国内スピンコースター最高峰! 「スピンランウェイ」at よみうりランド

2019年5月4日



こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。

よみうりランドのグッジョバ!!エリアにあるローラーコースター「スピンランウェイ」。一見するとk共向けのローラーコースターのように感じてしまいますが、その実、かなりスリリングな本格派のスピンコースター

2019年現在、スリル、楽しさともに間違いなく日本一のスピンコースターです。にもかかわらず、公式サイトでは「日本初となる、(中略)スパイラルリフトを採用」と比較的どうでも良いエレメントの紹介しかされていません…。

ここでは、そんな不甲斐ない公式サイトに代わって、スピンコースターというものの歴史と、スピンランウェイの凄さをご紹介していきたいと思います。

 

スピンランウェイの評価

 

爽快感:      ★★★★☆

振動の少なさ:   ★★★★☆

スリル:      ★★★★☆

コースレイアウト: ★★★☆☆

楽しさ:      ★★★★☆

総合得点:     70点

 

1. スピンコースターの歴史

まずはスピンコースターについて、簡単にご説明します。

スピンコースター、正確には、スピニングカーを有するローラーコースターというのは、走行中にライドが水平方向に回転するタイプのコースター。

円形ゴムチューブに乗るタイプのウォータースライダーのようなイメージで、そのローラーコースター版だと思っていただければわかりやすいかもしれません。

 

一見するとローラーコースターにギミックを追加したように見えるタイプなのですが、その歴史をたどってみると意外と古いことがわかります。

そもそも、現在のローラーコースターの原型となったのは、1884年にコニーアイランドに設置されたトンプソン型だと言われています。

アメリカ初のローラーコースター「スイッチバックレールウェイ」。

ちなみにこのタイプは、わずか6年後の1890年には日本の博覧会にも設置されています。

 

さて、世界初のスピニングカーは、トンプソン型からわずか13年後の1907年、ルナパークに設置されています。

ルナパークというのは、月を模した世界観を持つ、世界初の現代的なテーマパーク。1903年にコニーアイランドの一角でオープンし、それを模したものは日本にも作られました。

元祖ルナパークオープンから4年後、ルナパーク初のローラーコースターとして導入されたのが、1907年のTicklerです。

ルナパークのTickler. ニューヨーク市美術館から正式なライセンスを受けて掲載しております。転載は厳禁です。ご自身のサイト等に掲載をご希望の際は、ニューヨーク市美術館公式サイトより手続きをお願い致します。https://collections.mcny.org/

とはいえ、これは木枠の中を転がり落ちる過程で、木枠に接触することでライドが回転するもの。すでに安全なループコースターや周回型の本格コースターがコニーアイランドに設置されていた中では、やや陳腐な構造に見えます。

実際、衝撃が激しく乗り心地は相当悪かったようで、乗車後に乗客はグッタリとしていたという話もあるようですが、その一方で物珍しい構造もあってか、オープン当初の1907年一年間で、4万ドル以上の売上を上げていたそうです。

 

1909年には、ルナパーク管理人のElmer Riehlという人が開発したVirginia Reelというローラーコースターが登場します。

バージニアリールのライド部。こちらはパブリックドメインですので、転載等ご自由にどうぞ。出典は英語版ウィキペディアです。

こちらはかなりしっかりとしたレールが作られていたようで、スムーズに坂を下りつつ、コース上に作られた出っ張りが強制的にライドを回転させていたそうです。

バージニアリールの遠景。こちらもパブリックドメインです。

コーナーにはカントが付けられていたり、しっかりアップダウンがあったりと完成度の高いコースター。こちらも大ヒットとなり、計6箇所、7機が導入されることとなります。なんと1970年まで稼働していたものもあったそう。

ちなみにイギリスのJoyland Childrens Fun Parkという遊園地にはTyrolean Tubtwistという1950年製、「電動」のバージニアリール型コースターが現在も稼働中です。

 

さて、その後もスピニングカータイプのコースターはいくつか作られていたのではないかと思いますが、残念ながら今回調べた範囲では捕捉できませんでした。

というわけで日本に目を移しますと、日本ではじめてスピニングカーを導入したのは、多摩テックだったのではないかと思います。

少なくとも1980年導入の「UFO」は、3両連結の円盤型ライドがそれぞれ自由スピンをしながら坂を下るコースターアトラクションでした。1971年にはほぼ同じコースを進む「タイヤカー」というアトラクションが設置されているのですが、こちらがローラーコースターと言って良いものだったかどうかはわかりません。。。

個人的には、UFOに乗車した際にハーネスがロックされていなくて、死ぬ気でしがみついていたトラウマからしばらくスピンコースターが苦手だった印象が強くあります。

ちなみに1980年という導入時期は、世界的に見ても相当レア。スピンコースターにはむちゃくちゃ古いものか、1990年代以降のものが多いのです。

 

1990年台に入りますと、各社がスピンコースターに本格的に取り組み始めます。

1994年には、ドイツのZierer社が子供向けのスピンコースターを設置。Zierer社は、日本では東武動物公園「てんとう虫」やナガシマスパーランド「チルドレンレコード」、レゴランド・ジャパン「ドラゴンコースター」などでおなじみの、子供向けコースターが得意な会社。スピンコースターは残念ながら上述の1機のみです。

1995年にはインタミンがロッテワールドに、1997年にはMack RidesがEuropa Parkにスピンコースターをオープン。

日本に目を向けますと、1995年には明昌(現サノヤス・ライズ)がポルトヨーロッパに「ぐるぐるコースター」を導入、1998年には豊栄産業も岩山パークランドにスピニングカーを導入しています。

 

ここまでは各社ラインナップの中の変わり種的扱いだったのですが、明らかに時代が変わったのは、1997年Reverchon社のクレイジーマウスから。

発売の翌年、1998年にはよこはまコスモワールド「スピニングコースター」、グリーンランド「スピンマウス」、ひらかたパーク「クレイジーマウス」(なぜか回転なしで運用)と3機立て続けに日本にも導入されています。

あのディズニー・ワールドにも導入された、Reverchon社のクレイジーマウスシリーズ。

コーナリングの遠心力を利用してライドを回転させる、ワイルドマウス型のコースレイアウトにピッタリとハマるライドシステムだったこともあって、ミニコースタータイプのスピンコースターが大流行。一世を風靡します。

この時点で、日本は世界的にも導入が早く、このままスピンコースターが発展していくかに思えたのですが、なぜか失速。

2000年後楽園ゆうえんち「スピニングコースター舞姫」、2004年那須ハイランドパーク「スピンターンコースター」、2010年USJスペース・ファンタジー・ザ・ライド」、2012年東京ジョイポリス「ヴェールオブダーク」と、イマイチ先進的なスピンコースターが導入されません。

ちなみに上述の4コースターは、それぞれMaurer, 明昌, Mack Rides, Gerstlauerとメーカーが全て違う凄まじいバリエーション。

このうちMaurerは2003年頃から、ワイルドマウス型だけでなく、バンクターンやヘリックスなどもあるスリリングかつコンパクトなコースレイアウトのスピンコースターを製作しているのですが、これが日本に導入されていないのは残念なところ。2011年の事故もあって、もう日本に導入されることはないんでしょうね…。

個人的にはヴェールオブダークの前身、スピードボーダーのコースにスピニングカーを乗っけた「スピンバレット」はなかなかいい線行っていたと思うのですが、それでもやはりスピンコースター専用設計には敵いません。

スペース・ファンタジー・ザ・ライドはもちろんスピンコースターの良さを活かしているのですが、いかんせんテーマパーク仕様でスリル不足ですし、最近はVR専用マシンになってしまってスピンシステムを固定してしまっている(スピンしない)のが不満どころ。

 

そんなこんなで日本のスピンコースターが時代に取り残されていく中、ついに登場した本格スピンコースターがよみうりランドの「スピンランウェイ」なのです。

とはいえ、世界は更に先を行ってしまっていまして、2018年にはMack Rides社が自由回転するライドでありながら2度のリニア加速、最高時速81 km/h, ループやロールを含む3度の回転(天地がひっくり返る方の向きの回転です)、最高到達点30 m以上というアホみたいな規模のコースターを作ってしまいました。イメージとしては富士急ハイランド「高飛車」のコンパクト版のようなコースをスピニングカーで走行するものですので、これは怖いはず。乗ってみたいです。

 

 

2. スピンランウェイの乗車レビュー

グッジョバ!!のファッションファクトリーというパビリオンの中にあります。

やや飾りっ気のない入口に入ると、

ファッションファクトリー「スピンランウェイ」の入り口。ちょっと味気ない入り口です。

その入口からは想像もつかないほどしっかりとしたキューラインがあらわれます。

キューライン。まるで裁縫の世界に小さくなって入り込んだような感覚で、かなりしっかりと作り込まれています。

キューラインに驚きながら進んでいくと、乗車直前に荷物をロッカーに預けて乗車です。

ちなみに乗車と降車はプラットフォームが別れていますが、ロッカーは前から預けて反対側から取り出す方式なので、異なるプラットフォームでもスムーズに荷物の取り出しができます。素晴らしい。

 

ライドは2人ずつ2列、対面で乗車する形式。このため、基本的には相乗りはありません。

安全バーを下ろすと、手元にはゲーム用のボタンが。これはしばらくしてから使うことになります。

 

まずはダークライド形式で、ゆっくりと進んでいきます。洋服を作る工程を数シーン見学。

少し広い空間に出ると、いよいよ日本初と噂のスパイラルリフトです。

といっても、乗っている方からすればスパイラルリフトにはほとんど特徴がありません。螺旋状のコースをただゆっくりと登っていくだけ。

このエレメントの特徴は、どちらかというとメカニカルな方面にあるのです。

 

通常、巻き上げといえばチェーンにライドの爪を引っ掛けてゆっくりと引っ張り上げるか、電磁石をライドにくっつけてワイヤーで引っ張り上げるか。コンパクトなものであれば自走式のモーターで登るか、タイヤを回転させて、そこにライドから下方向に伸びる板を挟み込んで登らせるか。

いろいろと方式はありますが、巻き上げのネックになるのは、いかに可動部にライドを引っ掛けるかというところ。

これをできるだけ簡単にしようと思ったらどうなるでしょうか。ライドから出ている棒を、なにか板状のもので押して行ってくれればシンプルですよね。それを実現したのがスパイラルリフトです。

レールは同心円の螺旋状に登っていく形状をしています。その中心には常に回転し続ける板があって、それでライドを押して行ってくれる。ただそれだけのシステムです。

 

このスピンランウェイの場合、演出上登っている間は螺旋の外を向き続けることになりますし、屋内の暗いところにありますので、取り立ててスパイラルリフトの何たるかを感じられない仕様になっています。なぜこんなものを宣伝しているのか…。

ちなみに、メリットは狭い空間で高い位置まで巻き上げられること。通常のチェーン巻き上げは、巻き上げ高さに応じて長い直線区間が必要になります。一方、タイヤを使った駆動の場合には、高い位置まで巻き上げようと思うと駆動箇所が多くなってしまい、エネルギーロスを生じるのと点検箇所が増えてしまうという難点があります。

その点、スパイラルリフトであれば可動部は中心の一箇所だけですし、螺旋の面積だけで巻き上げができます。

このため、世界で初めてスパイラルリフトを採用したのは、Europa Parkのジオデシックドーム内にある1989年製のローラーコースター。巨大な球体の中にコースターを作ったため、球体中央部で巻き上げをする必要があり、省スペース化のために使われたものと思われます。メーカーはMack Rides社。

その後はZamperla社のフライングタイプコースターで広く採用されました。こちらはスパイラルリフトなら複数車両の同時巻き上げができる、というメリットも狙っていたのかもしれません。

うつ伏せで乗車するフライングタイプのコースターは諸事情により長らく日本導入が見送られていたため、結果的にスピンランウェイが日本初導入となったのです。

ちなみに同時期に作られた、スピンランウェイと同じGerstlauer社製のスピンコースターには、ライドごとエレベーターで頂上まで登るという超省スペース型もありまして、巻き上げ方式はなかなかカオス。

 

スパイラルリフトは高速に動かすことができないため、頂上に到達するまで長い時間がかかるという欠点もあります。先述のEuropa Parkでは、これをダークライド的に活用していました。

一方、スピンランウェイでは、なんとレールに沿って螺旋の外側をスクリーンで埋め尽くし、登っている間はずっとゲームがプレイできるようなシステムを構築してしまったのです。

巻き上げの暇な時間を、洋服作りのお勉強(になるかならないかは置いておいて)もできて暇も潰せる、しかも得点を競えるゲームにしてしまって、その結果をライドごとに記録できるようにしているのはスゴい。もちろんコースターとゲームをくっつけた前例はジョイポリス等にもあるのですが、巻き上げの時間を利用したのは初なのではないでしょうか。

ボタン1つでシンプルながらもハマりそうなミニゲームをプレイしていると、いつの間にか頂上に到達します。

 

ここからは、フリースピンしながらドロップあり、水平ループ風のドロップや登りもあり、とかなり激しいコースターになっていきます。

最高到達点は13.7 m, 最高時速45.5 km/hとスペック的には大したことありませんが、やはり本格派のスピンコースターはそんじょそこらのミニコースターとは違います。

まず、自由回転するという不安定な状態で車両が大きく傾くのが怖い。ふんわりと腰が浮き上がるようなコースレイアウトの中で、車両が激しく回転して体が外に放り出されそうな遠心力がかかったりするのです。

その状況下では、腰が浮くのを通り越して下向きに無理やり引っ張り込まれたり、あるいは強烈なレールの外方向に向かうGがかかったりします。この不安定さが怖い。

 

さらにさらに、ファッションショーをイメージしたライトアップの演出がどうこうと宣伝されていますが、それでも屋内。暗いです。しかも車両がスピンしているので、レールを目で追いにくい。

次にどういう動きをするのか予想しづらい状況で激しいコースを爆走していきます。

終盤までしっかりスリリングなのがスゴい。

 

乗車バランス次第でスリルが変化してしまうのが惜しいところですが、バッチリハマればめちゃくちゃ怖い。ハマらなければ、何も怖くない。そんなコースター。

ハマってしまった場合には、特にスピンコースターに乗りなれない方はかなりのスリルだと思います。

ファッションカンパニーという場所柄から、子供向けだと舐めてかかるとかなり危険

浮き上がるような感覚が苦手な方は、むしろ「モモンガ」や「バンデット」のほうが怖くないと思います。

一方、スリル好きであれば、迷うこと無く乗るべき。

 

ちなみに、乗車バランスによっては最後の方は車両が停止するまで激しく回転し続けます。コーヒーカップを全力で回したような状況が数10秒続くこともありますので、回転が苦手な方は事前に乗り物酔い対策を。

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