻でキレイにストーリーもまとまっているのが素晴らしい!

とよ田みのる氏の短編集「とよ田みのる短編集CATCH & THROW」や代表作「ラブロマ」なんかもオススメ。

 

第29位 茄子 黒田硫黄

この作品はもはや言わずもがな。短編集なのですが、そのうちの1篇「アンダルシアの夏」が茄子 アンダルシアの夏」としてジブリによってアニメ映画化されています。短編集の中の1話だけがアニメ化されるってスゴいことですし、しかも制作会社がジブリというのがまた凄まじい。

ジブリのお眼鏡にかなうような、そんな素晴らしい味のある短編を24篇収録しています。

なんとその全てがナスをテーマあるいはモチーフにしているという、これまたスゴい短編連作。しかも無理矢理ナスに絡めたというお話ではなく、珠玉の短編の中にサラッとナスが出てきつつも、しっかりお話の核の1つになっているというおそるべき技量。

黒田硫黄氏は筆を多用することもあって、絵柄がかなり独特なのですが、本作ではペンによる作画も多いので黒田硫黄入門にもオススメ。コマ割りや話の展開も絶妙で、作品から醸し出されてくるゆったりとしつつも真剣な空気感も素晴らしいです!

黒田硫黄氏の作品では、短編集の「大金星」や「 黒船」、テレビドラマ化もされた連載作「セクシーボイス&ロボ」あたりもオススメです。

 

 

第28位 阿呆にも歴史がありますの 長崎ライチ

とんでもなくアホな姉と、それにツッコミを入れるものの一般常識からは激しくズレている妹によるゆったり目なギャグマンガ「ふうらい姉妹」で一躍脚光を浴びた長崎ライチ氏の初期短編集。

とにかく作者も頭のネジが何本どころか何十本も飛んでいるんじゃないかというようなアホさ加減。それをギャグマンガらしくない、かつての少女漫画のような筆致で丁寧に、かつ淡々と描いていきます。

あまりにもナンセンスなギャグなので、「なんだかよくわからないけど面白い」という笑いを受け入れられる方にはオススメできますが、そういった笑いが苦手な方には全く面白くない作品になってしまうかも。ただ、テンポは絶妙ですし、ネタのぶっ飛び具合も素晴らしいので、ハマれば爆笑間違いなしです!

 

第27位 パノラマ島綺譚 丸尾末広

江戸川乱歩の同名小説をコミカライズした作品。

ただし、普通のコミカライズではありません。この丸尾末広氏は、戦前のチラシを思わせるような独特のタッチで、激しめのエロやグロを描くことが得意な方。

こちらも、その独特なタッチを活かしつつ、作品のテーマの1つでもあるエロスを時に不気味に、ときに妖艶に描いています

激烈に人を選ぶ作品ですが、表紙を見て「おっ」と思う方ならハマること間違い無し!

 

第26位 ななはん ももせたまみ

おっとり美人で下ネタ好きな長女、オタクの次女、江戸時代マニアの三女が営む質屋さんを舞台にした4コマ。

ゆったりまったりとした日常を描く4コマの名手、ももせたまみ氏の作品ですから、他の作品にたがわずやはりゆったりまったり。

最近で言うところの「萌え4コマ」に通じるところもあるのですが、4コマ界で長く活動されている作家さんということもあって、オチは毎回しっかりしています。笑えるオチを付けつつ、ゆったりまったり

それをわずか4コマの繰り返しで表現できるんだからスゴい!

ゆったりとした気分でほっこり笑顔になりつつ、下ネタでニヤニヤしたい方にオススメ。

 

第25位~第11位

いよいよ上位半分です!

ちょっとクセのある作品も含んでいますが、ここから先は「作品を楽しもう」という気持ちさえあればどなたにでもオススメできるものばかり。

ちょっとした空き時間などに、ぜひ読んでみてください!

 

第25位 式の前日 穂積

結婚式の前日を描いた表題作をはじめとして、5篇を収録した短編集です。

少女漫画に掲載された作品なのですが、そうは思えないほど対象年齢が高そうな、少し重くて淡く切ないお話が並びます。

特に、淡々と日常を描いているのかと思いきや、オチで読者が勝手に想像していた作品の設定をひっくり返すような手法が上手。中盤までかけて丁寧にミスリードして、終盤で一気に種明かしという手法を、恋愛などが絡むようなお話に持ってきてキレイにまとめ上げているのがすごい!

穂積氏にとって表題作がデビュー作。本作が初の単行本であるにも関わらず、このマンガがすごい! などその年の各種ランキングを総なめにした作品。

穂積氏の他の作品には、「僕のジョバンニ」や「うせもの宿」があります。

 

第24位 ほしのこえ 佐原ミズ

君の名は」で一躍国民的アニメ映画監督へとのしあがった、新海誠がかつて手掛けた作品「ほしのこえ」のコミカライズです。

アニメ作品自体は25分しかない短編。それを単行本1巻分の長さで丁寧に描いています。

近未来の日本。都市は退廃しつつも、今と大して変わらない生活をする高校生たち。ただ、異性からの襲撃から防衛するため、ロボットに乗って戦うことも…。

というロボットSF的な作品でもあるのですが、お話のメインは高校生の恋ごころ。淡く甘酸っぱい、そしてちょっと切ない物語。特にこの作家さんは、その名前の通りみずみずしい空気感が得意な作家さんですから、その持ち味を活かしつつ、登場人物たちの心の動きを丁寧に描き出しています。

コミカライズではありますが、映画以上に心情表現が上手で、漫画という媒体を全力で活かした素晴らしい作品に仕上がっています! もとの映画を知らない方でも十分に楽しめますよ

その他、この佐原ミズ氏はいくつかの連載をこなされていますが、中でも「マイガール」が断トツでオススメ。青年と、その亡き恋人の娘を描いたじんわりほっこり心温まる作品です。

 

第23位 少々生臭いお話 鮪オーケストラ

タイトルや作者名からして衝撃的な作品ですが、中身もまた衝撃的。

ギャグマンガの連作で、10本収録。

ナンセンスギャグなのですが、お話としては各話ある程度の理解できるストーリーを保っています。

どこか生々しいというか、臓物っぽいというか、タイトル通り「少々生臭い」世界観。その中で、モノローグにしてもセリフにしても、いちいちちょっと「イラッ」としつつも笑ってしまう、独特の言葉選びがとにかく面白い!

下ネタも微グロもなんでもござれの作家さんですので、かなり人を選ぶところではありますが、とにかくギャグセンスだけはずば抜けていますので、ハマればめちゃくちゃ面白いですよ。

鮪オーケストラ名義での単行本は、残念ながらこの作品と打ち切り作1本のみ。かつて長谷川清というビックリするほど普通の名前で活動していた時代の作品に「おさるなまさるくん」があります。

 

第22位 じんべえ あだち充

あだち充といえば長編の野球漫画「タッチ」や「H2」が思い浮かぶかと思います。

ああいった長編漫画でうまいこと帳尻をあわせていくのもとっても上手なのですが、この方の伏線の張り方や淡々としてちょっと切ない雰囲気、ときに衝撃的な展開が活かされるのは、やはり短編。

なかでもこちらはビッグコミックオリジナルで連載されていたこともあり、大人向けでよく練り込まれたお話。

死別した妻の連れ子との、恋心も交えた複雑な感情を描いています。こういった重めになってしまいそうなお話でも、独特の間を活かした淡々とした語り口と、笑いを多分に挟んだ軽やかでリズムの良い展開で、あだち充らしいラブコメ作品に仕上がっていますよ! テレビドラマ化もされた傑作です。

あだち充の短編では、「ショート・プログラム」シリーズや単著デビュー作でワイド版なら2巻完結の「ナイン」、同じくビッグコミックオリジナルで連載された「冒険少年」なんかもオススメです!

 

第21位 HOTEL Boichi

韓国出身の漫画家Boichi氏による作品集。

絵が、特に背景がキレイな方の中には写真のトレースだったり、トレースですらなく加工だったりといった方もいらっしゃいますが、この方はSFなのに背景も人物も写実的で無茶苦茶キレイというすごい人。

絵がキレイというレベルも並ではなくて、もはや実写と見紛うレベルの写実的なキレイさです。

そしてお話もよく練られていて面白い! こんなキレイな絵でしっかりとマンガとして成立したお話を展開されてしまうと、もはや感心を通り越して衝撃です!!

韓国人作家というと「ん?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、政治色はまったくありませんし、日本のマンガという形式にとらわれない新たな作品作りが見られますので、そんな方にもオススメできる作品。

こちらは日本のマンガに寄せてある作品ですが、「究極宇宙味帝シーザー」なんかも面白いですよ!

 

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第20位 FOR SEASON 足立和律

全5編の連作+短編2本の短編集。

淡くて甘くてほっこり、ちょっと切ない。そんな青春時代の恋愛を繊細に描いた作品たち。

鉛筆のようなタッチで描かれていて、柔らかくて暖かみのある独特の絵柄。

読むと暖かく、そしてちょっと元気になれるような短篇集です。こんな青春時代を送りたかった!

青年向け恋愛ものとしてはかなりのできだと思うのですが、残念ながら商業コミックスとしてはこの1冊しか発表されていません。同人での活動は数年前までかっぱつだったようなのですが…。

 

第19位 虫と歌 市川春子

独特の味のある擬人化が上手な作家さん、市川春子氏による短編集です。

草であったり虫であったり。「身近にあるけど、普段あえてその存在について考えたりしないようなもの」と人間との関係を描いた4篇の作品。

細い線で、独特の味のあるタッチで、まるで詩のように、宮沢賢治の物語のようにお話が紡がれていきます。各話で必ず、なぜか人体の破壊も描かれているのですが、その描写もまた美しくて詩的。

唯一無二の世界観で紡がれる物語は、優しくも儚く切ないです。

説明もわかりにくい部分が多いので、かなり人を選ぶ作品たちですが、ハマれば間違いなく作品の虜となってしまいますよ。作品の1篇「ヴァイオライト」はかなり難解なので、一度読んでわからなければググってみること推奨です。

同じく市川春子氏の短編集「25時のバカンス 市川春子作品集(2)」もオススメです。長期連載もされているのですが、正直なところこの方の作風は短編でこそ活かされると思いますので、まずは短編集を読んでみるべきです!

 

第18位 百万畳ラビリンス たかみち

イラストレーター上がりの漫画家さん、たかみち氏による作品。この作者としては初めて描く長編(全2巻)なのですが、話の設定もよく練られていますし、まとめ方も見事で面白い!

進んでも進んでも住宅が続いていて終わらない。階段に先がなかったり、屋上に風呂があったり、ちょっとおかしなところも多い住宅。そんな不思議な世界に迷い込んでしまった2人が、「何者か」の襲撃を交わしつつ、その世界からの脱出を試みるSFでありミステリーであり脱出劇。

頭を使って徐々に謎が解き明かされていく感覚が楽しいですし、アクション描写も見事。それでいて、キャラの魅力でちょっとノリの軽い笑いもあり。絶望的な世界を明るく楽しく探検していき、その世界の真相へと迫っていきます。

脱出劇の名作「いばらの王」に近いところを感じさせつつも、ゲーム感覚も取り入れて、ノリや空気感も大分ライトな現代風に昇華させた作品。読みながら登場人物と一緒に謎が解けていく良作ミステリーと、ハラハラドキドキの脱出劇、そしてテンポの良い会話芸の良いところを組み合わせたような、すごい作品です!

たかみち氏は、もともとは日常系のようなゆったりまったりとした作品を得意としていました。オールカラーのゆる~い短編「りとうのうみ」や、その名も「ゆるゆる」という作品など、日常系にも名作が多いですよ!

 

第17位 月夜のとらつぐみ 笠井スイ

全7作を収録した短編集。新人時代の短編集なので荒削りな部分もありますが、その分描き込みも半端なくて、絵で見せるタイプの作品集になっています。

産業革命前後~近代くらいのイギリスあたりの雰囲気を得意とする作家さん。そこで苦労をしている少年少女であったり、恋をしている人であったり、そんな悩める方々に光が射す瞬間を描いた物語たち。

表題作の「月夜のとらつぐみ」や「水面の翡翠」はほぼサイレントでわずか8ページのお話ながら、特に前者は「あ、そういうことか!」という読後のスッキリ感を与えつつも、ものすごく叙情的でほっこり心温まる作品に仕上がっています。

笠井スイ氏の連載作「ジゼル・アラン」なんかも面白いのでオススメですよ。

 

第16位 ももんち 冬目景

羊のうた」や「イエスタデイをうたってで知られる冬目景氏による作品。

連載は中断することが多くて、終わるのか終わらないのかハラハラしてしまうタイプの作家さんですので、こうして1巻でキレイに完結している作品のほうが安心して読むことができます。

一人暮らしをはじめたばかりの、美術予備校生の女の子がおくる日常を描いた作品。荒々しくも透き通るような透明感のある絵柄で、淡々と、それでいて人の心の機微を丁寧に描き出していきます。

主人公の恋を主軸にお話は進んでいくのですが、何があるわけでもない日常を描いていて、それなのにお話にグイグイ引き込まれていく

年齢の割に幼く見える、おっとりとした女の子の恋愛。この作者にしては珍しく、ライト目な笑いも取り入れつつ少女漫画のような純粋な恋愛のお話です。淡くほっこりとした感情になりつつもキュンとくる名作

この作家さんの短編は、少し不思議な日常ファンタジー系も多くあります。そんな冬目景氏らしさが出た作品としては「ACONY」や「冬目景作品集 空中庭園の人々」なんかもオススメ。

 

第15位 アバラ 弐瓶勉

アニメ化された「シドニアの騎士」や「BLAME!」で有名な弐瓶勉氏の作品。

もとはコミックス2巻分の長さです。 アニメ化もされたシドニアの騎士と似た設定のお話ですが、ダークヒーローものとして話のメリハリもしっかりしてますし、コンパクトかつキレイにまとまっているのが特徴。

絵柄は黒と白のコントラストが強いタイプなので好みが分かれるところですが、細かな線も描きこまれていますし、グラデーションの表現もありますので、こういったタイプの絵にしてはかなり見やすい。

グロ表現等もありますので、その点は要注意です。

たくさんの細長い塔が立ち並ぶ、未来の世界。謎の生命体に襲われている世界を、ダークヒーローが倒していくというお話。かなりハードなSFですし、設定も練り込まれていて謎が謎を呼びページをめくる手が止まらなくなる傑作です。

弐瓶勉作品から日常要素など軽めの成分を一切取り除き、ハードな部分だけを凝縮してお話を作ってみても、こんなに面白かった! ダークな世界観とアクションがお好きな方に。

 

 

第14位 ネムルバカ 石黒正数

アニメ化もされた「それでも町は廻っている」でお馴染みの石黒正数氏による作品。

この方は、何でもない日常に伏線を埋めまくっていって、後々キレイに回収するのが上手な方。「それ町」もそうなのですが、とにかく細かなエピソードがつながっていくつながっていく。

そして、そんな得意技の効果が最も効率的に発揮されるのが、1巻程度で完結する中編です。

このお話は寮で暮らす先輩と後輩の何気ない日常の中でいろんなものが積み重なり、先輩が失踪するまでを描いたもの。「それ町」をギュッと濃縮したような作品で、淡々とかつまったりとした日常の中に笑いを混ぜ込みつつ、そうした細かなお話が全てつながっていく…というようなお話。

同じく石黒正数氏の「響子と父さん」や「外天楼」も同じく単巻作品で面白いのでオススメです! 特に外天楼はちょっと毛色が違っていて、ミステリ要素も入ってきます。

 

第13位 アンダーカレント 豊田徹也

夫が失踪して悲しみに暮れつつも、明るく振る舞う銭湯を営む女性。夫探しの依頼を受けた、掴みどころがなくひょうひょうとしてグータラにも見える探偵さん。そして、人手不足に悩む銭湯に転がり込んできた男性。

どこか闇を抱えつつも、表に出さずに日常生活を送る人々を描きつつ、夫失踪の真相に迫っていきます。

話の展開や雰囲気は決してふわふわせず、リアルにしっかり根ざしている。ときどき笑いもはさみつつ、淡々とした語り口で物語は進んでいきます。

幾つかのエピソードを交えつつ最終話に至るのですが、そこまで「点」として紡がれてきたお話たちが、最終話で見事に「線」としてつながります。伏線とも思えなかったような伏線までもが見事に絡んでくるのは凄い!

とにかく間のとり方が尋常じゃなく上手で、読後には充実と喪失の入り混じった感情が残りますが、どこか満たされた感もあるのが不思議

作者の豊田徹也氏は寡作で有名でして、食うに困らないとマンガを描いてくれません。貧乏生活をしているようで、読者からはファンレターと一緒に米が送られてきたなんて話も。関連性は強くありませんが、一部キャラクターが共通している「珈琲時間」や、短編集の「ゴーグル」もオススメ。現状、発売に至ったのはこの3作のみ。

 

第12位 九月病 シギサワカヤ

ドロドロの恋愛ものを描かせたらピカイチのシギサワカヤによる、全2巻の作品。

全編ひたすらにどろどろでウダウダになってしまった恋愛を描き続けているのですが、会話のテンポや間がとにかく素晴らしい!

全体的に説明は弱くて、行間を読むタイプの会話が続きますので決してわかりやすくはないですし、合わない人には合わないかも、といったタイプの構成。ですが、ハマればめちゃくちゃ面白い

もともと同人誌として20冊位に分けて発表されていた作品をまとめたものですので、それぞれの話にキチンと盛り上がりやメリハリがあって、最後まで飽きさせません。

他にも単巻作品を多く発表されています。「未必の恋」や「さよならさよなら、またあした」あたりもオススメですよ。

 

第11位 グリムのような物語 トゥルーデおばさん 諸星大二郎

「妖怪ハンター」や「西遊妖猿伝」などで知られる妖怪もの、異形ものの大家。

そんな諸星大二郎氏がグリム童話を独自に解釈して、ストーリーを再構築したらどうなるか。

もともと怖い話の多いグリム童話が、よりおどろおどろしく恐ろしい感じの短編集に仕上がっています。

線が多くて少し怖い感じの絵柄は読む人を選ぶところ。

メルヘンなところに行く際にこの作品を読んでいくと、メルヘンな雰囲気が頭のなかでホラーに変換されてしまって大変なことになります!

姉妹作の「スノウホワイト グリムのような物語」も合わせて是非。

 

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10位~1位

いよいよトップテンの発表です!

ここから先は、僕としては全ての方にオススメしたいくらいに大好きな作品たち。

様々なジャンルを取り揃えていますので、ぜひお好きなジャンル、読みたいタイプのものを選んで読んでみてくださいね!!

 

第10位 リストランテ・パラディーゾ オノ・ナツメ

単巻なのにアニメ化もされたという驚くべき作品。と言いますのも、この作品完結後に本編より圧倒的に長い外伝が発表されましたので、お話自体は十分にあるんです。

老眼鏡のイタリア紳士と渋い和装のおっさんを描かせたら右に出るもののいない、オノ・ナツメ氏。BL寄りの方ですが、オノ・ナツメ名義は一般紙用ですので男性でも安心して読むことができます。

老眼鏡紳士だらけのイタリアのリストランテ。そこで見習いとして働く若き女性が老眼鏡真摯に徐々に惹かれていって…というお話。

良いところも悪いところも含めて年齢差からくる考え方の違いやふるまいの違いをうまく描き出していますし、何より優しく穏やかな老眼鏡紳士の癒し力が高すぎる! おっさんから見ても、この人のもとで働きたいと思うような魅力あふれる紳士たちを眺めているだけでも幸せです。

イタリア旅行のお供に是非。

オノ・ナツメ氏の作品では、他にも本作の外伝にあたる「GENTE」や、時代劇ものでやはりアニメ化された「さらい屋五葉」、NYPD(ニューヨーク市警)ものの「COPPERS」なんかもオススメですよ。単巻作品にも、「GBパーク」や「Danza」、「not simple」などがあります。

 

第9位 たぶん惑星 粟岳高弘

超本格派SF+ヌメヌメ異星人+スク水という、超激ニッチジャンルを描かせたら右に出るもののいない、粟岳高弘による作品。

ヌメヌメ異星人とスク水に、ちょっと古めの絵柄のせいでイロモノ扱いされがちですが、むしろ練りに練られたSF設定が面白い

日本のとあるトンネルを通ると、そこは異世界だった…。そんな異世界に住まいはじめて2世代目の少女たちが、ゆったりまったり日常を送りつつもその世界の不思議に迫るお話。昭和末期の雰囲気もノスタルジックで素敵。

考察なんかは欄外にミッチリ書き込まれていて、「攻殻機動隊」を思い出しますが、攻殻機動隊の欄外とは違って自分よがりの書きなぐりではなく、わかりやすくて面白い。

昭和感あふれるスポットへのお出かけのお供に最適。

同じ作者の「取水塔」や「鈴木式電磁気的国土拡張機増補版」なんかもオススメですよ。

 

第8位 あずまんが大王 あずまきよひこ

新装版がギリギリ3巻構成なのでランクイン。

いわゆる「萌え4コマ」というジャンルを作り上げた作品。

なのですが、「萌えとか気持ち悪い」って方にこそ読んでいただきたい。多分、思っているより普通です

単に学生のダベりをマンガにしただけ。しかも、4コマという形式でありながらオチも弱く、次の4コマに話がつながっていたりして、もはやただのコマが四角いマンガなのではないかというくらいにメリハリが弱い。

なのに、心はほっこり顔はニッコリ。なぜかリラックスして幸せな気分にさせてくれる、そんな作品です。

ゆったり気分での旅行にオススメ。

同作者が「萌え」から離れ、はっちゃけた子供が動き回るさまを漫画化しただけの新ジャンル作品「よつばと!」もまたとっても面白いので合わせて是非。

 

第7位 ラ・プティット・ファデット しかくの

ミステリが得意な作家さん。

この作品では、極上のミステリに恋愛を絡めています。

舞台は20世紀初頭のフランス。

恋愛漫画としても傑作なら、ミステリとしても傑作。丁寧かつ巧妙に散りばめられた伏線が一気に回収されるさまはまさにカタルシスですし、ラストシーンを読んでしまうと2度読まずにはいられない見事な作り。様々な「愛」の形も作品を通して問いかけてきます。

1作で2度美味しい、傑作です!

電車での旅にオススメ。

作品の質の割に不遇な作家さんで、この前の連載作も再度単行本化される予定がポシャっていたりします。この作品以降、商業誌で作品が発表されることはなく。次の作品も読んでみたかった…。

 

第6位 黒博物館スプリンガルド 藤田和日郎

こちらは1,2巻完結のマンガを紹介するサイトなどでは必ず名前が上がる作品ですので、ご存じの方も多いはず。

うしおととら」や「からくりサーカス」など、少年誌でアツくかつ伏線が張り巡らされたマンガを発表している藤田和日郎が、モーニング誌上で大人向けに発表した作品。

バネ足ジャックをテーマにした作品なのですが、そこはやはり藤田和日郎。アツく正義感にあふれる漢の話に仕上がっています。

さすが少年誌の大御所だけあって、読み口軽やかでグイグイ引き込まれる展開も魅力的。読み始めたらページをめくる手が止まらなくなりますよ!

同じく黒博物館とタイトルのつく「黒博物館 ゴースト アンド レディ」とあわせてオススメ。特に、イギリス旅行の際にはぜひお供に持っていきたい作品です!

 

第5位 くらしのいずみ 谷川史子

「乙女系」少女漫画の大家、谷川史子氏による大人向けの恋愛漫画。

夫婦ものしばりの短編6篇で、ゆったりとした空気の中でまったりと過ごす6組の夫婦の心温まりつつも胸キュンなお話が詰まっています。

読者を嫌な気分にさせることなく、どストレートに胸キュンさせてくれる、さすがの豪腕っぷり。

カップルや夫婦での旅行の際などに読むと、旅行中お相手の方をいつも以上に大事にできると思いますよ。

谷川史子氏の作品は短編が多いですし、どれを読んでもハズレがないので、この作品が気に入ったらぜひいろいろ読んでみてください!

 

第4位 世界の終わりの魔法使い 西島大介

6部作の予定で未だ完結していないのですが、この作品だけでも十分にまとまっているのでご紹介。

ポップな絵柄でセカイ系の重たい話を軽やかに描く、西島大介の代表作です。

魔法使いの世界でただ1人魔法を使えない少年。「魔法なんて信じない」少年が、勝手気ままに振る舞う強力な魔法使いの少女と出会い、世界を食い尽くそうとする魔物に立ち向かう。

そこかしこにエヴァの影響を感じる作品ですが、読み口はとっても軽やか。そしてキチンと話をまとめているところが素晴らしい!

近作の「ディエンビエンフー」は出版社を2度も変える不運な作品となっていますが、現在も何とか連載が続けられていて、とっても面白いのでこちらもオススメです。ベトナム戦争もの。

 

第3位 煩悩寺 秋★枝

正直、2巻以内ではなく3巻以内という縛りにしたのは、この作品を入れたかったから。本当は1位にしたいくらい大好きなのですが、さすがにこの作品を1位にしたらランク付けの真剣さを疑われそうなので、泣く泣く3位に。

フザけたペンネームですが、キュンキュンする恋愛者を描かせたら一級品の作者による、ギャグ半分の爽やか恋愛もの。

日々方向性の変わる、センスの悪ーいインテリアだらけの部屋。そこにひょんなことからOLが入り込んでしまい、それ以来おもしろセンスの部屋に惹かれて入り浸るように…。

何より軽ーい読み口の会話と徐々に進む恋愛で、おっさんが読んでも胸キュンが止まりません。小道具として次々にあらわれるセンスの悪いインテリアもギャグとして面白い!

頭を空っぽにして楽しめる作品です。

秋★枝氏の他の作品には、「純真ミラクル100%」という凄まじすぎるタイトルのものや短編集なんかもあって、いずれもキュンキュンするのでオススメ。現在連載中の「恋は光」も良いですよ~。

 

第2位 おもいでエマノン 鶴田謙二

そばかす姉さんを描かせたら右に出るもののいない大家、鶴田謙二氏による作品です。

梶尾真治によるSF小説をコミカライズしたものなのですが、最近ではむしろマンガのほうが有名になってしまったくらい、完成度の高い作品。

たまたまフェリーで乗り合わせた、勝手気ままに振る舞いつつも、深い洞察や哲学的な言動もするちょっと不思議な女性。なぜそんな言動をするのか、徐々に謎が解き明かされつつ、切なくも儚い物語が展開されていきます。

昭和感あふれるフェリー「さんふらわあ号」の描写と、儚げなストーリーもあって、読後には充足されつつも爽やかに切ない、そんな気分にさせてくれる傑作です。

続編の「さすらいエマノン」も漫画化されていますし、近作の「ポム・プリゾニエール La Pomme Prisonniere」もオススメ。ただし、鶴田謙二氏はかなりの寡作ですので、続刊ものは買わないのが吉。「冒険エレキテ島」は月刊誌での連載にも関わらず、2巻目が観光されるまでに6年近くの歳月がかかっています…。

 

第1位 魔女 五十嵐大介

中編4篇が単行本2冊にまとめられています。「魔女」をテーマにした4つのお話。妖怪や目に見えぬ異形の者を描くのが得意な作家さんの本領が発揮された作品。

全てボールペンで描かれているというその絵柄は、少々読む人を選ぶところもありますが、画力は圧倒的! 読んでいて冷や汗をかくような迫り来る何かがあります。

ヨーロッパの魔女、東南アジアのジャングルの精霊、そして日本と場所を変えながら、様々な物語が紡がれていきます。いずれも良くできたストーリーで、グイグイ引き込まれてしまう。

読んだ後には、イヤホンやヘッドホンを外して、耳や肌の感覚を研ぎ澄ましながら自然と触れ合いたくなるはず! 自然に満ちた旅行先に出かける際にオススメの作品です。

五十嵐大介氏の作品には、他にも映画化もされた「リトル・フォレスト」や「はなしっぱなし」「そらトびタマシイ」「カボチャの冒険」、伊坂幸太郎との合作「SARU」など、様々な短中編作品がありますよ! いずれも面白いのでオススメです。

 

 

いかがでしたでしょうか。

ランキングに異議のある方もいらっしゃるかもしれませんが、お好みの作品を見つけるためのお手伝いができれば幸いに思います。

素晴らしい漫画とともに、楽しい旅に出かけましょう!

 

 

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