教育相談の体験談 ー 授業内容(カリキュラム)に悩む、学習塾経営Bさんの場合
こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。
このページでは、経営する学習塾の授業内容についてお悩みだったBさんを例に、ご相談の進め方、アドバイスやご回答内容などをご紹介していきます。
※Bさんの許可は頂いておりますが、個人情報保護の観点から一部内容に変更を加えております。また、わかりやすさのために対話形式を取っておりますが、実際はメールベースでご相談を承っております。
ご依頼
Bさんからのご依頼には、かなり詳細にお悩みが書かれていました。その内容を抜粋しますと、
- 地方の個人経営塾であることから、地元の子が集まる
- 特定の中学の生徒さんが多い
- 親御さんの目的は、定期テスト対策であることが多い
- 県立高校では内申点が比較的重視されるため、定期テスト対策が高校受験対策にも直結している
- 地元の中学校の進度に合わせて授業をしているため、明確なカリキュラムはない
- 結果的に塾が問題演習をするだけの場になってしまっていて、思ったように成績が伸びない
- 近くには大手チェーンの進学塾ができ、そちらに移ってしまう生徒も発生している
- まずは数学の授業について相談したい
といったお悩みでした。
残念ながら経営コンサルタントではございませんので、「大手チェーンの進学塾に勝つ方法」をご提案することはできませんが、地元密着型ならではの魅力を活かしつつ、生徒さんの成績を伸ばす授業のご提案は可能です。
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進め方のご案内とお見積り
今回は、以下のような進め方をご提案させて頂きました。
- 学習塾お近くの中学校の特色を、Bさんの知る範囲+生徒さんからの聞き取りで調査して頂く
- 同時に現在学習塾で使用している教材をご提示頂く
- それらの情報をもとに、カリキュラムをご提案させていただくとともに、教材の開発方法をご提案させて頂く
なお、教材をご提示頂く際には、秘密保持契約等の締結も可能ですのでご相談ください。
今回は、カリキュラムのご提案に4時間、教材の開発方法ご提案に2時間、計6時間の労務費が発生すると推定し、税込み3万円のお見積りを提示させて頂きました。
教材の開発方法はアドバイスを頂きたいと思っていますが、サンプル教材は1単元のみ、問題数も1問のみで結構です。この分の労務費を圧縮できませんでしょうか。
また、成果物は表紙付きの報告書を郵送する形でお願いしたいと思っております。
このように、お見積りに不要な項目が含まれていると感じられましたら、その旨お申し出ください。
お客さまのご都合にあわせて、柔軟に対応させていただきます。
お支払い
支払いは銀行振込でお願いできますでしょうか。また、領収書の発行をお願い致します。
お支払い方法や領収書の発行等につきましても、ご相談に応じて対応させて頂きます。
売掛払につきましては、やむを得ない事情をお持ちの場合のみ、一部企業・官公庁・独法等に限り対応致します。
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回答
承っておりましたご相談への回答をお送りします。
以下では、今回のご相談への回答を一部抜粋し、そのような回答をした理由と合わせてご紹介します。
ただし、営利企業に有償で回答した内容であることを踏まえまして、内容は抽象的な説明に留めさせていただきます。
先取り学習への転換
これまでは、地域の学校の進度を確認しながら、それに追随する形で授業を進めてきたBさんの学習塾。
しかしながら、学校を追いかける形で進めてしまうと、どうしても生徒たちには学校の授業で固定した観念が植え付けられていて、苦手の克服や理解できなかったポイントの克服に時間がかかってしまいがちです。
学習塾の授業は、学校の授業と比べて時間が限られていますから、より長い時間が必要な後追い形式は、できれば避けたいところなのです。
その一方で、定期テスト対策という意味では、学校の授業内容を確認した上で演習問題を選びたいのも事実。
そこで、今回は授業を前半と後半に分けることをご提案しました。
前半では学校で既習の内容について演習を行い、後半では学校で未修の内容の説明+簡単な演習を行います。
こうすることで、Bさんが話しやすい、わかりやすい方法で未修単元の説明を行い、時間をゆっくりと使う学校の授業で曖昧だった部分を再確認・再解釈してもらう、というベストな体制を築くことができます。
さらに、学校の授業で再解釈した内容について、塾でさらなる演習を行うことで、理解の深化・定着を図ることができます。これまで学校→塾という2ステップだったものを、塾→学校→塾という3ステップ使っての学習へと変え、2週間以上かけてじっくりと解釈する時間を与えることができるようになるのです。
ただし、Bさんの学習塾での授業を、定期テスト向けの補修として認識されている親御さんへのご説明は不可欠ですので、Bさんには保護者の方向けに授業内容変更の意図をご説明頂きました。
カリキュラムの工夫
学校では一般的に、一つ一つの単元を習得しつつ、全体の学問体系を学んでいく積み上げ式の学習が行われています。
これとは異なる形のカリキュラムを取ることで、生徒さんは2通りの理解のしかたで説明を受けることになり、理解の深化を期待することができます。
通常であれば、数学全体を見渡しながら、その中で今どのような学習をしているのかがわかる、俯瞰的なカリキュラムをご提案したいところです。
しかしながら、週に1回2時間の授業のうち、前半のみで学校の1週間分にあたる内容を説明しなければなりません。
また、学校の進度にもあわせていく必要があります。
そこで今回は、それぞれの単元ごとに具体的な目標を設定し、それに向けてどうすればよいのか考える、というスタンスの「局所的俯瞰」スタイルのカリキュラムをご提案しました。
例えば「因数分解」を説明する際には、まずは2次以上の方程式の存在と、例えば物体落下中の位置を特定する際に必要であることなどの具体例をあげた上で、2次以上の方程式を解くためには因数分解が必要だと説明する、といった形です。
あくまで数学全体を見渡すのではなく、2次方程式なら2次方程式しか見ない、ただしその範囲内でゴールから説明していく、という手段をとっています。
こうした内容を、数学の全単元についてご提案しました。
教材の工夫
Bさんからご提供いただいた教材は、学校のテストと同程度か、やや難易度の高い問題が掲載されているものでした。
近隣の学校の先生をよく研究され、その傾向にあわせた教材が開発されています。
しかしながら、公立中学校の先生には異動もありますし、傾向が突然変わることもあり、あまりにあわせこんでしまうことは危険です。
高校受験を見据える上でも、「学校の先生対策」になってしまうような教材は好ましくありません。
そこで、学校の先生対策に当たる特殊な問題は、各回1問+試験直前の授業分にとどめて頂き、新たに難易度の低い「ひたすらこなす」問題の追加と、「本質を考える」問題の追加をご提案しました。
「ひたすらこなす」簡単な問題は、学習の定着を図る上で使います。毎回最初に簡単な問題を多数、すばやく解くことで、手を動かして知識の定着を図るのです。
「本質を考える」問題は、授業の後半、新たな単元を学んだあとに使います。簡単な問題を数問解いたあと、本質を考える問題を与え、その後2週間かけて解釈するためのきっかけを作るのです。
例えば2次方程式の解の公式の単元では、2回目以降の授業で、あえてx4+4=0のような問題を出します。これはもちろん「解かせる」ことが目的ではなく、因数分解とはどのような作業をしているのか考えてもらうことが目的です。
一度生徒さんに考えてもらったあと、先生がすぐに解説をします。上の問題は、実は平方完成をすることで、比較的簡単に解くことができます。解の公式を導き出す過程の本質を理解してもらうための問題です。この時点では納得できなくても、その後学校の授業を受け、問題演習をこなし、と2週間かけてじっくり学んでいくうちに、問題の本質が腑に落ちる可能性が高いのです。
Bさんからのコメント
今回の回答から3ヶ月ほど後、Bさんよりコメントを頂戴しましたのでご紹介させていただきます(原文の意味を損ねない範囲で要約しています)。
私の経営する塾の問題点を的確に見抜いたご回答、ありがとうございました。
その後、保護者の皆様に「内申点対策に対応することは主目的のまま変化なく、やり方を変える」という旨をご納得いただき、カリキュラム・授業の進め方の大幅な変更に取り組みました。
先週、変更以降最初の定期テスト結果が返却されましたところ、かなりの生徒について、僅かではありますが点数が向上していました(平均点と比較して向上しています)。
まだまだ取り組みを始めたばかりですので、本当の成果はこれから出てくるものと思っていますが、短期間でも目に見える成果が出始めていることに驚いています。
生徒からも「授業や問題は難しくなったけど、難しくなった以上にわかりやすくなった」という評判も出てきていますし、その評判を聞いてか入塾者のペースも以前より向上しています。
地元密着であることを利用して、「学校の授業も利用して理解を促すカリキュラムづくり」という考え方には驚かされましたし、こうしたご提案をされた理由は納得できるもので、しっかりと効果も上がっています。
数学の改革にめどが付きましたら、他の科目についても依頼をさせていただきたいと思っておりますので、その際はどうぞよろしくお願い致します。
ご相談はいつでも受け付けています
Bさんの例に限らず、学校や塾、予備校での授業内容やカリキュラムに関するご相談は、いつでも受け付けています。
まずはご相談方法に関するページをご覧いただき、ご相談入力フォームよりご依頼くださいませ。
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