教育相談の体験談 ー 授業法に悩む高校物理教師Aさんの場合
こんにちは、ricebag(@ricebag2)です。
このページでは、授業法にお悩みだった高校物理教師Aさんを例に、授業法に関するご相談の進め方、アドバイスやご回答内容などをご紹介していきます。
※Aさんの許可は頂いておりますが、個人情報保護の観点から一部内容に変更を加えております。また、わかりやすさのために対話形式を取っておりますが、実際はメールベースでご相談を承っております。
ご依頼
高校物理の授業法でお悩みとのことですね。学校の環境や、生徒様が興味を持たれない原因を把握したいので、いくつか質問へのご回答をお願い致します。
ご依頼の際は、このようにザックリとした内容でも問題ありません。
こちらから何点か質問をさせていただき、問題点を絞っていきます。
今回、Aさんにお伺いしたのは以下の内容です。
- 学校のおおよその所在地を教えてください。
- 都内市部です。
- 普通科でしょうか。
- 普通科です。
- 大学進学率と上位者の進学先および人数を教えてください。
- ほぼ全員が大学に進学します。上位数名が早慶レベル、上位20%程度がMARCHレベルに進学します。
- 生徒の男女比を教えてください。
- 男7:女3程度です。
- 他科目、特に女性の先生が教えられている科目でも同様に興味を示さないのでしょうか。
- いいえ。私の授業に対してのみ、興味を示してもらえない状況です。
- 授業中に雑談は挟んでいらっしゃいますでしょうか。
- 授業のつかみやアイスブレイクとして、雑談は積極的に入れるようにしています。
- その雑談に対しても、生徒さんは興味を示さないのでしょうか。
- いいえ。雑談に関しては、興味を持って聞いてくれている状況です。
- 授業中に会話をしていたり、スマホをいじっている生徒がいる状況でしょうか、あるいは単に授業に無関心な状況でしょうか。
- スマホをいじる生徒は数名いますが、大半は寝てしまったり、ノートに落書きをしていたりと無気力・無関心な状態です。また、物理の参考書を読んだり、教科書の関係ないページを開いている生徒もいます。
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進め方のご案内とお見積り
おおよその状況が把握できました。
今回のご相談では、先程の質問への回答から、Aさんの授業の問題点は以下のように絞り込むことができました。
- 授業の内容について、Aさんが何を伝えようとしているのか、生徒に理解してもらえていない
- 授業を聞くよりも、参考書や塾で勉強したほうが効率的だと思われている
これらを解決するためには、
- 授業の目的の明確化
- 授業構成の工夫
- 話し方の改善
が必要だと考えます。
そこで、授業時の話し方や授業構成を把握するため、
- 授業1コマ分の映像(黒板の映像およびAさんの音声)
- 板書相当の授業ノート+授業音声
- 授業ノート+話したことを文字に書き起こしたもの
のいずれかをご提示いただき、それをベースに改善方法をご回答する、という流れをご提案させて頂きました。
学校教育の現場では生徒の個人情報保護が重要視されておりますので、今回は授業ノートと、ご自宅で授業を再現いただいた際の音声をご提示いただきました。
なお、音声や映像等は内容が分かる範囲で加工をしていただいて、全く問題ありません。また、回答後は当サイト側ではデータを速やかに廃棄しております。
今回は、
- 50分間の授業内容の確認
- 授業の問題点把握
- 今回の授業の改善方法ご提案
- 今後の授業の改善方針についてのご提案
という4点の作業が必要になりますため、労務費を3時間と見積もり、お見積額は15,000円とさせて頂きました。
お支払い
このように、お支払い方法に関しましてはお客様のご都合に応じて柔軟に対応致します。場合によりましては、クラウドソーシングサイトを利用した決済等にも対応しております(ご入金後、成果物の受け渡しが完了してはじめて当サイトへと支払いが行われるシステムを利用できます)。
ただし、ご入金確認後の作業着手となりますため、銀行振込等の場合は、最短日程と比べてご回答が数日遅くなってしまう場合がございますことをご了承ください。
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回答
今回は、個人様からのご依頼でしたので、メールベースで回答をさせて頂きました。
お客様のご要望に合わせて、報告書形式の印刷物、pdf、CD-R等のメディアなど、様々な成果物の形式も承っております。
以下では、今回のご回答内容を抜粋してご紹介します。「運動とエネルギー」の授業に関するご相談への回答です。
なお、実際には授業中のフレーズや、細かな構成など具体例をピックアップしながら、どこをどう変えるべきか、具体的にお伝えしています。
今回の例では、ご回答は5,000字に及ぶ量となりました。
目的の明確化について
今回の授業では、簡単な雑談のあとすぐに、運動エネルギーの説明へと入ってしまっています。
しかしながら、生徒さんからしますと、「運動エネルギーってなんだ、一体何に使うんだ、なんでこんなことをやっているんだ」という状態のまま、わけもわからず板書をさせられている状態になってしまっています。
言ってみれば、真っ暗闇の迷路を手探りで進んでいるような状態なのです。
単元や授業のはじめには、迷路を上から見て、「ゴールへの道筋はこうだよ」ということを示してあげるようにすると、生徒さんは全体を俯瞰的に見ながら授業を聞くことができるようになります。
単元のはじめには、
- その単元のゴールを示す
- ゴールへ至るまでに、どういった内容を理解すればよいのか示す
といった作業を行い、
各授業のはじめには
- 今回は単元の中で、どの位置にあたるのか
- 今回の授業のゴールはどこか
を示してあげるようにしてみてください。
これだけで生徒さんの理解度が向上し、授業への参加度合いも高まるはずです。
授業の構成について
今回の授業では、
- 運動エネルギーとはこういうものである
- 仕事とはこういうものである
- 運動エネルギーの変化は、外力による仕事に相当する
といった構成で授業を進められています。
系統的かつ教科書に従った構成で、あとで見返したときにはわかりやすいのですが、初学者にとっては「なんでいきなり運動エネルギーというものが出てきたのか、仕事ってなんだ、なんでその和が保存するんだ」といった疑問が次から次へと湧いてきてしまい、モヤッとしたまま授業が終わってしまいます。
初学者は学問体系全体を理解しているわけではありませんから、学問体系を一番下の段から順々に登っていくことは苦手です。
むしろ、上段から下っていくように説明したほうが理解が進みます。
例えば、
- 閉じた系におけるエネルギー保存則について説明する
- エネルギー保存の1形態として、「仕事」によるエネルギー変換・散逸を説明する
- エネルギーの1形態として運動エネルギーを説明する
という順序で進めると、「運動エネルギー」というものが、全体の学問体系の中の一体どこにあるものなのか、という点がよくわかります。
さらに、「じゃあ、他のエネルギーにはどんなモノがあるんだろう」といった想像を喚起し、自発的な思考を促したり、今後の授業への興味を持たせることにもつながります。
問題は、この順序で授業を進める場合には、噛み砕いた説明が難しいということです。
(以下、実際には説明方法の一例をご紹介しましたが、ここでは割愛させていただきます)
話し方について
Aさんは、物理に関する豊富な知識をお持ちで、サイドストーリーも多分に授業へと盛り込もうとされているため、全体的に早口になってしまっています。
しかしながら、早口で様々な知識を並べてしまうと、生徒さんからしてみますとどこが重要なポイントなのかが分かりづらいだけでなく、頭の回転が速い生徒さんでなければ思考が追いつきません。
生徒さんは先生の言葉を噛み砕き、自分の言葉で解釈し直すことによってはじめて、授業の内容が定着していきます。
このための「間」を与えてあげなければなりません。
雑談やサイドストーリーは現在のスピードでも問題ありませんが、授業の本筋に関わる内容は、本当に必要な言葉のみを厳選し、現在の2倍の時間をかけて話をするようにしてみてください。
間のとり方としては、テレビでよく見かける方ですと大手予備校T社のH先生が上手ですので、大変参考になります。
(以下、実際にはAさんの授業の一部を、言葉を厳選して再構築した例をご紹介しましたが、ここでは割愛させていただきます)
Aさんからのコメント
今回の回答から2週間ほど後、Aさんよりコメントを頂戴しましたのでご紹介させていただきます(原文の意味を損ねない範囲で要約しています)。
この度は、詳細なご回答をありがとうございました。
私の授業を細かく分析していただき、問題点をピンポイントで見抜いてアドバイスを頂いたことで、長年抱いてきた悩みに光明が見え始めています。
先日、別のクラスで同内容の授業を行う機会がありましたが、今回のアドバイスをそのまま実行に移してみましたところ、生徒ははじめは少し戸惑った様子でしたが、目に見えて興味を持ってくれる生徒が増えました。
長年の授業スタイルを変え、毎回の授業に対してこのような工夫を行うことは、かなり負担の大きい作業ではありますが、その一方ではじめて授業を担当して以来のやりがいも感じています。
同僚や同業者には相談しにくい内容ですし、なかなかこうした相談に乗ってくれるシステムもないので、このような相談の機会を設けていただいているのは本当にありがたいです。
また授業内容で悩むようなことがあれば、ご相談させていただきます。その際はどうぞよろしくお願い致します。
ご相談はいつでも受け付けています
Aさんの例に限らず、学校や塾、予備校での授業内容に関するご相談は、いつでも受け付けています。
まずはご相談方法に関するページをご覧いただき、ご相談入力フォームよりご依頼くださいませ。
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